CBD残渣を含む飼料、適切な断食期間でTHC残留ゼロに
新たな研究によって、CBD抽出後に残るヘンプのバイオマス(残渣)を乳牛の飼料に利用しても、一定期間その飼料を与えるのをやめれば、ミルクや食肉にTHCが残留しないことが確認されました。
これは、大量の低価格な残渣を抱えるアメリカのCBDヘンプ農家にとって、大きな希望となる発見です。
この研究成果は、米国食品医薬品局(FDA)によるヘンプ残渣の飼料使用承認への道を開く可能性を秘めており、苦境に立つ生産者にとって新たな収益源を生み出すきっかけとなるかもしれません。
28日間の給餌と4週間の断食期間で検証
この査読付き研究は、オレゴン州立大学(Oregon State University)によって実施され、農業・食品化学専門誌「Journal of Agricultural and Food Chemistry」に掲載されました。
試験では、18頭の乳牛に対し、飼料のアルファルファペレットのうち13%をCBD抽出後のヘンプ残渣に置き換えた餌を28日間与えました。
その後、4週間の“断食期間”(残渣を与えない期間)を設け、ミルクと組織のサンプルを検査した結果、THCおよび他のカンナビノイドは検出限界以下という結果になりました。
「次なる一歩」FDA承認に近づく可能性
この研究を率いたマッシモ・ビオナズ氏は、「2週間の断食期間を設ければ、牛乳を通じてTHCを摂取するリスクは完全に回避できる」と述べています。
今回の研究は、すでに進んでいた「ヘンプシード」や「ヘンプミール(ヘンプ種子粕)」を家畜飼料として活用する研究に続くものであり、ヘンプの“全草利用モデル”の推進にも弾みをつける成果となっています。
ヘンプを飼料とする取り組み、徐々に広がる
CBD残渣の飼料利用はまだFDAによる審査中ですが、他のヘンプ由来の飼料成分は確実に前進しています。とくにヘンプ種子、種子粕(ヘンプケーキ)、オイルなどは、栄養価の高さから家畜やペットの飼料として高く評価されています。
2024年には、米国飼料管理官協会(AAFCO)が、ヘンプシードミールの定義を最終承認し、採卵鶏の飼料としての使用を正式に認可。これにより、各州で商業的利用が始まっています。
制度と科学のギャップを埋める“今”が来た
とはいえ、アメリカにおいてはFDAとAAFCOの動きが依然として鈍く、多くのヘンプ由来成分が正式に承認されていない現状があります。支持者たちは、こうした遅れがサステナブル農業の潮流に逆行していると批判し、既存の科学的証拠を無視していると主張しています。
一部の州ではパイロットプログラムや限定的な承認のもと、家禽・牛・水産養殖などの現場で好結果が報告されています。CBD市場の供給過剰と停滞が続く中で、飼料利用はヘンプにとって最も有望な市場拡張の一つと見られており、「今こそ制度を追いつかせるべき」という声が高まっています。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. 「断食」を条件に、安全性が科学的に証明された
CBD抽出後のヘンプ残渣は、搾乳の2週間前から与えるのを止めれば、ミルクや肉へのTHC残留がないことが明確に示されました。これは今後の飼料活用にとって極めて重要な前提条件となります。
2. 廃棄物ではなく“資源”としての可能性が広がる
今まで処分されていたCBD残渣を、家畜飼料という新たな用途で再活用できれば、農家の経済負担が減り、持続可能な循環型モデルの一端を担う可能性が広がります。
3. 他のヘンプ飼料成分はすでに制度上の前進も
2024年にヘンプシードミールの正式定義が確立され、採卵鶏向けの使用が認可されるなど、規制環境は着実に進展しています。残渣の承認もその流れに続くことが期待されます。
4. 科学と制度のズレが今、問われている
十分な安全性データが揃いつつある中で、FDAなどの遅れた承認プロセスは業界の成長を妨げています。エビデンスに基づいた迅速な制度整備が、今まさに求められています。