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アメリカにだって見えて無かったヘンプ産業の多様性、 CBDに全振りした結果多くが破綻した業界の今後

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2023年の農業法案の改革における期待していたビジョンは大きく及ばず

ヘンプ産業が深い谷底にある中、現在議会に提出されている米国農業法案は、切実に必要な改革のチャンスとなり得ます。

しかし、最近発表された「各界リーダーが支持する」農業法案の素案が示した内容は、ヘンプ産業を谷から救い出してくれる存在にはなり得ないようです。

こちらが素案(ポジションペーパー)です:
Hemp-Industry-Leaders-Farm-Bill-Priorities.pdf

ほぼ1兆ドル(約140兆円)の予算で構成される農業法案、この法案は、作物補助金から栄養補助プログラムに至るまでの「農業」と「食糧政策」のあらゆる予算ぐみがされています。

昨今の政治的に分断されたアメリカの議会状況の中でも唯一、今年の農業法案は、確実に通過する数少ない措置の一つです。そして、それは「5年に一度のヘンプ産業の目標を推進・変革するチャンス」なのです。

補足:「農業法案」とは、アメリカで5年ごとに制定される大規模な法案で、農業や食品政策、環境保護、地方開発などを含む国内政策を定めます。この法案の決定により、アメリカの農業や食品業界の動向が大きく影響を受けます。

不確実な規則のまま拡大していったCBD産業

2018年には、その年の農業法案が産業用ヘンプに対する画期的な節目を設け、それを薬物リストから除外し、「ヘンプのあらゆる部分、つまり種やすべての派生物、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、塩の異性体を含むもので、乾燥重量基準でのデルタ-9テトラヒドロカンナビノール(THC)濃度が0.3パーセント以下」を合法化しました。

CBD」という産業の拡大、それは「難問性を抱えた茨の道」ともを言われていた2018年の法案。アメリカ食品医薬品局(FDA)は「ヘンプ製品、含めてCBD(カンナビノイド)製品を規制する権限を保持する」とされました。

しかし、その時以来「保持」することがFDAが行ったほぼ唯一の行動であり、それ以外にはマーケティングの主張についていくつかの事業者に警告を出したり、製品の品質や消費者の安全性についての警鐘を鳴らしてきました。

不確実性にもかかわらず、ヘンプ生産者たちはほぼ一斉にCBD生産に走りました。

つまり、業界協会の会員はCBD関連企業が圧倒的に多く、したがって「2023年の農業法案におけるヘンプ業界の優先事項」で、「ヘンプCBD」が主要な位置を占めることは驚きくことではありません。それほど、注目されているにも関わらず。。。

FDAが早期に規制を書き換えて、CBDバブルに対してブレーキをかけることができなかったため、CBD市場は急速に急上昇し、その後、あらゆる参入者やチャンスを窺う企業、投資家たちの強欲さと失策により、急激に、そして見事に、失速、崩壊しました。

彼らはCBDを「次の大きなもの(マクロ的にみて世界を大変革するものとして)」であるかのように売り出し、ヘンプが持つ豊かな可能性の範図をほぼ無視していました。

THC制限値も1.0%にしたいという願い

米国農務省(USDA)によると、CBD用に栽培された花穂からの収入は昨年、2021年と比較して70%以上急落したものの、このCBDセクターは他のすべてのヘンプセクターを圧倒し、ヘンプ全体のうち85%に当たる2500万ドル(約288億円)をの売上をもたらしたといいます。

参考過去記事:5/16 【法改正前に関係者は必見】ヘンプ産業のバブル→バブル崩壊→「ヘンプ戦争」とまで呼ばれるようになってしまったアメリカ大失態の軌跡から学ぶ

ヘンプ業界団体は、FDAによるCBDの規制は、今、必要な規則を追加し、法案を補強するためにどうしても必要だと、当然のように指摘しています

明確な規則は、安全性やその他の規則がない状態で市場に出回っている多くの潜在的に安全でないCBD製品から消費者を保護し、生産者と加工業者にとって明確な競争の場を確立する上で大きな役割を果たすでしょう。

また、この論文では、ヘンプに含まれるTHC濃度を0.3%から1.0%に引き上げることを求めており、農家が作物が「ホット」、つまり限界値を超えて使えなくなるという心配から解放される必要があるとしています。

参考過去記事:6/6 欧米CBD業界の悪況まとめ。これら負の遺産を日本で産まないよう学んでおく必要があります

それは明らかに正当な目的ですが、ここでの大きな目的は、CBDの生産にもあります。勧告では指摘されていませんが、ヘンプ植物に含まれるCBDのレベルはTHCの量に正比例します。レベルが高ければ高いほど、処理の効率はよくなります。

 

補足:「ホット」は、ヘンプのTHC濃度が法的に許容されるレベルを超えることを指す業界用語です。この状況は、そのヘンプの作物が非合法となり、経済的価値を失うことを意味します。

デルタ8が言及されていないまま法案は通ってしまうのか!?

