ハイブリッド種子の認証に向けて、大規模な制度改正が始動
カナダ種子生産者協会(CSGA)は、産業用ヘンプの種子認証基準を抜本的に見直す大規模な取り組みを開始しました。これにより、ハイブリッドヘンプ種子の公式な認証制度の構築や、従来型品種における隔離距離の見直しが進められる見通しです。
今回の改正は、ここ数十年で最も重要なCSGAの制度改革の一つとされており、停滞するカナダのヘンプ栽培に新たなブリーディング(品種開発)戦略と精度の高い作物生産の可能性をもたらすと期待されています。
ハイブリッドヘンプ導入への転換点
ハイブリッドヘンプは、異なる親品種を交配させて作ることで、均一な生育、収量の向上、特定のカンナビノイド成分の強化など、多くの利点があります。しかし、その種子生産には厳格な管理が求められるため、従来のカナダの認証制度では対応しきれていませんでした。
現在、カナダでは20年以上にわたり、オープンポリネーション(開放受粉)の品種のみが認証対象とされてきましたが、ハイブリッド品種に関する正式な認証制度が構築されれば、大きな転換点となります。アメリカなどではすでに商業的に導入が進んでおり、カナダもようやく追随する形になります。
隔離距離の見直しも検討へ
CSGAは、ヘンプ圃場間の最小隔離距離の再検討も進めています。これは、異なるタイプのヘンプ(繊維用・穀物用・カンナビノイド用)の間で望ましくない交雑を防ぐために不可欠な措置です。
隔離距離のわずかな変更であっても、土地利用や高純度なCBD・CBG品種の育種に大きな影響を与える可能性があります。CSGA政策・基準担当マネージャーのマイク・シェッフェル氏は「現場の実情を反映するために、ヘンプ作業部会と連携しながら改正を進めている」と語っています。
関係者の意見を広く募集
CSGAでは、穀物や豆類、大豆など8つの作物別ワーキンググループの一環として、ヘンプに特化した作業部会を設置し、制度改正を進めています。また、専用の意見募集ページを開設し、栽培者、育種家、種子会社からのフィードバックを受け付けています。
シェッフェル氏は、「ハイブリッド化は他作物でも成果を挙げており、ヘンプもついに主流へと踏み出す可能性がある」とコメントしています。
種子認証制度全体の近代化へ
このヘンプに関する改正は、CSGAの主要基準マニュアル「サーキュラー6」の全面的な近代化の一部でもあります。今回の改革では、規制の柔軟性を高め、遵守の簡略化、そして新たな生産方式への対応が進められています。
すでに、牧草・芝草では目視検査の緩和、土地利用履歴の要件緩和、穀物類の純度基準見直しなどが実施されており、デジタル認証制度の試験導入も進んでいます。シェッフェル氏は「品質と進歩の両立こそが我々の使命」と締めくくっています。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. ハイブリッド種子解禁の布石
カナダでもようやくハイブリッドヘンプの認証制度が検討され始め、新たな品種開発の可能性が開かれようとしています。これは、長年オープンポリネーションのみが許可されていた現状を大きく変える一歩です。
2. 交雑リスクへの制度的対応
栽培エリアの複雑化を受け、隔離距離の再定義が求められています。高品質なCBD系統の維持には、わずかな交雑も致命的となるため、土地の使い方そのものに影響する改革です。
3. 声を届けるチャンスが到来
CSGAは広く現場の声を募っており、ヘンプに関わる農家やブリーダーにとっては、自らの意見を制度に反映させるまたとないチャンスです。
4. カナダの種子認証は“デジタル時代”へ
ヘンプ改革は、CSGAが進める全作物対象の「認証の近代化」プロジェクトの一環であり、紙文化からデジタル認証への移行も含めて、未来志向の取り組みが進行中です。