ブラジルのヘンプ規制、9月30日締切を前に不透明さ続く
ブラジル政府がヘンプ栽培を厳格に管理された製薬用途に限定する可能性があるとして、業界関係者は9月30日に迫る規制導入期限を前に懸念を示している。
この規則がブラジルの世界市場参入のあり方を決定づけると、シンクタンク「インスティトゥト・フィクス」のブルーノ・ペゴラロ会長は述べる。
「もし製薬産業にのみ栽培を例外的に認める形になれば、機会は大幅に制限され、利益は長期的にしか得られないだろう。」
過度に制限的な規制は非効率になる可能性があるとし、ウルグアイやコロンビアが幅広いライセンス制度で複数市場を可能にしている例を挙げた。現状の官僚主義や不透明さは、研究すら困難にしていると指摘している。
混乱の経緯
この懸念は、不安定な規制プロセスの中で高まってきた。今年5月、国家保健監督庁(Anvisa)は最高裁判所が定めた期限直前に、突如ヘンプ規制案を審議から外した。裁判所は2024年末に「低THCカンナビスは麻薬法の対象外」と全会一致で判断し、半年以内に規制枠組みを整えるよう命じていた。
しかしAnvisaは「調整の必要」を理由に議題から外し、産業利用(繊維、食品、建築、バイオプラスチックなど)が無視されるのではとの憶測を呼んだ。
研究と農業の可能性
ブラジル農業研究公社(Embrapa)の研究者ダニエラ・ビテンコート氏は、「ブラジルには気候、肥沃な土壌、数百万ヘクタールの退化牧草地があり、ヘンプ生産に理想的な条件が揃っている」と語る。
ただし「明確で強固な規制がなければ、生産チェーンを安全に構築できない」と強調した。
HEMPTECH BRASILの発足
Embrapaはインスティトゥト・フィクス、民間アクセラレーターのThe Green Hubと三者連携し「HEMPTECH BRASIL」を設立。研究促進や技術革新支援を通じ、持続可能な産業発展の基盤づくりを目指す。
グリーンハブCEOのマルセル・グレッコ氏は「規制を見据えた準備が急務だ」とし、新技術とサステナブルなビジネスモデル創出を期待している。
重大な分岐点
既にブラジルの医療用大麻市場は1億8,500万ドル規模とされる。農業潜在力を活かせば世界的リーダーになる可能性もあるが、産業用途を含む規制が整わなければ「歴史的なチャンスを逃す」と関係者は警告している。
「大企業も家族農家も恩恵を受けられるはずだが、ルールがなければ何も始まらない」とビテンコート氏は締めくくった。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1.規制の行方がカギ
ブラジル政府が製薬用途に限定すれば、産業利用のチャンスは大きく失われ、規制が産業発展の足かせとなる恐れがある。
2.不透明な規制プロセス
Anvisaが規制案を突然取り下げたことで、裁判所命令に従うのか、さらなる遅延や制限的な措置となるのか不透明感が広がっている。
3.農業大国としての潜在力
ブラジルは理想的な気候・土壌・土地を持つため、適切なルールが整えば世界的なヘンプ生産国に成長できる。
4.産官学連携の始動
Embrapa・非営利団体・民間企業がHEMPTECH BRASILを設立し、研究・技術・持続可能性の面から規制に備えた準備を進めている。