アフリカ東部の中心で始まった革新的な試み
ウガンダにおいて、産業用ヘンプ産業の構築を目指す革新的なプロジェクトが進行しています。主導するのは、マイケル・ムワンダ氏が代表を務めるMwamic General Enterprises SMS Ltd。同社は「ウガンダ・サティバ・プロジェクト」として、複雑な規制環境の中でヘンプ栽培の可能性を探っています。
東部地域ブウィグラで行われた最初の試験栽培では、192粒の種から2,300粒の収穫に成功し、ウガンダの気候への高い適応性が確認されました。この成果により、土壌の肥沃度、害虫管理、そして有機農薬開発に関する重要な知見が得られ、今後の大規模栽培に向けた基盤が整えられました。
農業経済を根本から強化するビジョン
「我々の試験農場の成功は、産業用ヘンプがウガンダでも十分に成長できることを証明しました。単なる栽培ではなく、農家を支え、農業経済を強化するサプライチェーンの構築こそが目的です」とムワンダ氏は語ります。
同プロジェクトでは、三つの主要農業グループを代表する委員会が設置されており、試験農家は種の研究を、モデル農家は技術指導を、アウトグロワーズ委員会は農家の拡大を担当します。すでに東部ウガンダからは約4万5千人の退役軍人が栽培に意欲を示しているといいます。
最終的な目標は、繊維加工・芯材(ハード)処理・種子油抽出を担う国内初のヘンプ加工施設の設立であり、自立したサプライチェーンの確立を目指します。
最大の壁は法規制と無知
このプロジェクトに立ちはだかる最大の障害は、ウガンダ国内の麻薬関連法です。現行の法律では、産業用ヘンプと嗜好用大麻が区別されておらず、その曖昧さが栽培の拡大と投資の障壁となっています。ムワンダ氏は、規制改革に向けて政策立案者と積極的に対話を進めており、同時に国民への教育活動の必要性も強調しています。
政府と国際支援の後ろ盾
「私たちが直面しているのは、まさに法制度の不明確さです。明確な規制を整備すれば、投資の道も開かれ、ウガンダがアフリカの産業用ヘンプの中心地になれる可能性があります」と語るのは、戦略アドバイザーであるCMGのジョセフ・キャリンジャー氏。
現在、このプロジェクトは地域協力・保健・農業・内務・富創出・国防など複数の政府省庁の支援を受けて進行中です。さらに、米国の非営利団体GreenWave Enterprisesが資金調達を、Canna Markets Groupがプロジェクト全体の戦略設計と管理を担っています。
カーボン戦略と持続可能な未来へ
ドイツのコンサルタント企業CarbonConnectも本プロジェクトの支援に名を連ねており、小規模農家団体向けのカーボンクレジット戦略を提供しています。これにより、農家は新たな収益源を得ることができます。
なお、ムワンダ氏が率いるMwamic General Enterprisesは農業コンサルティングとトレーディングを専門とする企業で、農家の育成や地域産品の国際市場への展開支援を行っています。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1.試験栽培の成功によるポテンシャルの証明
ヘンプはウガンダの気候・土壌にも適応でき、大規模栽培への移行が現実的であることが証明されました。
2.サプライチェーン構築による農業経済の強化
単なる作物栽培にとどまらず、加工・輸出を視野に入れた持続可能な事業体制の整備が進んでいます。
3. 法整備と社会的理解がカギ
ウガンダでは産業用ヘンプと嗜好用大麻の区別がついていない現状がボトルネック。規制改革と教育が急務です。
4. 政府・国際支援による体制整備と信頼性の担保
国内外の団体との連携が進む中で、ウガンダの農業産業としてのヘンプの信頼性が高まっています。