
産業の原点へ回帰
ポーランドの産業用ヘンプ栽培が、再び拡大しています。2026年7月末時点の栽培面積は約2,171ヘクタールに達し、2025年末の1,146ヘクタールから89%増加しました。
これは、ポーランドが2022年に従来の栽培許可制度を廃止し、全国登録制度へ移行して以降、最も大きな栽培面積です。
データを公表したのは、国内の産業用ヘンプ登録制度を管理する政府機関、国立農業支援センター(KOWR)です。今回の増加で注目されるのは、単に栽培面積が増えたことだけではありません。
ポーランドの業界関係者は、今回の拡大について、過去のCBDブームとは異なり、実際の需要に支えられた成長だと見ています。
「今回は実需がある」
欧州の主要ヘンプ企業Kombinat KonopnyのMaciej Kowalski氏は、今回の市場について「今回は実際の需要が背景にある」と説明しています。ポーランドでは2020年にも、ヘンプ栽培面積が3,000ヘクタールを超えるまで拡大した時期がありました。
しかし当時は、世界的なCBDブームの終盤にあたり、投機的な事業者の参入が栽培面積を押し上げていた側面が大きかったとされています。
その後、CBD原料市場が崩れると、ヘンプ栽培面積も大きく減少しました。
今回の増加は、その時とは少し状況が違います。
ポーランド天然繊維・薬用植物研究所(IWNiRZ)でポーランド・ヘンプ・プログラムを率いるWitold Czeszak氏も、現在の市場について、穀物用と繊維用品種が再び栽培の中心になっていると指摘しています。
つまりポーランドのヘンプ産業は、CBDなどの新興市場ではなく、穀物や繊維といった伝統的な産業用途へ戻りつつあります。
登録農家も増加
栽培面積の拡大とともに、生産者の数も増えています。2026年7月31日時点の登録生産者数は1,681件となりました。2025年末の1,592件から増加しており、制度移行が始まった2022年の425件と比べると、約4倍の規模です。
一方で、農家からヘンプを買い取る企業や事業者の登録数は減少しています。
2024年には87事業者でしたが、2026年には76事業者となりました。生産者が増える一方で買い手側の数が減っている点は、今後の市場構造を見るうえで一つの注目点になりそうです。

規制緩和が後押し
現在の成長を支えている背景の一つが、2022年に行われた規制改革です。それまでポーランドでは、ヘンプを栽培するために毎年許可を取得する必要があり、地域ごとの制限も存在していました。
2022年の改革では、こうした制度を廃止。
代わりにKOWRへの登録制度が導入され、国内のTHC基準は0.3%に設定されました。つまり、毎年許可を申請する仕組みから、よりシンプルな登録制度へと変更されたことになります。
こうした規制緩和によって、農家がヘンプ栽培へ参入しやすい環境が整いました。
CBDブーム後の低迷
ポーランドのヘンプ産業は、これまで順調に成長してきたわけではありません。2020年には栽培面積が約3,500ヘクタールまで拡大しました。しかしその後、世界的なCBDバイオマス市場が崩壊。
さらに、人気の高かったフィンランド産の穀物用品種FINOLAをめぐる問題によって、ヘンプ栽培に対するEU補助金が受けられない状況も発生しました。
こうした影響によって、国内のヘンプ栽培面積は大きく減少しました。今回の回復は、その低迷期を経たうえでのものです。
穀物用品種が最大シェア
現在、ポーランドで最も広く栽培されているのが「Henola」という穀物用品種ですHenolaは、ポーランド天然繊維・薬用植物研究所(IWNiRZ)が開発した国産品種で、現在の栽培面積は約833ヘクタール。
国内のヘンプ栽培面積全体の3分の1以上を占めています。一時問題となったフィンランド産FINOLAも、再びポーランドの穀物生産者の間で利用が増えています。
このほか、ポーランド産のBiałobrzeskieや、フランス産のFutura 75といった繊維用品種も広く栽培されています。
現在のポーランドでは、CBD原料向けではなく、穀物と繊維を目的とした品種が中心になっていることが分かります。
飼料市場が需要を牽引
特に成長しているのが、ヘンプ穀物を利用した動物飼料市場です。現在、ポーランド国内のヘンプ穀物需要を主に支えているのは、この飼料分野だとされています。一部の農家からは、ヘンプの方が従来の穀物より高い収益を得られているという声も出ています。
業界では、まず飼料市場を安定させ、その先に人向けの食品市場を広げたい考えです。
具体的には、ヘンプ由来のプロテインパウダーや、高栄養価のサプリメントなどへの展開が期待されています。つまり、現在の飼料需要を足がかりに、より付加価値の高い食品分野へ進もうとしている段階です。
主要産地も形成
現在、ポーランド国内でヘンプ栽培が特に盛んな地域は、東部のルブリン県です。ウクライナとの国境に位置する農業地域で、国内最大級のヘンプ栽培エリアとなっています。
このほか、北中部のヴァルミア=マズールィ県やクヤヴィ=ポモージェ県でも、大規模なヘンプ栽培が行われています。今回の栽培面積拡大は、単なる一時的なブームではなく、穀物や繊維といった具体的な需要に支えられている点が大きな特徴です。
2020年のCBDブーム時とは異なり、現在のポーランドでは、ヘンプを一般的な農産物や工業原料として定着させる動きが進んでいます。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1.ポーランドのヘンプ栽培面積が89%増加
2026年7月末の栽培面積は約2,171ヘクタールとなり、2025年末の約1,146ヘクタールから大きく増加しました。2022年に登録制度へ移行して以降では最大規模です。
2.今回はCBDブームではなく「実需」が背景
2020年の栽培拡大はCBD市場への投機的な参入が大きな要因でした。今回は穀物や繊維といった既存産業からの需要が中心で、より安定した市場形成につながる可能性があります。
3.最大の需要先は動物飼料
現在、ヘンプ穀物の需要を最も強く支えているのが動物飼料分野です。一部では従来の穀物より高い収益を得ている農家もあり、将来的には人向けのプロテインや高栄養食品への展開も期待されています。
4.ポーランドのヘンプ産業は「原点」に戻りつつある
CBD中心の市場から、穀物や繊維といったヘンプ本来の産業用途へと重心が移っています。今回の成長は、ヘンプが投機的な作物ではなく、通常の農業・工業原料として定着していく流れを示しています。


