現在、米国農務省(USDA)は、国内のヘンプ関係者を支援すると同時に、国際舞台での米国ヘンプ産業の地位を強化する為、調査を実施しています。
このUSDAの調査は、生産物とその価値を数値化し、栽培品種や、一次・二次用途、価格、販売などの傾向を可視化することで、規制当局にとっての参考資料になると同時に、ヘンプ企業にとっては事業計画を立てる上での大きなヒントとなります。
このようなデータは、自国の産業をより効率的に機能させるのに役立つだけでなく、世界からの米国ヘンプ産業への投資を得るための競争において、比較的少ない投資額で参入が可能だというアピールにも繋がり、米国を優位に立たせることが可能となります。
ロンドンを拠点とする国際的なヘンプ製品プラットフォーム企業 CanXchange社のCFO兼共同創業者であるSigfried Legeay氏は「業界の透明性を保つことは、これからの時代では基本的で、且つ重要なことであり、適切なデータサポートを得ることで、企業はグローバルな規模で事業を展開し、競争力を高めることが可能となります」と述べています。
「特にベンチマーク(基準)価格の提示は、世界的な価格の安定性と、非常に細分化されていてるこの分野の透明性を強化します」と述べています。
データを集計し、ヘンプ産業の透明性を高める
USDAは、農家、加工業者、生産者、州政府、その他の関係者などに、ヘンプ市場の透明性を高めることを目的として、現在実施中のこの調査では、広範に渡る各分野を掘り下げ、調査を行ないます。
チェコ共和国に拠点を置くHempoint社のCEOであるHana Gabrielova氏は、「このような調査のデータによって、市場の規模や、どの分野でどれだけのことが行われているか、そしてどこで行われているか、などを具体化することが可能です」と述べています。
また「このようなデータがなければ、戦略を立てることも難しく、業界が効率的に活動できません」とも述べました。
最近、USDAは「Hemp Acreage and Production Survey(ヘンプの栽培面積および生産量の調査報告)」を発表しました。この調査では、ヘンプの花穂、繊維、穀物、種子の生産量に加え、それらの生産物の価値や、栽培に必要な面積などの詳細を記載するとしています。
一方、USDAは、全米州農務省協会およびケンタッキー大学と共同で、18,000社のヘンプ事業者を対象に、生産方法やコスト、ヘンプ製品のマーケティングに関する全国調査を実施しました。
その調査では現在、生産地、栽培用の種子や肥料、ライセンス料、労働力、最終用途別の農産品価格、そして契約内容に至るまで、様々な事項についてデータを収集しています。
全米農業調査での予測
またUSDAは、今年初めて、全国農業人口調査の一環である農家を対象とした調査にヘンプ産業の調査を含めました。
この調査では、全米農業統計局がさまざまな農業分野の生産者36,000人に質問を行い、市場予測のサポートとなる回答を得ています。農業人口調査は5年ごとに実施され、政策立案の参考となる様々な指標を調査します。
CBDの次に流行る製品「ポストCBD」を争う状況が続く新興のヘンプ業界において、米国のヘンプ業界は生産量のバランスをとるプロセスを開始しており、CBD市場が落ち着くと、次には穀物や繊維の需要が増加すると予測を立てています。
National Industrial Hemp Council(NIHC)の発表では、現時点で、認可されたCBD用ヘンプの栽培面積は、米国全土のヘンプ栽培面積の82%を占めていますが、今後10年間では、わずか2.78%にまで減少すると予測しています。
一方、種子生産用を目的としたヘンプの総栽培面積は65.8%に増加し、繊維用途での栽培は、31.4%に達すると予測されています。
投資においても指標となるデータが必要
NIHCは今年初めに発表したレポートの中で、米国でのヘンプ栽培が拡大するにつれ、2025年には農場からの出荷額が年間100億ドルを超えると予測しています。
その為には、投資家からのこの分野への投資が前提となりますが、CBD投資ブームの時のような指数関数的な成長は期待できません。CBDを含む産業用ヘンプへの投資額は世界的に見ても控えめであり、世界中でCBDの新市場が次々とオープンし、競争が激化していることから、投資におけるリスクは今後大きくなると考えられます。
この産業を数値化できれば、ヘンプが一般製品としてコモディティ化され、本格的に投資家が参入するようになり、ヘンプ産業で自国が優位に立つ可能性が高くなります。
中国の中央政府は、詳細な産業データを集計していることで知られていますが、世界の他の国および地域では、世界的な競争に不可欠なヘンプに関するデータ計測がまだ出来ていません。
例えば、米国のライバルであるヨーロッパでは、現在、産業用ヘンプに関する詳細なレポートがありません。
「米国は、ヨーロッパとの競争において、より持続可能性を高めなければならないと考えている大手企業に対して、ヘンプをソリューションとしてアピールできるデータを持っているので、迅速にその立場を強化することが可能となります」とGabrielova氏は述べています。
USDAのヘンプ産業調査の詳細
USDAが行なっている3つの調査で収集するデータには以下が含まれます。
・栽培地の総面積
・総収穫量
・屋外でのヘンプ栽培と屋内でのヘンプ栽培
・一次および二次作物の生産量
・喫煙可能なヘンプ
・CBDおよびその他の抽出物
・食用となる穀物
・繊維
・栽培用種子
・収穫方法
・種子やクローンの供給源
・花穂、クローンまたは移植、および種子に関する屋内栽培データ
・花穂、穀物、繊維、種植えに関する屋外での栽培データ
引用元;https://hemptoday.net/farm-data-being-collected-can-give-u-s-edge-in-global-marketplace/