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たった1年で崩壊、カナダの制服用ヘンププロジェクトが頓挫した理由とは

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繊維加工計画が立ち消えに

2024年に大々的に発表されたカナダのヘンプ加工・繊維プロジェクトが、わずか1年で静かに姿を消しました。東アルバータ州での雇用創出や先住民主導の栽培といった約束も、いまや実現されぬままとなっています。

エルク・ポイントの工場建設、進展なし?

アルバータ州エルク・ポイントの町に建設予定だった繊維加工施設の計画は、カナダ最大の制服メーカー「ロジスティック・ユニコープ」との提携が実現しなかったことにより、宙に浮いている状態です。

2024年春に発足が発表された「Askiy Hemp LP」は、当初カナダ政府の地域経済開発機関「PrairiesCan」から500万カナダドル(約3.6百万米ドル)の融資支援を受ける予定でしたが、現在この融資は取り下げられています。政府のデータプラットフォームには「プロジェクトは中止。掲載は誤りだった」との説明があるのみです。

125,000エーカー規模の栽培構想も未確認

このプロジェクトのもとでは、先住民クリー族による「フロッグ・レイク・ファースト・ネーション(FLFN)」が最大125,000エーカーの土地でヘンプを栽培し、年間40,000トンのヘンプ茎を処理できる繊維工場で加工、その繊維をロジスティック社の制服製造に活用するという構想が描かれていました。

FLFNは約362平方キロメートルの2つの保留地を管理しており、エルク・ポイントの東約40キロに位置しています。プロジェクトは先住民経済の再生と地方の活性化の象徴として、農業・加工・製造を含む75人以上の雇用創出が期待されていました。

しかし現時点で、ヘンプの栽培や工場の開発が実際に始まったかどうかは不明です。FLFNは、HempTodayからの問い合わせにも応じていません。

また、アルバータ州がロジスティック社の参画を後押しするために発表した110万カナダドルの投資の行方も不透明です。同社はカナダ軍との37億カナダドル・20年契約を持ち、政府機関の32万人以上に制服を供給しています。

もう一つのプロジェクトは順調

FLFNは制服プロジェクトと並行して、2024年初頭に別の事業体「Askiy Asiniy LP Ltd.(後にAsinikahtamwak LP Ltd.に改称)」を立ち上げていました。このプロジェクトは、FLFN、エルク・ポイント町、そしてアルバータ州の企業「ナチュラル・ファイバー・テクノロジー(NFT)」の三者による共同出資で進められており、こちらは現在も順調に進行中とのことです。

NFTのジェシー・ハーン氏によると、同社が39%、FLFNが51%、エルク・ポイント町が10%の出資比率を持ち、ヘンプクリート(麻を使った建築素材)を用いたブロックやモジュール壁、外装材の製造を進めています。

またFLFNは「Nikawiy Askiy Micisowin」という別の事業体を通じ、穀物栽培やヘンプシード食品の加工を目的とした合弁事業も立ち上げているものの、こちらについては現時点で製品生産などの具体的な進捗は報告されていません。

アルバータ州は依然としてカナダ最大のヘンプ生産地

2024年も、アルバータ州はカナダ全体の約40%を占める国内最大のヘンプ栽培州であることに変わりはありません。

編集部あとがき

今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1. プロジェクトは「構想倒れ」に終わった
500万ドルの連邦融資を受けたはずの「Askiy Hemp LP」は、企業連携が成立せず、実質的に何も始まらないまま計画自体が消滅した。

2. ロジスティック社との協業不成立が致命打に
カナダ最大級の制服メーカーとの提携が実現せず、工場稼働のめどが立たなかったことが、プロジェクトの崩壊に直結した。

3. 一方、別の建材用ヘンプ事業は前進中
FLFNが主導するもう一つのヘンプ建材製造事業は順調に進行しており、地元での経済活動の一翼を担いつつある。

4. ヘンプ栽培の可能性はまだ消えていない
失敗した事例の陰でも、カナダのヘンプ産業は依然として拡大の余地を持ち、特にアルバータ州はその中心的役割を維持している。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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