規制当局はCBDを医薬品と断定しようとしているのか?
最近、大西洋を挟んだ両側で事情を見ていると、ふと疑問に思うことがあります。CBDは、まもなく医薬品のみの扱いとなるのでしょうか?この問いは、一見すると奇妙に思えるかもしれませんが、実はそう遠い話ではありません。
ほとんど規制のないCBDセクターは、過去5年間で激しい市場となりました。
怪しげな企業が次々と参入し、新型コロナから癌に至るまであらゆる病気の治療薬としてマーケティングされた低品質の製品を売り込み、急速にブームを呼びました。
しかし、まさしく新市場でよくあることとして、ブームの後にはバブル崩壊が訪れました。
ヘンプの花穂(原料)の価格は、以前の高値の10%まで急落しました。
一部の見積もりによれば、大袈裟な宣伝文句に乗せられた投資家達も大挙して逃げ出し、小規模、独立系の事業者の90%が廃業を余儀なくされました。そして、ヘンプの畑も大幅に縮小されました。
Delta-8THC、HHC、煩雑な申請システムなど崩壊の種の嵐
その全てを通じて、大西洋を挟んだ両側の規制当局は、ひたすら指をくわえて見ている状況です。
米国は依然として、手に負えないほど荒れ狂うCBD市場を掌握できていません。その市場は制御不能に陥りつつあります。
一部の利害関係者や法制議員は、FDA(補足:米国食品医薬品局)が今年早々に手を引いて、「現行の法的枠組みの下では、この化合物を規制することができない」と言い出した後、ヘンプエキスを食事補助品や食品・飲料の添加物として規制する法律を求めてきました。
連邦のガイドラインが欠如している中で、個々の州は、グレーな市場が繁栄する中で、CBD製品をどう扱うか苦闘を続けています。
ヨーロッパでは、歴史的な裁判が行われた後、ようやく欧州委員会がCBDを合法的で、麻薬ではないと宣言しました。
しかし、その宣言が必ずしも不変であるわけではありません。業界は濃度に応じて食品、サプリメント、医薬品のカテゴリーに分ける3段階の安全システムを提唱しています。
CBD製品が安全であることを確認するプロセスはかなりスローで進行しており、加盟国を不安にさせています。
例えば、チェコ共和国は最近、CBDとヘンプ由来の他のカンナビノイドを含む製品のマーケティングを禁止する意向を示し、懸念の声をあげました。
イギリスはヨーロッパで初めて新食品としてCBDの道を開きましたが、申請が殺到した結果、そのプロセスはほとんど崩壊寸前になり、規制当局にとって一般的には問題が多く、頭痛の種となっています。
FDA、EFSAと規制当局が上げるCBDを有害とする赤旗
食品や薬物に関する政策については、FDAを含む米国とヨーロッパの機関(EU非加盟国である英国も含む)がしばしば連携して動くことを覚えておくことが重要です。
それゆえに、大西洋を挟んだ両側の規制当局が最近、CBDの安全性について赤旗を掲げたことは少々警鐘を鳴らすものです。
FDAは今年の4月末に「カンナビジオール(CBD)の経口毒性のレビュー」を発表しました。これは既存の臨床研究をまとめた40ページの文書で、特にCBDが小児、妊娠中の女性と胎児、高齢者に及ぼす潜在的な有害な影響について多くの懸念を提起しています。
著者らはCBDの長期的な摂取について更なる研究が必要であると述べています。
「CBDによる毒性のメカニズムは完全には理解されていませんが、それには重要な代謝経路や肝酵素機能の混乱、受容体特異的な結合活性、テストステロンのステロイド生成の混乱、エンドカンナビノイドの再取り込みと分解の抑制、および酸化ストレスの引き金となる可能性が考えられます」
と、この文書は厳しい(不吉な)科学的な言葉で指摘しています。
物議を醸し出すイギリスのCBD死亡報告書
このFDAの論文は、イギリスの食品基準局(FSA)がCBDに対する深刻な警告を出し、その製品の摂取によって10人が死亡したと主張する報告書を公表した今年の3月初旬の後に続くものです。
FSAは、今年2月28日現在で、有害反応の報告が860件(期間は特定されていない)受けていると述べています。(業界はもちろん、この報告を強く非難しました。)
そして、EUでの進展にもかかわらず、ヨーロッパ食品安全局(EFSA)もCBD使用の潜在的なデメリットについて更なる研究を求めています。
これは、FDAが肝臓、消化管、内分泌系統、神経系、心理的健康に対するCBDの影響について懸念を表明していることを反映しています。EFSAは、CBDが新食品(ノヴェルフード)としての安全性は「現時点では確認できない」と繰り返し述べています。
現CBD産業の排他で勝ち残るのはどこなのか?
ビッグファーマ(大手製薬会社)が舌鼓を打つのを想像してみてください。
完全に合法で規制されたCBD製品の形態は、多くの国で処方薬として入手できる高濃度配合のEpidiolex(英国とEUではEpydiolex)だけです。
アイルランドのJazz Pharmaceuticals社がヨーロッパと米国でEpydiolexの承認を受けると、大手製薬会社は注目し出しました。
Jazz社は、全てのCBDを医薬品として区別するための積極的なロビー活動への取り組みで、しばしば非難の対象になりますが、製薬業界のCBDへの関与は一社に留まらず、世界中に広がってきています。
大手製薬会社といった巨大で強い医薬品としてのCBDロビー活動と、現CBD産業の貧弱なロビー活動との攻防になるので、新興産業であるCBD業界は、厳しく不利な状況に立たされています。
さらに、CBD業界は、Delta-8THCやHHCなど、自身の足元すら掬われてしまうという問題を自ら起こしています。
バブルが弾けて使い道がなくなったCBD花穂原料が溜まりに溜まって行く供給先を「ハイ」を模倣した合成混合物の市場に向けてしまうなど、ヘンプとCBDが薬物であるという誤解を深める自滅的な失策を犯しています。
局所的な課題に翻弄されず未来大局を見て対策を施していこう
大西洋を挟んだ規制当局同士がCBDについてどれほど密接に連携しているのか、そして現在の共通認識は何なのか?新商品への対応に迫られる規制当局は、最も抵抗が少ない道を選び、単にCBDを医薬品と宣言することはあるのでしょうか?
そうならないことを願いましょう。もしもそうなったら、それは我々が知っているCBD業界の最後の一釘となるでしょう。
さらに大きな悲劇は、それが産業用ヘンプの発展を10年以上も遅らせてしまうことです。