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75年振りの大改革!大麻取締法はどのように改正されたのか?(前編)

法改正を報せる官報

目次

最も大きな改正点

大麻取締法(1948年制定)は、花穂、葉、未熟な茎、根を違法とし、成熟した茎、種子を合法とする植物部位による規制でした。法改正では、大麻、Δ9-THC、Δ8-THC、化学的変化により容易に麻薬に生成するもの(例:THCA)を「麻薬及び向精神薬取締法(以下、麻向法)」の「麻薬」に位置づけました。

そして、大麻取締法を「大麻草の栽培の規制に関する法律(以下、栽培法)」と名称を変更し、大麻草の栽培に特化した法律へと衣替えをしました。

これまで大麻取締法にはなかった目的規定(法律施行の理由と目的)が、「栽培法」には「第一条:この法律は、大麻草の栽培の適正を図るために必要な規制を行うことにより、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)と相まつて、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。」と明記されました。

法改正を理解するには、「麻向法」と「栽培法」のセットで捉える必要があります。

読者にわかりやすいように、大麻草の医療、嗜好、産業、伝統の4つの事業領域との関係を見ていきましょう。

前編で取り上げる医療と嗜好分野

各領域の改正点

医療

今回の法改正は、米国食品医薬品局(FDA)に2018年に承認されたCBD医薬品「エピディオレックス」に関して、国内のてんかん患者と学術団体が使用希望の声を上げたことをきっかけにしています。そのため、大麻草から製造された医薬品は、医師も患者も使用禁止とした大麻取締法第四条を丸ごと削除しました。

そして、大麻を「麻薬」に位置付けたことにより、「麻向法」の下でコデインやモルヒネ等と同じ医療用麻薬の流通管理の仕組みをそのまま使えるようにしました。全国の医師の3分の2が保有する都道府県知事免許の麻薬取扱者であれば、扱うことが可能となったのです。

製薬会社が長い時間と費用をかけた臨床試験を経て、承認を受けた医薬品(いわゆる西洋医薬品)であり、医療保険が適用される薬を対象としています。

まずは、現在第三相治験が進んでいる抗てんかん薬「エピディオレックス」が、戦後初めて大麻草から製造された医薬品に承認されることが期待されています。

但し、この制度では、海外で医療用大麻として流通している代替治療のない場合の人道的使用、生活の質(QOL)の向上、セルフケアとウエルネスのための個人栽培と使用のための「ハーブ大麻」を取り扱うことはできません。なぜなら、「大麻」の定義が「大麻草の形状を有するもの」が規制対象となったためです

嗜好

海外の嗜好用大麻の合法化の流れとSNSによる情報流通により、日本の大麻事犯が年間5,000名を超えるようになりました。警察等の現場からは厳罰化の要請があり、それに対応するための「使用罪」創設は、厚労省「大麻等の薬物対策のあり方検討会」(21年1月~6月)の当初からの最重要事項でした。

また、天然由来THCは大麻取締法、合成由来THC は「麻向法」と別々の管轄でしたが、改正法では、大麻、Δ9-THC、Δ8-THCを「麻向法」に位置づけることによって、自動的に「麻向法」の罰則規定のすべてが使えるようになったです。

大麻取締法では、大麻の所持、譲渡、譲受が「5年以下の懲役」でしたが、「麻向法」の適用となったので「7年以下の懲役」と厳罰化され、麻薬取扱者でないものが大麻を取り扱うと「施用罪」として「7年以下の懲役」が適用されることになりました。

日本は、1980年代から続く薬物「ダメ。ゼッタイ。」のゼロトレランス(非寛容)の薬物政策を堅持しており、2023年8月には「第六次薬物乱用防止五か年戦略」を決定し、大麻の厳罰アプローチを強化する方向が示されています。

ところが、国際的な薬物政策は、2018年以降に国連全機関の共通政策として人権擁護の観点から健康アプローチ及び非犯罪化へと転換しています。

世界の厳罰的な薬物政策を長年主導してきた米国では、バイデン大統領が2022年10月に大麻所持の恩赦を公式表明し、非犯罪化に舵を切っています。

日本でも専門家等から大麻の「施用罪」に反対の声があり、「日本の薬物政策全体が、厳罰アプローチから人権に基づく健康アプローチに転換できるかどうか」が今後の課題として残りました。

今後の課題

「麻向法」と「栽培法」の制定後は、THC基準値等を政令・省令・通知などで細則が決定され、24年度及び25年度から改正法の下での運用が始まります。

今回の法改正には、海外の先進的な法制度を見ると各領域に課題が残ります。法律の付帯事項として、「施行後5年を目途に、施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、必要な措置を講ずるものとする」と明記してあります。

つまり、今回の法改正で終わりではなく、その後もより良いものに改善していく余地が大きく残されていると言えるでしょう。

今後も大麻草を巡る世界情勢の変化を、現場の声として政治的に伝えていく努力を継続していく必要があります。

(参考)75年振りの法改正までの国会審議の流れ

秋の臨時国会で法案が内閣へ提出され、衆議院、参議院の両厚生労働委員会の審議を経て、両院で可決され、法律として公布されました。

医療と施用罪が24年度、栽培免許関係が25年度から施行されます。

大麻草の栽培の規制に関する法律案、麻薬及び向精神薬取締法を一部改正する法律案
令和5年10月24日閣議決定
https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/212.html 

大麻取締法75年ぶり改正へ 参考人質疑【#国会中継】衆議院 厚生労働委員会 ~令和5年11月10日~
https://www.youtube.com/watch?v=iKhXVkxJmTo

【#国会中継】参議院 厚生労働委員会 大麻取締法などの改正案で参考人質疑 ~令和5年11月30日~
https://www.youtube.com/watch?v=X1JzUNZ-8PM 

【#国会中継】参議院 厚生労働委員会 大麻取締法ほか改正案 ~令和5年12月5日~
https://www.youtube.com/watch?v=fUzUHniGYNo

【#国会中継】参議院 本会議 ~令和5年12月6日~
https://www.youtube.com/watch?v=rJOWU90m6Ew

議案審議経過情報
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDA7E6.htm

令和5年12月13日官報号外第260号
法律第八十四号 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律 公布
https://kanpou.npb.go.jp/

令和5年12月15日掲載
「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の公布について
(令和5年12月13日医薬発1213第1号)(PDF,3309KB)
【医薬局監視指導・麻薬対策課 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法関係】
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T231215I0010.pdf

後編はこちら:2023年12月28日 75年振りの大改革!大麻取締法はどのように改正されたのか?(後編:産業・伝統領域)

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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