その他の重要な優先事項として、各団体は、州のヘンププログラムに対するUSDAの資金提供の拡大、他の作物が享受する補助金のヘンプへの開放、逮捕歴者の産業活動禁止の廃止、研究の促進、動物飼料用ヘンプグレインの許可、一般的にお役所仕事の軽減などを求めています

これは全てプラスに働く事項なのですが、「2023年農業法案のためのヘンプ業界の優先事項」には、それ以上に注目しなければならい、デルタ8問題などが、書かれていないことです。

目立って欠けているのはデルタ-8 THCについての言及であり、これはマリファナの「ハイ」を模倣するCBDベースの合成製品です。

規制がなく、そのためしばしば安全でない製品は、CBD生産に必要な花穂の生産者が不況の中で必死にビジネスの命綱を探していく中で発見され、それらが、恐ろしいほどのスピードで繁栄しているのです。

勧告に署名した31団体の中で最も著名な業界団体であるヘンプ産業協会は、すでにデルタ8THCは連邦規制薬物法の規制対象物質ではなく、単に規制されるべきであるとする立場を堅持しています。

参考リンク(他サイトにリンクされてます):https://thehia.org/delta-8/

しかし、業界内には反対意見もあり、今回の素案でこのテーマが避けられたのはそのためと思われます。

いずれにせよ、この重要な問題に業界一丸となって取り組まないことは、無責任であり、公衆衛生に対する関心の欠如を示すものです。

CBD以外のメリット(産業多様性)を無視しすぎた結果の惨劇

さらに残念なのは、業界のリーダーたちが、ヘンプという作物の大局を見誤り、この素晴らしい作物が持つCBD以外の長期的な可能性を認識できていないことです。

それは、2023年の農業法案の議論でも注目されている、緊急の環境問題に対する一つの答えとして、ヘンプを使うことから始まります。 

米国農務省によると、農業は米国の温室効果ガス排出量の11%もの割合を占めています。

しかし、農業、特に産業用ヘンプの栽培は、食料と土地利用の分野で気候変動を逆転させる重要な役割を果たすこともでき、最も重要なのは炭素除去の取り組みです。

ヘンプは、地球を癒す作物として他の追随を許さない存在です。農業で達成される直接的な炭素の捕獲はもちろんのこと、建築材料などの製品は永久的な炭素の固定をもたらします。また、ヘンプの栽培は土壌にも良い影響を与えます。

補足;直接的な炭素の捕獲(カーボンキャプチャ)とは、二酸化炭素を大気中から取り込んで、地下などに保存する技術のことです。カーボンロックアップとは、大気中の二酸化炭素を長期間にわたって保管することです。

すでにいくつかの独立したコンソーシアムが、USDAの「気候スマートコモディティパートナーシップ」プログラムからヘンププロジェクトへの助成金を受け取っています。

このプログラムは、環境的な手法を採用する農家に様々なインセンティブを提供しています。

しかし、これらのイニシアチブによって代表されるわずか3,500万ドルは、USDAが全体のプログラムに充てることを決めている31億ドルの投資のわずか1%を超えるだけです。ヘンプはもっと評価されるべきです。

更に、「ヘンプ業界の優先事項」は、「気候変動」、「温室効果ガス」、「CO2」、「二酸化炭素」や、ヘンプが環境の文脈で一般的に関連付けられている類似の用語への言及が一切なく、ヘンプのカーボントレーディング市場での可能性を活用するような議論や提案も欠けています。

炭素取引は、栽培者にとって大きな恩恵になり得ます。

輸入に頼らず、ヘンプシードにも光を、国産のさらなる研究を

農業法案は、ヘンプシードの食品を栽培し、ほぼすべてが輸入品で供給されている国内市場を拡大するように農家を奨励するプロモーション活動にさらなる資金を振り向けることで、穀物生産者の運命を改善するのにも大きく役立つでしょう。

また、栄養の文脈で、種子ベースの製品群についての議論も必要です。栄養は、健康的な食品を推進するプログラムを資金提供している「農業法案の基本的な要素」です。

しかし、「ヘンプ食品群」の内容は、優先事項の中で一度しか言及されておらず、しかも、ダイエットサプリメントと飲料添加物の文脈のみで、それはCBDから作られたものについてだけです。

