国会答弁がようやく開催
パトリック・コリンズ博士(麻布大学名誉教授)
2014年に、日本人は非常に重要な問題をエイプリル・フールのウソにしてしまった。
その年の4月1日に農林水産委員会による長く先延ばしにされてきた国会答弁がようやく開催されました。
過去数年間に、鷲尾英一郎議員を含めた何人かの政治家は、ある時代遅れの法律を修正するように政府に訴えました。 その法律は施行されてから65年以上が経ち、すべてのOECD加盟国はすでに書き直したかあるいは廃止した法律です。これによりOECD諸国の経済は成長し、公衆衛生の改善、環境にやさしい建築材料などのバイオ素材の普及につながっています。また、何千ヘクタールもの未使用の農地を利用することで、農村経済の復活にも貢献しました。2014年以来、この産業分野は急速に成長しているため、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなど、政府が首尾よく改革を実行した国では、およそ100万人の雇用が新たに創出されると言われています。
日本だけがこの潮流に乗らないのでしょうか?日本経済は四半世紀のあいだ低迷を続けているため、労働者の40%が非正社員になっています。年間10,000ヘクタールもの農地が放棄され続けています。 アルツハイマー病の患者は150万人までにのぼります。
さて、この時代遅れの法律は何でしょうか? もちろん、読者の方はお分かりでしょう。1948年に米国政府のGHQによって日本の工業原料、主食、および伝統的な医薬品に1万年以上の間使用されていたヘンプの栽培を強制的に禁じた法律です。GHQはヘンプが危険だと主張したわけですが、本当にヘンプは日本人の利益のために禁止されるべき植物だったのでしょうか?1948年時点では2万人以上の農家が何の問題もなくヘンプを栽培していたのです。
2014年のエイプリル・フールのウソは、厚労省の官僚によるものです。彼らは、1948年以来のヘンプの法的規制は大麻栽培を防止するためだと当時の農林水産大臣の林芳正氏に説明しました。
[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0009/18604010009005.pdf]
彼らは、現在の規制の説明によると、「大麻取締法は健全であり、論理的に進歩した法律に基づいており、日本人の福祉を促進するものである。」 この説明は少なくとも以下の6つの「省略の嘘」を含み、1つは「真っ赤の嘘」です。これぞエイプリル・フールでしょう。
6つの「省略の嘘」
1) 厚労省の官僚たちは、数多くの有益な用途について言及していない点:
ヘンプは植物として、日本の縄文時代 (1万年以上前)から今日まで歴史的に長くそして非常に有益であった事実があります。ヘンプは多くの用途に使用される繊維の源であることに加えて、お米が日本に導入される何千年も前から日本人の主食である「八穀」の一つとして栽培されていました。 ヘンプ栽培の長い歴史の結果、「麻」の文字は男女ともに多くの姓と名で使用されています。それだけでなく、多くの地名と山の名前としても定着しています。 これはヘンプが奇跡と言っていいほどに有用で、価値のある植物と認識されていたことを意味しています。また、ヘンプは神道儀式においても重要な役割を果たしていて、米国によってヘンプが禁止されるまでは皇室行事によって保護されていました。このようなヘンプを使用してきた日本の歴史について林農林水産大臣は国会答弁中に全く言及しなかったのです。
2)厚労省官僚は、1948年に大麻取締法の導入を説明する際に、同法がGHQからの命令に基づくもので、ヘンプ栽培は危険であることに日本政府が異議を唱えるのには何も証拠がなかったことを説明しなかった。この禁止により、当時約2万人の農民が麻を栽培していた日本の農業経済は深刻なダメージを与えられました。
3)厚労省官僚は、1996年にドイツの科学者が開発した、THC(単一化学物質)の乾燥重量0.3%以下の品種の以下2つの根拠による安全基準について言及しませんでした。
一つ目は、THC濃度が0.3%以下であれば、中毒性が認められないこと。
二つ目に、0.3%以下の低濃度のTHCを濃縮するのは実質的に不可能であること。これらを根拠として、この安全基準はEU,米国を含む他の多くの国で採用されています。
4)厚労省官僚は、2003年に米国政府が産業用ヘンプから抽出されたカンナビノイドが認知症、アルツハイマー、その他の神経症の予防に効果があり、その使用に関する特許を取得したことについて言及しませんでした。
特許内容によると、100種類以上の植物性カンナビノイドがヘンプ特有の化学物質であることがわかっており、他の物質と比較しても幅広い「神経保護」作用があります。厚労省の官僚たちはこの重要な情報を林農林水産大臣に言及しませんでした。日本では2014年には100万人以上アルツハイマーの患者がおり、この上状況は厚労省の責任でもあるにもかかわらずです。
5)2013年8月29日に米国政府はヘンプに関連する独自の法律を更新し、THCが少ない品種は、もはや危険なものではなく、農作物の一つとして扱われるべきとしました。米国政府は1930年代からヘンプを違法としていましたが、1996年のドイツの安全基準に基づいて米国での産業用ヘンプの栽培は、ゼロから復活し、ヘンプ作付面積はほんの数年で約7000ヘクタールまでに増大、カナダとヨーロッパではすでに約5万ヘクタールものヘンプ畑が広がります。厚労省の官僚たちは、この事実についても言及しませんでした。
6)言うまでもなく、厚労省の官僚たちは林農林水産大臣に最新の研究で発見されたヘンプの多くの新しい有益な用途についても言及しませんでした。100種類以上の植物性カンナビノイドの分析により、新しい用途が発見されています。例えばプラスチックへの応用および ナノ テクノロジーへの応用などです。
1つの「真っ赤の嘘」
6つの省略の嘘に加えて、厚生労働省大臣官房審議官、成田昌念氏の「THCを濃縮する等の方法により、容易に乱用される危険性が十分に認められます」という発言がありました。この発言は完全に誤りであります。産業用ヘンプの栽培や使用は、麻薬の供給源になる可能性がある、という主張には、国際的に受け入れられた安全基準を確立したドイツ人科学者によって主張されたとおり、全く根拠がありません。
結果的に、2014年4月1日の国会答弁で虚偽の情報が流されてしまったのです。さらに悪いのは、それが林農水大臣だけではなかったということです。多くの日本人が騙されてしまったことになります。当時の国会答弁記録はこちらで閲覧可能です。
[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/186/0009/18604010009005.pdf]
これはヘンプに関する政府の公式声明のようです。 ヘンプについて知りたがる人がいれば、これを読み、ヘンプについての印象やその潜在的な価値について完全に誤った情報を得ることになるでしょう。このように2014年4月1日の答弁記録は「偽のニュース」であり、一つの「印象操作」として科学的事実とは無関係に、近年、大手メディア企業によって不正に使用されています。