産業用ヘンプ取引プラットフォームが投資家の撤退で閉鎖
アメリカの分析および商品取引プラットフォームであり、ヘンプを含む複数のセクターで運営していたPanXchangeが昨年末、事業閉鎖となったことが、創設者からの情報で明らかになりました。
ジュリー・ラーナー氏(Julie Lerner)は、PanXchangeのCEOも務めていましたが、同社のLinkedInページでも事業閉鎖を発表しています。
「PanXchangeが閉鎖するという悲しいお知らせをしなければならないのは、深い遺憾です」とラーナー氏は述べました。「残念ながら、PanXchangeの責任ではないにも関わらず、我々の資金提供者からの約1.5億円超の約束がされませんでした。」
ラーナー氏は、「現時点でさらに詳細を公表することは法的に制限されている」と述べています。
炭素市場への進出したときは順調だったが
ラーナー氏はHempTodayに、同社のヘンプセクターにおけるビジネスは市場全体の縮小により冷え込んだものの、炭素市場での成長目標を達成し、その分野での計画を順調に大きく前進させていたと語りました。
同社は2022年初頭から、炭素クレジット取引業者としての運営を開始しました。
「炭素分野で、私たちは著しい成長に向けて準備が整い、開発予定のプロジェクト群や他のプロジェクト開発者とのパートナーシップを通じて、彼らのクレジットをPXプラットフォームに持ち込むことができました」とラーナー氏は投稿で述べています。
ラーナー氏は資金提供を停止した投資家を特定していませんが、それは起業家に資金提供、持続可能性の分野のネットワークへのアクセス、および技術を支援する非営利団体であるHBAR Foundationであると考えられます。
PanXchangeは昨年8月に、HBARと関連するHedera Networkとの統合を支援するための資金提供に関する契約を財団と発表しました。
PanXchangeのウェブサイトによると、同社はそのプラットフォーム上での炭素取引のためにHederaのブロックチェーンソリューションを実装するため、約2億円の助成金の最初の分割払いを受け取りました。
ピーク時20万haから7,000haへ減少した事実
2011年に設立されたデンバーを拠点とするPanXchangeは、店頭の実物商品取引所およびコンサルティング会社でした。同社の最初のプラットフォームは2015年に東アフリカの農業市場で立ち上げられました。その後、2018年にアメリカの石油・ガス産業で、2019年には産業用ヘンプの取引所を構築しました。
PanXchangeは、2019年にCBDの取引がピークを迎えたときにヘンプ業界に参入しました。CBD市場のバブルが崩壊した後、同社は2020年にヘンプの穀物と茎(繊維)に注目を移しました。
これは、ヘンプの繊維、飼料、食用種子市場がアメリカのヘンプ農家にとって従来の換金作物に発展する可能性があることを示唆していました。
これらの展開は、ヘンプが長引く低迷を続け、CBDによって損害を受けたヘンプ農家が栽培を完全にあきらめたため、これまで実現していません。
アメリカのヘンプ農家は2022年に7,385haのみを収穫し、これは2019年のピーク時に202,000haが植えられた記録から大きく減少しました。
編集部あとがき
日本のヘンプ産業の進捗に対して、皆さんはどうお思いでしょうか。遅いと感じますか、あるいは、普通でしょうか、あるいは、世界についていっている。と、様々な思いで産業に参画されているかと思います。
国産ヘンププロジェクトは始まったばかりで、マスの方々には届いていませんが、模索しながらも少しずつ形が出来ていっています。そして、尚且つ、アメリカや欧州の失敗例を学べる貴重な時間が、私たちにはあります。
あくまで個人的ですが、そこには確固たる進捗があるように感じています。
もし、アメリカが CBDではなくヘンプ繊維、建材、食品からヘンプを大々的に解放していったら、CBDバブルの崩壊はなかったと思いますが、グリーンラッシュも起きていなかったとも思います。
それくらい参入障壁が低く、換金率が高く、そして体感が感じられる(効果が出てしまう)CBDのビジネスモデルというのは、拡大も早ければ終焉も早いということがアメリカの失敗を見ているとよく分かられるかと思います。
もし、アメリカのCBDバブル崩壊をご存知ない方は、こちらの過去記事「2023年5月16日【法改正前に関係者は必見】ヘンプ産業のバブル→バブル崩壊→「ヘンプ戦争」とまで呼ばれるようになってしまったアメリカ大失態の軌跡から学ぶ」をご参照頂くか、当サイトで「バブル」などで検索頂けましたら、あらゆる失敗談がアップされていますので、是非、ご参考ください。
ヘンプの良いところでもあり、産業を起点においた場合のデメリットになるところは、ヘンプは「あらゆる産業の原料」になる。という点であることと、全てにおいては、試験・研究が起点であることです。
そして、最大のデメリットは、消費者は「違法」あるいは「恐怖」という感情からスタートするという点です。
つまり、ヘンプ産業が発展していった先に見える「明るい未来」を提示していくことは、とても大事なことで必要な活動ですが、70年分の「マスの方々の恐怖」を溶かして、ポジティブにしていく産業を構築していくことは本当に難しいです。
もちろん、明るい未来にフォーカスして事業を進めていくことも大事ですが、一番、理解してもらいたいマス層は「恐怖」から始まる。ということを忘れてはいけません。
「恐怖」から始まるビジネスモデル、でも、その先には「明るい未来」がある。ここを天秤にかけた時に、想像以上に「恐怖」から始まるという「重さや進まなさ」を、事業者の皆さんは事業を進めてきて体感されてきたかと思います。
では、「恐怖」をマスの方々から取り除き、ヘンプに対して理解、納得、体験、そして、期待から確信を得られるには、一番大事なのは行政からのポジティブなプロパガンダの発信が必須なのは言うまでもなく、それと、同時に、啓蒙者や事業者さん達がヘンプの正しい情報を発信していく、体験の場を作っていくということです。
アメリカのCBD事業者の多くは、バブル崩壊直撃後の赤字経営の先にあらぬ方向にブレていき「合成嗜好用大麻製造事業者」となりました。そして、それらが大流行し、ファームビル2023のヘンプ部分の新法が策定できずに、いまだに、止まったままとなります。
これらの失敗例を1つの学びとして、皆さんと共に、ポジティブに前進していきたく思います。