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ブラジル、ヘンプ産業の未来を切り開く、規制の明確化がもたらす新たな市場機会

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政府の規制策定期間延長要求は却下

ブラジルの最高裁判所(STJ)は、同国の食品・医薬品規制当局に対し、医療、製薬、産業用途向けのヘンプの輸入・栽培・販売を規制するための期限を6カ月とする判断を支持しました。この期限は2024年11月19日に開始され、2025年5月19日に終了します。

この判決は、ヘンプの法的地位を明確にし、ブラジルにおける低THC大麻の取り扱いを抜本的に見直す可能性がある 先行判決を強化するものです。

水曜日の審議で、STJは全会一致で、ANVISA(ブラジル国家衛生監督庁)および検察庁が求めていた規制策定期間の12カ月への延長要求を却下しました。両機関は、「規制要件を満たすために追加の時間が必要」と主張していましたが、裁判所はこれを認めませんでした。

STJのレジーナ・ヘレナ・コスタ判事は、「裁判所の以前の判決は明確であり、十分な議論を経て決定されたものである」と強調しました。この裁判は、慎重な規制とヘンプの経済的可能性をめぐるブラジル政府の葛藤を反映しているとも言えます。

規制の長い道のり

この裁判の発端は、医療および産業用途向けに産業用ヘンプの輸入と栽培を求めるバイオテクノロジー企業の法的訴えでした。

当初、ブラジル第4地域連邦裁判所は、この要求を却下しました。その理由として、「ヘンプの輸入許可は司法の管轄を超えた公共政策の問題である」と判断されたためです。しかし、最高裁判所(STJ)はこれを覆し、ANVISA(ブラジル国家衛生監督庁)に対し、5月の期限までに規制の枠組みを確立するよう命じました。

この期限を守れなかった場合、新たな法的異議申し立てや期限延長の要請が発生する可能性があります。しかし、コスタ判事は「今後の期限延長には、ANVISAが裁判所の決定に従おうとする具体的な取り組みを示す証拠が必要」と述べています。

STJの判決で強調されたのは、THC濃度0.3%未満の産業用ヘンプは、ブラジルの麻薬法の規制対象にはならないという点です。これは、精神作用を引き起こさず、依存性を生じさせることもないためです。ただし、ブラジル政府は、国内および国際的な麻薬関連法のもとで、すべてのカンナビス品種を規制する権限を依然として保持しています。

今回のSTJの判決は、医療および製薬用途のヘンプに限定されており、法的根拠として「健康への権利」が強調されています。コスタ判事は、この決定はあくまで医療目的に限られ、産業用ヘンプの農業用途には言及していないと明言しました。

この限定的な解釈は、産業用途まで含めた包括的な判決を期待していた関係者にとっては失望を招く結果となりました。特に、ヘンプを繊維、建築資材、バイオプラスチックといった分野で活用しようとする動きが高まっている中、これらの用途が明確に扱われなかったことは、大きな課題として残っています。

市場の可能性

ブラジルの今回の決定は、国際的な大麻企業から注目を集めており、同国が世界の医療用CBD市場における主要プレイヤーとなる可能性があると見られています。ブラジルは2億人を超える人口を抱え、大麻由来の治療法への受容が高まっているため、CBDメーカーにとって極めて有望な市場となり得ます。

市場調査会社Statistaによると、ブラジルにおける医療用CBDおよび医療用大麻の市場規模は、2024年に1億8500万ドル(約280億円)に達すると予測されています。そのうちCBDが最大80%を占める見込みであり、これはTHC製品と比較して用途の幅が広く、規制上の障壁が少ないことが要因とされています。

2024年11月に下されたSTJ(最高裁判所)の判決は、今後、国際企業間の競争をさらに激化させる可能性があります。特に、アイルランドを拠点とするJazz Pharmaceuticals(ジャズ・ファーマシューティカルズ)は、米国FDAが承認したてんかん治療薬「Epidiolex(エピディオレックス)」を販売しており、ブラジル市場にも参入済みです。同社は2019年に厳格な規制のもとでブラジル市場に進出しましたが、今回の規制の変化が競争環境をさらに変える可能性があります。

ブラジルの規制枠組みが進化するにつれ、国内生産者と多国籍企業が市場シェアをめぐって競争を繰り広げることになり、それに伴いヘンプの栽培、抽出、加工産業の成長が促進されると予測されています。

編集部あとがき

 今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1.ブラジルのヘンプ規制が加速し、業界の転換点を迎えている
ブラジル最高裁判所(STJ)は、政府に対しヘンプの規制策定を早急に進めるよう命じました。これにより、医療、製薬、産業用途におけるヘンプの輸入・栽培・販売が法的に明確化される可能性が高まっています。ブラジル政府は慎重な姿勢を示していましたが、今回の裁判所の決定により、遅延はもはや許されず、規制整備が不可避となったと言えます。この動きは、ブラジル国内のヘンプ産業の基盤を整える大きな転機となるでしょう。

2.国際市場が注目するブラジルの医療用CBD市場
ブラジルは人口2億人を超える巨大市場であり、大麻由来医薬品への関心が急速に高まっています。2024年には医療用CBD・大麻市場が1億8500万ドルに達すると予測されており、CBDがその80%を占める見込みです。特に、アイルランドのJazz Pharmaceuticalsのような国際的な製薬企業がすでに参入しており、規制の整備が進むことで競争が一層激化することが予想されます。

3.産業用ヘンプの完全合法化にはまだ課題が残る
STJの判決は、医療・製薬用途のヘンプに限定されており、農業や産業用途に関する明確な指針は示されませんでした。このため、繊維、建築資材、バイオプラスチックといった分野でのヘンプ利用の法的地位は未だ不明瞭です。ヘンプの環境負荷の低さや経済的メリットを考えると、産業用途の合法化も視野に入れるべきですが、今後の法整備の進展が鍵となります。

4.国内生産者と多国籍企業が競争し、新たな産業の発展へ
ブラジルの規制が進むことで、国内のヘンプ生産者と多国籍企業の競争が活発化するでしょう。市場参入のハードルが下がれば、ブラジル国内でのヘンプ栽培、抽出、加工の産業が発展し、新たな雇用や経済成長の機会を生み出す可能性があります。また、規制の方向性次第では、ブラジルがラテンアメリカにおけるヘンプ産業のハブとなる未来もあり得るでしょう。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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