イタリアンヘンプが熱い、世界クラス目線で築く未来
イタリア中西部の地元関係者によると、同地域全体の農業に変革をもたらす持続可能なヘンプのサプライチェーンモデルを構築する計画が進んでいます。
ラツィオ州フロジノーネ県のロッカセッカ市の関係者によると、2022年の栽培シーズンに向けて、栽培地の準備を進めているとのことです。
同市によると、フロジノーネを国内のヘンプ加工センターとして発展させ、貧しい土壌を再生させながら、この地域に産業や投資を呼び込むことが目的だといいます。
このプロジェクトは2020年に初めて発表されました。
ヘンプを基軸にした農業の新しいビジョン
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ロッカセッカ市のジュゼッペ・サッコ市長は、「産業用ヘンプの栽培によってロッカセッカは、この地域と州全体の農業に新しいビジョンを打ち出すことができるプロジェクトの先駆的な都市になる可能性があります。」と述べました。
この取り組みは、ラツィオ州の広範なフレームワークである「グリーンバレー」プロジェクトの一環であり、循環型経済と環境修復の原則を組み合わせたものです。
このプロジェクトでは、ヘンプのファイトレメディエーション(土壌浄化)能力を利用して、この地域の土壌に含まれる金属や有害物質を浄化し、バイオプラスチック、化粧品、建築材料、繊維などの環境に優しい製品の生産にヘンプを利用することを目指しています。また、当局はヘンプの花やバイオエネルギーの市場も視野に入れています。
循環型農業、経済以外は通用しないことに気づいたひとたち
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南ラツィオ州産業開発コンソーシアム(Cosilam)は、既に植え付け前の分析を行い、今年の栽培サイクルを経た後に再度土壌をチェックする予定です。このプロジェクトに参加している農場では、フランスの繊維品種である Futura75 を栽培します。
このプロジェクトには、ロッカセッカ市と Cosilam のほか、カッシーノ大学と南ラツィオ大学、国立新技術・エネルギー・持続可能な経済開発庁(ENEA)、コンサルタント会社のアグリコラハッピーヒル、チェッカノ市とサンジョバンニ・インカリコ市が参加しています。
「私たちは、この地域には第2のチャンス、”第2の人生 “が必要だと考えました。環境保護の観点から、私たちは長年にわたって非常に高い代償を払ってきた地域に住んでいるからです。この地域では、もはや直線的な経済が上手く機能しないということを理解し始めたのです。」とCosilam の Marco Delle Cese 代表は述べました。
ヘンプクリート、ヘンププラスチックの資材提供も
イタリアでは、ここ数年、ヘンプを使った取り組みが着実に進んでいます。
カンパニア地方にある25の農園からなる協同組合「カナパ・デル・スッド」は、地元のヘンプ畑を供給源とした、短いサプライチェーンに基づいた地域農業システムの開発に取り組んでいます。このグループは、植物全体を使った戦略を展開し、さまざまなヘンプ製品を生み出しています。
プーリア地方では、ヘンプ関係者のコンソーシアムが短いサプライチェーンを構築し、地元の建設プロジェクトにヘンプクリートの建築資材を提供しています。
ラツィオ州に隣接するウンブリア州は、昨年、ヘンプ繊維を使ったバイオプラスチックやバイオポリマー、天然繊維やファッション分野の可能性に注目していると発表しました。その計画では、ファイトレメディエーションによる汚染された土地の浄化や、水のファイトピューリフィケーションなど、ヘンプの可能性に注目しています。
2020年末にピエモンテ州では、スイスやフランスと国境を接するアルプス山脈の麓の最北西地域で、産業用ヘンプのバリューチェーンの開発を進めるために300万ユーロ(約3億5,000万円)を配分することが提案されました。
日本国内での普及はまだまだですが、欧州では耳馴染んできているヘンプクリート、ヘンププラスティック、そして、ファションで活用されるヘンプ繊維など、世界的には、単なる「素材」としてのヘンプという見方ではなくなってきています。
ヘンプのファイトレメディエーションによって汚染された土地の浄化をしながら魅力的な製品が作れるとあれば、注目されない訳がありません。持続可能な農業そのものです。
今では耳馴染みの少ないキーワードかもしれないが、「未来の当たり前」を、ヘンプが今、語り始めています。日本国内で栽培できるようになる日を夢見て。