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米国ヘンプ繊維産業の岐路、過剰生産から高品質市場への転換を迫られる理由

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消費者ニーズに合わず失敗の数々

現在のアメリカのヘンプ繊維産業は、生産に重きを置いたモデルから脱却し、高品質な製品への消費者需要を創出する方向に転換する必要があると、コンサルタント会社Canna Markets Group(CMG)の新しいレポートが指摘しています。

しかし、現在アメリカの多くの加工業者が注力している「コットン化ヘンプ」からそのような製品は生まれない、と同レポートは示唆しています。

2018年の農業法(Farm Bill)の成立以降に発展した、CMGが「ヘンプ産業2.0」と称する新しい時代において、同産業は農業と生産に過度に集中し、製品開発とマーケティングがほとんど考慮されていないと報告書は指摘しています。この報告書は、ヘンプやその他の繊維、ファッション分野で25年以上の経験を持つCMGのリードストラテジスト兼プロジェクトマネージャーであるジョセフ・キャリンジャー氏が執筆しました。

「現在のモデルでは、まずヘンプが栽培・加工され、その後にその用途を探そうとする状況が見受けられます。消費者需要を喚起する製品ラインの開発が、規模の経済を達成するために必要です」とキャリンジャー氏は序文で述べています。「残念ながら、ヘンプ産業2.0は、こうした消費者向けの製品ラインをほとんど作り出せていません」。

早すぎる規模拡大の弊害

アメリカのヘンプ繊維加工業者は、生産能力を過剰に拡大した結果、現在その運営を安定させるために、繊維を中国やインドの国際的な衣料製造供給チェーンに輸出することで対応しています。しかし、これによりこれらの国々の経済が強化される一方で、アメリカ国内の供給チェーンの欠如という課題には対処されていないと、キャリンジャー氏は指摘しています。

さらに、この状況は、中国のグローバル市場での競争戦略に直接的に貢献しており、国家安全保障の脅威にもなり得ると報告書は警告しています。

「ヘンプ産業2.0が繊維の販売において輸出モデルを追求し続け、国内での製造供給チェーンの支援と発展を怠るならば、中国の西側諸国への経済的優位性確立という長期的な計画を助長する結果となるでしょう」と、同報告書『着用可能なソリューション:産業用ヘンプ繊維の製品開発』には記されています。

コットンヘンプの失敗

初期の加工業者たちが「コットン化されたヘンプ」に魅了されたことは間違いであると、キャリンジャー氏は指摘しています。特に経済的な理由から、ヘンプを既存のコットン供給チェーンに押し込むことは非現実的だと述べています。

多くの繊維加工業者が「万能の解決策」として見ているコットン化されたヘンプ由来の製品は、最終的には長繊維や湿式・半湿式紡績から生まれる耐久性が高く、高品質なヘンプ糸や布地と競争することができません。

長繊維や高級ヘンプ布地の生産を避けることで、アメリカのヘンプ繊維産業は重要な市場を他国に譲り渡す結果になると、キャリンジャー氏は警告しています。

「産業用ヘンプがアメリカでコモディティ(商品)として発展を続けるためには、農学、加工、建材や食品といった理論的な開発市場と同様に、歴史的に安定している製品ライン供給チェーンへの投資も等しく行われる必要があります」と報告書は結論付けています。

編集部あとがき 

今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1. 産業の方向性の誤りと国内供給チェーンの欠如
アメリカのヘンプ繊維産業は、生産を過剰に拡大した結果、国内供給チェーンの欠如を補うために海外市場への依存を余儀なくされています。このアプローチは、経済的および国家的な競争力を弱める要因となり、中国のような国々の優位性を高めるリスクを伴います。

2. コットン化ヘンプの限界
コットン化されたヘンプを利用した製品は、品質や耐久性の面で長繊維を使用した製品に劣ります。この選択により、アメリカは長期的に市場シェアを失う可能性があります。特に、湿式や半湿式紡績を採用した高品質製品を他国に譲る形になることが懸念されています。

3. 持続可能な製品ラインの必要性
アメリカのヘンプ産業が持続的に成長するためには、農学や理論的市場の開発に加えて、歴史的に安定している製品ライン、特に繊維や布地に焦点を当てた投資が必要であるとされています。

4. 国際競争力強化への提言
アメリカのヘンプ産業が競争力を高めるためには、国内供給チェーンの強化と消費者需要に基づいた高品質な製品開発への投資が急務であることが明確に示されています。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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