コラム by Steve Allen
ヘンプを美しい紡績レベルまで成長させた13年の歩み
私がアイルランドでヘンプ産業の立ち上げに携わった当初、同僚のテリー・バーマンと一緒に北アイルランドで、危機に瀕したリネン産業の関係者と多くの時間を過ごしたことがあります。
そこで私たちは、リネンのシヴを工業用プロセスに適したリネン繊維にするためのプロセスと技術について多くを学んでました。
ヘンプクリートは、大麻の茎の中心部にある「麻がら」の部分を使用します。英語ではShiv(
HempTODAYJAPAN
Riki Hiroi氏のnoteから引用:https://note.com/eachjapan_inc/
学んでいく過程で、これまで「廃棄物」とされていたヘンプ部位が「建材」として利用されることで新たな価値が高まるということに繋がり、ヘンプ繊維の可能性に光がさしてきたこの時代と同様に、ヘンプ建材も相乗効果で必要とされる。という点に気づかされたのです。
しかし、リネン業界の重鎮達は、ヘムコア社(イギリスで古くからヘンプを扱っている企業)から糸にするために送られてきたヘンプ繊維を、パレットに詰めて見せてきましたが、その表情は曇っており蔑んでました。そして、彼らは、「この送られてきたヘンプ繊維は紡績にはまったく適さない」と、説明し、代わりに美しいリネン繊維の束を比べてきました。
つまり、ヘンプで美しく紡績し、織物などを作るには、リネンより優れた方法で加工しなければならなかったのです。
ヨーロッパで最近加工されるヘンプのほとんどは、高速機械でバイオコンポジット産業用の材料に加工されるため、紡績には適していませんでした。
バイオコンポジット材料とは?:
コンポジット材料は2つ以上の異なる材料で構成された複合材料です。材料が互いに溶け合っている状態ではないため、それぞれの機能は失われずに共存します。 異なる材料を組み合わせることで、その材料を単独で使用するよりも強度、加工性等を向上させることができます。中でもバイオコンポジット材料は植物由来の材料が含まれているものを指します。
テリーと私はその後、何時間も、何日も、何週間もヘンプ畑で過ごし、シヴとハードを分離する技術を、小型移動式デコルチケーターでトライアンドエラーを繰り返しました。
突き詰めていく過程で、ヘンプ仕様に機械をアップデートしていくことは、非常にお金がかかっていくことがわかっていき、同時に、私たちの財政能力を超えていきました。
そして、、、
International Hemp Building Associationで集まる「知」と「技術」
IHBAは、昨年10月11日~12日にフランスのラカペル・マリヴァルで開催される第10回IHBA国際ヘンプビルシンポジウムで、ヘンプアクトなどの繊維加工技術、ヘンプクリート噴霧器、プレハブヘンプビルソリューションなどを発表しました。
IHBA(International Hemp Building Association)とは?:
https://internationalhempbuilding.org/
2009年の設立以来、世界のあらゆる地域の生態系と地域社会のために、持続可能で生物学的な方法で、ヘンプベースの建設資材とその副産物の生産と使用を開発、促進、支援することを目的としている団体。素材の生産から、その地域に適した建築のスタイルや新スタイルでの使用まで、システムを開発している会員を支援。IHBAは、国際社会全体にヘンプ建築産業を創出するために必要なインフラの確立を支援するために、相対する政府や業界団体を教育し、情報を提供している。
2011年、フランスの「スターとヘンプ」と共に前進・進化
フランスの有機麻農家であるピエール・アマデューは、私たちと同じようなアイデアを持ち、ヘンプ紡績計画を進めていました。
ピエールは2011年、スペインで開催された第2回国際ヘンプビルシンポジウムで、このアイデアの最初のバージョンである「スタートヘンプ」を発表し、私たちと強い前進を感じました。
その後、2台のトラックボディに搭載された彼のプロトタイプマシンを訪ね、その様子を拝見しました。他のプロトタイプと同様、初期にはいくつかの問題がありましたが、彼が目指しているものが見えてきました。
ピエールは、この課題に対する解決策を見つけるという決意を持ち続け、ヘンプアクト社の最新マシンを使って成功に導きました。
彼が成し遂げた結果は、ヘンプ産業全体にはまだ理解されていませんが、回を重ねる毎に多くの技術革新がおこる「IHBAシンポジウム」で、多くのヘンプ産業関係者の理解が確信に変わっていくことを期待しています。
幸運な参加者は、この機械がヘンプシヴをさまざまなヘンプの建築製品に変えるだけでなく、ヘンプ繊維を以前よりはるかに価値のある収入源に変えていける。という様子を見ることができるかと思います。
ヘンプビルディングという言葉は建材に限らず産業全体へのメッセージ
私は常々、「ヘンプビルディング」という言葉が、単なる建築にとどまらない広い意味を持ち、ヘンプ産業を構築する行為にも適用できると感じていました。
今年のシンポジウムも、まさにその一助となることでしょう。CBDバブルの崩壊が遠のく中、ヘンプが人類の病を癒す多くの可能性を秘めていることを知る私たちは、産業用ヘンプの経済性が健全であること、そしてその範囲が広大であることを知り、喜んでいることでしょう。
もちろん、建材以外には、ヘンプ食品、そして衣料品への波及も期待できます。私たちは、持続不可能な原材料をヘンプに置き換える必要があると感じてます。
しかし、ヘンプ食品もまだニッチで高価な市場であり販路が広くありません。ヘンプシードを商店や農家直販、どこでも購入可能なくらい身近な方が、将来的に多くの人がヘンプ食品にアクセスできます。
衣料産業は食品産業よりも工業化されており、自分でジーンズを織ったり、Tシャツを編んだりする人はほとんどいないでしょう。もし私たちがコットンをヘンプに置き換えるなら、衣料市場でヘンプを大きく拡大していくためには、何千トンものヘンプ繊維を生産する必要があります。
建築資材も同様です。一層、専門知識と技術が必須であり、一般的にできないことばかりでしょう。そこで、断熱材と建築という2つの産業をターゲットとすることで、ヘンプ産業の拡大に繋がると考えます。
著書に「Hemp Buildings:50 International Case Studies” (Seedpress, 2021), Building with Hemp (Seed Press, 2005, 2012), and an extensive paper collection on hemp-based construction.