トランプ政権の規制緩和推進、ヘンプ産業には逆風
トランプ政権が「官僚的な規制を減らす」として進めた動きが、逆にヘンプ業界にはさらなる障壁を残す結果となりました。司法省(DOJ)は今月、バイデン政権時代に進められていたCBD研究やヘンプ検査を支援する規則の策定を中止したと通知しました。
DOJはこれを「連邦政府の規制緩和イニシアチブの一環」と説明していますが、実際には嗜好用大麻やヘンプに関する規制緩和の歩みが止まり、産業界にとっては後退と受け止められています。
研究環境の停滞
この規則撤回により、CBDの研究は依然として嗜好用大麻ナと同じ煩雑な枠組みに縛られることになります。研究者はDEA(麻薬取締局)の承認取得に長い時間を要し、FDAとの重複した書類業務に対応し、適合した研究用素材の入手にも苦労する状況が続いています。これらが臨床試験の進展を妨げているのです。
2022年に成立した「医療用嗜好用大麻・カンナビジオール研究拡大法」では、こうした障壁を緩和し、研究者がCBD供給により迅速にアクセスできる仕組みを構築することが定められていました。今回撤回された規則は、この法律を実際に運用するための枠組みとなるはずでした。
ラボ登録要件も後退
もう一つの規則撤回は産業用ヘンプに直結します。これまで提案されていた規則では、「ヘンプの化学分析のみを行うラボ」であればDEAへの登録を免除する内容が盛り込まれていました。業界はこの変更を歓迎しており、検査能力の拡大やコスト削減につながると期待されていました。
しかし規則撤回により、依然として「DEA認証済みラボ」でしかTHC含有量の検査ができないままとなり、農家や企業は限られた検査施設に依存せざるを得ず、遅延やコスト増が続きます。
規則撤回の仕組み
米国の規制策定プロセスにおいて、提案段階にとどまっている規則は、司法省や他の機関が取り消したり凍結したりする権限を持っています。今回DOJは、前政権下で進められていたが未完了の規則策定を停止し、CBD研究支援とヘンプ検査の二つの重要な規則を廃止しました。
これにより、ヘンプ業界は再び複雑な規制の網にからめ取られる形となっています。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1.規制緩和どころか逆行
DOJが規則策定を中止した結果、CBD研究や検査に必要な規制緩和が実現せず、業界には引き続き煩雑な規制が残った。
2.研究進展が阻害される
DEA承認の遅延やFDAとの二重書類作業など、CBD研究者が直面する障害はそのまま温存され、臨床試験や科学的データ構築が滞る。
3.ラボの検査能力不足が継続
DEA登録ラボ以外でのヘンプ検査が認められなかったことで、検査コストと時間がかさみ、農家や企業に不利益を与えている。
4.規制撤回の制度的背景
DOJは法律そのものを覆すことはできないが、未完了の規則策定を取り消す権限を持っており、今回はその権限行使が業界に打撃を与えた。