世界のヘンプ繊維生産の中心地である中国黒龍江省の青岡県では、ハイテクソリューションの開発を政府が支援し強化を行なっていることから、2021年には4万エーカー(約1万6,200ヘクタール)のヘンプの収穫を見込んでいます。
青岡県の産業用ヘンプの栽培面積は、2016年の1,500エーカー(約607ヘクタール)から着実に拡大しており、栽培から製品化まで強固に構築されたヘンプ産業サプライチェーンに供給しています。
青岡県当局によると、今年は同県で研究目的だけでも6,600エーカー(約2,600ヘクタール)のヘンプが植えられたといいます。
黒龍江省は世界のヘンプ繊維生産量の半分を占めており、青岡県はその70%を生産しています。黒龍江省から輸出されるヘンプ織糸はすべて青岡県産であると、黒龍江省当局は述べています。
中国ヘンプ産業の発展に向けて
中国政府は、青岡県のヘンプサプライチェーンを「一県一産業」政策のプロトタイプとし、高品質なヘンプ繊維産業の発展と促進を目指しています。
The National Hemp Industry Technology System(NHITS)とQinggang Agricultural Centerは共同で、ヘンプの栽培方法や、その繊維の特性など、ヘンプという素材の幅広い用途について、様々な研究開発を行っています。
最近では、NHITSのHarbin Hemp Test Stationと、Qinggang Agricultural Centerとが共同で、AIによる高精度な撮影技術を搭載したドローンを配備し、ヘンプ畑に肥料を散布しました。
この技術は、中国側が「世界をリードする」と謳っているミストスプレーノズルを使って、繊維用ヘンプの成長を促進し、耐病性を向上させることができ、従来の散布方法に比べて肥料を15%節約することが可能だといいます。
また、このパートナーシップによって、青岡県では、高品質な繊維の品種比較試験や、高い収穫が可能な栽培技術のデモンストレーションなども行っています。
その他の先進的な開発と取り組み
青岡県では他にも、以下の取り組みが行なわれています。
・大型精密プランターと植物管理の無人化技術を拡充、自走式収穫機の保有台数を120台に拡大
・現在、ヘンプの紡績は5名の技師で管理
・ヘンプ織物製造ラインを新設
・繊維加工能力が6万本を達成
・ヘンプ繊維を原料としたパーティクルボードやパレットの製造工場を立ち上げ
また、より高品質な繊維用ヘンプの開発、害虫駆除、病気予防、繊維を分離させる特殊なレッティング技術などの研究も続けているといいます。
黒龍江省では、綿花栽培での膨大な水の使用や、土壌の塩害、農薬使用、など様々な環境問題を解決する為、綿花の代替にもなる繊維用ヘンプの大規模な研究開発に乗り出しています。
官民一体となった支援
黒龍江省の大学とウクライナやカナダのパートナーが参加する包括的な研究プログラムでは、収穫量の高いヘンプ品種の開発、コンバインを使った茎や種子の効率的な収穫、酵素を使って環境にやさしい方法でヘンプの繊維を生産するバイオテクノロジーの導入など、様々な研究が行われています。
これらの黒龍江省の取り組みは、中国政府や科学者から注目され、支持を得ているだけでなく、中国の大手投資ファンドも資金を投入しています。また、同省は海外企業とのパートナーシップも歓迎しており、ヨーロッパやアメリカとの取引を模索しています。
農薬問題や品質管理の面が懸念される中国ですが、今回の記事で、その点にも対処していることが分かり、ヘンプ産業発展に向けた官民学一体となった積極的な取り組みには、むしろ賛同できます。 今後の中国の動向に注目していきましょう。
引用元;https://hemptoday.net/40000-acres-of-fiber-hemp-fuels-chinas-one-county-one-industry-strategy/