反対されることの法案なのだからもっと踏み込んで改革を

ヘンプの現在の問題は、過大評価することはできません。かつて儲かったCBD花穂の価格は以前の高値の数分の一になり、最終製品の安全性には疑問が残るため、「万能」を謳った広告や大げさな訴求への信頼は、地に落ちました。。

ヘンプ繊維と食品は2022年に大幅に減少し、背水の陣とも言えます(USDAの前年比によると、2022年にヘンプ繊維の収入は30%以上、穀物は40%減少しました)。

産業用ヘンプは、農場州代表の力により、米国議会では常に超党派の強い支持を得ています。

つまり、次期農業法案におけるヘンプの条項は、ほとんど反対されることはありません。したがって、この「奇跡の作物」が世界経済と環境に大きく貢献し、雇用を創出し、人々の健康と福祉を向上させる未来について、創造的で強固なビジョンを持って、産業用ヘンプを再スタートさせるための扉は開かれているのです。いるのですが、内容が、、、

もうこれ以上、CBDを過度に強調し、ヘンプの「他の可能性」を軽視してしまえば「2023年農業法案に向けたヘンプ産業の優先事項」はかえって過去に逆戻りしてしまいます。

今後のこの法案の追記、修正に業界団体の全ての力を駆使してでも変えていくべきかと考えます。

HTJ
集部あとがき。注目すべき点は、アメリカのヘンプ業界関係者の本気度がヒシヒシと伝わってくるという点です。この5年に1度のチャンスを逃したら、アメリカヘンプCBD産業は良い方向には向かわないことが予想されます。2018年の新農業法案以降、アメリカの農家がいかにCBD栽培に全振りしていったのか?それ故に起きていった「バブルとバブル崩壊」。彼らがみていた「新しい産業」は、ヘンプの可能性、多様性の大きな可能性を見ていたのではなく、農家のその多くは「CBDというマネーメイクが主となる産業」でした。その結果、THCホット問題、デルタ8問題が勃発し、農家、製造業者の多くが破綻です。5年の時を経ての農業法案の改革ですが、現在の状況ですと修正案次第ではありますが、5年ぶりのアメリカヘンプCBD産業の改革は、期待を超えることがなさそうです。つまり、CBDが食品としてのFDAの認可はされないまま、さらに2028年まで経過観察、持ち越しかもしれません。そんなアメリカ連邦法での姿を見越すと、日本がCBDを食品として先に認可するということは、なかなか考えにくいことかもしれません。EUの規則に習うという方向性であれば可能性はありますが、そこを厚生省がどう捉えていくのかという所が焦点です。FDAはいまだにCBDのデメリットを謳い規則制作には手を出しません。今回解決していきたい数々の課題、THC制限値、デルタ8、規則が無い状態から生まれる非安全な製品、金融機関緩和、助成金拡大、研究促進などインフラ問題の解決、大麻逮捕歴者の雇用の解決、動物飼料の活用、規則を設けることで役所の業務軽減、ヘンプのカーボントレーディング市場での可能性などなどです。これらのアメリカの前例は大変参考になるかと思います。 CBD産業に走りすぎて、ヘンプの多様性に含まれた多くの産業構築の可能性を無視した結果が、このような惨劇となって返ってきました。さて、日本の大麻産業ですが、国産のCBD産業を食品として厚生省が推奨するようには思えなくなってきました。経産省と環境省が掲げるGXやカーボンキャプチャなど国策と重ね、アメリカでいうサウスダコタ州のようなヘンプ産業(繊維中心)の切り口で進めていくようにも思えます。そうなると、自ずとCBDは医療」の方面で規則と安全性を担保させた市場に展開していく可能性が高いかもしれません。慎重であるが故に。どのような方向性で固まるのかまだ見えませんが、検査・研究機関の質が国産CBD産業を左右する肝になるかと思います。これからは、県市町村が独自の規則を設ける力がある地域、つまり、三重県が唯一、日本のヘンプ産業を国内外に突破口していく「(実績を含めた)ルール」になるという線が濃厚になってきてます。関係各省庁というよりは、まずは「県」がリードして枠組みを構築してくといったように、アメリカの州がリードしていくという形での方向がうっすらと見えてきました。このようにパイロット県市町村として、日本のあらゆる地域のトップが理解を示し、産業を興していくことが、日本のヘンプ産業拡大にとって一番の近道となることでしょう。とにかく「現場の熱」が大事かと思います

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AUTHORこの記事をかいた人

HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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