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ヘンプが繊維業界の未来を変える、ブラジル発、サステナブル革命の最前線

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ヘンプを繊維業界の「革命」へ

ブラジルを拠点とする活動家グループが、繊維業界向けの持続可能な原料としてのヘンプを紹介する書籍を発表しました。

「ファッション・レボリューション・ブラジル(Fashion Revolution Brazil, FRB)」は、「Cânhamo é Revolução」(ヘンプは革命だ)というタイトルの書籍を、2025年の「フェブラテクスタイル(FebraTêxtil 2025)」で紹介されました。このイベントは、ファッションおよび繊維デザインの主要ブランドが集結する大規模な見本市であり、2月18日から20日までサンパウロで開催されたイベントです。

この新刊では、ヘンプの多用途性と環境に優しい特性を掘り下げ、繊維業界におけるエコフレンドリーな代替素材としての可能性が十分に活用されていない現状を指摘しています。

また、書籍の内容は、ブラジルの繊維業界で革新的な素材に対する関心が高まっていることを反映しており、ヘンプが耐久性に優れ、環境負荷が低いことから、実用的な選択肢として注目され始めていることを示しています。

コットン産業の課題

ブラジルの繊維業界は、全国に22,500の生産拠点を持ち、年間400億ドル(約6兆円)以上の収益を生み出す、同国の経済にとって重要な産業です。この業界では約130万人が正式な雇用を得ており、そのうち約75%が女性という特徴があります。

過去25年間で、ブラジルは世界でも最も急成長したコットン生産国の一つとなり、現在では原綿(未加工のコットン)の主要輸出国の一つに数えられています。しかし、コットン栽培は環境負荷の観点から多くの議論を呼んでいるのが現状です。特に問題視されているのは、ブラジル中央部に位置するセラード(Cerrado)地域における森林破壊の影響です。この地域はブラジルの生態系を維持する上で極めて重要なエリアとされており、コットン農地の拡大がその存続を脅かしていると指摘されています。

さらに調査によると、コットン生産が違法な土地収奪(ランドグラブ)と結びついていることが明らかになっており、H&MやZaraといった国際的なアパレルブランドが、森林破壊に関連する地域からコットンを調達していた事実も発覚しています。このように、コットン農地の拡大は環境悪化の主要な要因として問題視されているのです。

ヘンプへの転換点が来た

「私たちは今、持続可能性が選択肢ではなく必須の課題となる転換点に立っています。」と語るのは、素材、繊維、ファッションの持続可能性を専門とする研究者、エドゥアルダ・バスティアン氏です。「ヘンプは、責任あるイノベーションを実現するための素晴らしい可能性を秘めています。」

バスティアン氏と、ファッション・レボリューション・ブラジル(FRB)のエグゼクティブ・ディレクターであるフェルナンダ・シモン氏は、フェブラテクスタイル(FebraTêxtil)イベントのセッションに登壇し、「ヘンプによるイノベーション」と「持続可能な素材としての可能性」について議論する予定です。

世界的なムーブメント

「ファッション・レボリューション(Fashion Revolution)」は、2013年に発生したバングラデシュのラナ・プラザ崩落事故を契機に設立された国際的な運動です。この事故では、主要な衣料品工場が入っていた建物が倒壊し、1,100人以上が死亡しました。この組織は、ファッション業界の社会的・環境的な影響についての意識を高め、公正で持続可能な生産体制の推進を目指しています。

ブラジル支部は2014年から活動を開始し、活動家、学者、業界関係者を巻き込みながら、キャンペーンやイベント、プロジェクトを通じてファッション業界の変革を促進してきました。特に、透明性と説明責任を強調し、消費者とブランドの双方に対し、業界の影響を再考することを促しているのが特徴です。

この運動の中でヘンプに焦点を当てることは、繊維業界全体において「持続可能なイノベーション」を推進する広範な流れの一環といえます。

2025年のフェブラテクスタイル(FebraTêxtil)では、環境責任の重要性を反映したさまざまな取り組みが紹介される予定です。

フェブラテクスタイルを主催するフェブラテックス・グループ(Febratex Group)のヘルヴィオ・ポンペオ・ジュニア氏は、次のようにコメントしています。
「私たちは、市場の需要に応えながら環境を守ることを目指す、これらの革新的な取り組みを業界に伝えていくことに全力を尽くしています。」

編集部あとがき

 今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1.ヘンプは繊維業界の「革命」を起こす鍵となる
ブラジルの繊維業界は長年、コットンに依存してきましたが、環境負荷の高さや森林破壊の問題が深刻化しています。そんな中、ヘンプは「エコフレンドリーな繊維素材」としてのポテンシャルを持ち、持続可能な産業変革の中心になりうるとレポートは伝えています。ヘンプは耐久性が高く、成長が早く、農薬の使用量も少ないため、環境負荷を大幅に削減できる素材として期待されています。

2.ブラジルの繊維業界は持続可能性への転換点にある
レポートでは、「持続可能性が選択肢ではなく必須となる時代が来た」というメッセージが強調されています。ファッション・レボリューション・ブラジル(FRB)や研究者たちは、業界全体がエコフレンドリーな素材への転換を求められていると指摘しています。この変革が進めば、ブラジルだけでなく世界の繊維産業全体に影響を及ぼす可能性があり、持続可能なファッションへの大きな一歩となるでしょう。

3.コットン産業の環境問題と倫理的課題が表面化
ブラジルは世界有数のコットン生産国ですが、その拡大の裏には森林破壊、違法な土地収奪、劣悪な労働環境などの問題が潜んでいます。特に、H&MやZaraといった大手アパレルブランドが森林破壊に関与する地域からコットンを調達していたことが報じられたことは、業界全体の透明性と倫理性を見直す必要性を示しています。ヘンプを代替素材として導入することで、よりクリーンで持続可能なファッション産業の実現が可能になるのです。

4.持続可能なファッションは、もはや一部のムーブメントではなく「世界的な変革」へ
「ファッション・レボリューション」は、ラナ・プラザの悲劇をきっかけに設立されましたが、今や環境と倫理に配慮したファッション業界を実現するための世界的なムーブメントへと成長しました。ブラジルの繊維業界も、この流れの中で変革を迫られています。2025年のフェブラテクスタイルでは、ヘンプをはじめとする持続可能な素材の革新が紹介される予定であり、この流れは今後、ますます加速する可能性が高いでしょう。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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