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テキサス農業の未来を担う“ヘンプ科学者”誕生、土壌、バイオ医療に挑む研究ネットワーク始動

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農業研究機関の所長にヘンプ分野の第一人者が就任

植物遺伝学者であり育種家のラッセル・ジェサップ氏が、テキサスA&M大学の農業研究・普及センター(Texas A&M AgriLife Research and Extension Center)サンアンジェロ拠点の新所長に任命されました。

この人事により、アメリカ南西部の中心地に位置する主要研究機関のトップに、ヘンプ分野の第一線で活躍する科学者が就くことになり、さらに州内にある3つの農業研究施設も指揮下に置く形となります。

ジェサップ氏の研究は、ヘンプ、ソルガム(モロコシ)、キビ、永年性の牧草など、干ばつに強い一年草・多年草のネットワーク構築に注力しており、「これらの植物は、すべて多様な付加価値型バイオ製品の原料(フィードストック)になり得ます」と語っています。

今回の人事は、テキサスA&M大学が農業イノベーションの限界に挑戦するタイミングに行われたものであり、特に産業用ヘンプ分野の拡大、干ばつ耐性の強化、土壌健康の改善といった、テキサス州の農業にとって極めて重要な課題に取り組む姿勢を反映しています。

高温環境に適したヘンプの開発

ジェサップ氏は、テキサス州の気候条件に適応したヘンプ品種の開発において重要な役割を果たしており、特に遺伝子育種の分野で高く評価されています。

直近の成果としては、繊維用と穀物用の両方に適した「デュアルパーパス(兼用)型ヘンプ品種」の開発が挙げられます。これらの品種は、テキサス特有の高温・高湿・乾燥という厳しい気候条件でも育成可能であり、これまで同地域でのヘンプ栽培を困難にしていた課題の克服に大きく貢献しています。

この研究は、米国農業食糧研究所(NIFA:National Institute of Food and Agriculture)の助成を受けたプログラムの一環であり、南部地域におけるヘンプ育種プログラムの空白を埋めることを目的としています。

また、ジェサップ氏の研究チームは、ヘンプの医療分野での可能性にも注目しており、特に「がん治療におけるヘンプの応用」に関する探索的な研究も進めています。

グローバルビジョンを掲げて

新たにセンター所長に就任したジェサップ氏は、これまで進めてきた各種プロジェクトの発展と、研究領域のさらなる拡大に向けて、Texas A&M AgriLife Research and Extension Center の運営をリードしていくことになります。

サンアンジェロ拠点のセンター長として、彼はセンターの全運営と、関連する3つの研究施設 ― ソノラにあるリサーチステーション、メナード近郊のカール&ビナ・スー・マーティン研究牧場、そしてオゾナにあるリード研究牧場 ― を統括します。

ジェサップ氏は次のように語っています:
「チームベースの研究と普及活動を、統合的・適応的、かつグローバルなビジョンで展開していきたいと考えています。」

彼の研究プロジェクトはこれまでに総額800万ドル以上の研究資金を獲得しており、その豊富な経験と実績を活かして、センターの未来を構築していく意欲を見せています。

なおジェサップ氏は、2023年からAgriLife Researchにて産業用ヘンプおよび多年草の育種研究者、またTexas A&M大学の土壌・作物科学学部の教授として活動してきました。過去にも、2009~2016年には助教授として、2016~2023年には准教授として、同機関に長年在籍していた経歴を持ちます。

編集部あとがき

 今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1.テキサス農業におけるヘンプの研究が本格化し、国際競争力を帯び始めている

今回の所長人事は、テキサス州という広大かつ気候条件の厳しい土地で「ヘンプを含む持続可能な作物研究」が最前線に来ていることを象徴しています。 特に干ばつ耐性、繊維・穀物の兼用型品種開発、土壌改善といった課題解決に資する作物として、ヘンプは農業イノベーションの中心に位置付けられ始めています。

2.“デュアルパーパス型ヘンプ”の開発は、地域経済と持続可能な産業化のカギ

ジェサップ氏の研究は、食料と資材(穀物+繊維)という2つの用途を兼ね備えた品種開発に成功しており、これは農家の経済的安定と多角的収益源の創出を可能にする「レジリエント農業」の模範モデルといえます。

3.医療分野や環境対応など“応用研究”の広がりが期待されている

ジェサップ氏は、がん治療におけるヘンプの応用といった医療的可能性にも研究対象を拡大しており、ヘンプがもたらす産業価値は「繊維や作物」にとどまらず、バイオ医療や環境改善の分野にも拡大する兆しがあります。

4.“グローバルビジョン”を掲げた研究所運営が、米国南部の研究ネットワークを進化させる

ジェサップ氏の就任は、単に所長が交代したというニュースではなく、「世界基準で研究と普及を行う拠点」としてのセンター再構築の始まりです。サンアンジェロに加えて複数の研究牧場を束ね、チームベース・クロスフィールド型の農業研究モデルを地域から世界へ広げていく構想が明確に打ち出されています。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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