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75年振りの大改革!大麻取締法はどのように改正されたのか?(後編)

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最近のアップデート情報です

本記事内容に入る前に、最近の状況を以下に記載しておりますので、ご参考ください。

2024年5月14日の記事:5月20日、来年度の第一種大麻栽培者・第二種大麻栽培者の希望者の集い

最も大きな改正点

前編はこちら:2023年12月28日 75年振りの大改革!大麻取締法はどのように改正されたのか?(前編:医療・嗜好領域)

大麻取締法(1948年制定)は、花穂、葉、未熟な茎、根を違法とし、成熟した茎、種子を合法とする植物部位による規制でした。

法改正では、大麻、Δ9-THCΔ8-THC、化学的変化により容易に麻薬に生成するもの(例:THCA)を「麻薬及び向精神薬取締法(以下、麻向法)」の「麻薬」に位置づけました。

そして、大麻取締法を「大麻草の栽培の規制に関する法律(以下、栽培法)」と名称を変更し、大麻草の栽培に特化した法律へと衣替えをしました。

大麻取締法にはなかった目的規定が、「栽培法」には「第一条:この法律は、大麻草の栽培の適正を図るために必要な規制を行うことにより、麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)と相まつて、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする。」と明記されました。

法改正を理解するには、「麻向法」と「栽培法」のセットで捉える必要があります。読者にわかりやすいように、大麻草の医療、嗜好、産業、伝統の4つの事業領域との関係を見ていきます。

後編の産業と伝統分野

 各領域の改正点

産業

大麻草の栽培は都道府県知事が許可権限を有していますが、新規の栽培者免許の交付がほとんどない状態が続いてきました。

一方、様々な健康効果が期待されているCBD製品は、2013年から輸入が始まり、2020年から厚労省関東厚生局麻薬取締部のホームぺージにて、CBD製品の輸入手続きが明文化され、オイル、ベイプ、グミ、カプセル、ドリンク等の様々な製品が輸入されています。

法改正では、産業のために使われる原料生産には、都道府県知事の「第一種大麻草採取栽培者」の免許、医薬品の原料生産には厚生労働大臣の「第二種大麻草採取栽培者」、大麻草の栽培研究には厚生労働大臣の「大麻草研究栽培者」の免許が創設されました。

第一種では、政令で定めるTHC基準値を超えない大麻草の品種に限定しており、いわゆる「ヘンプ」の栽培が認められました

栽培するための種子は、第一種の免許があれば、海外品種の輸入が可能となり、第一種の免許者同士の種子譲渡も可能となりました。但し、食用や飼料用の種子は今まで通り、発芽しないよう熱処理をしなければ流通できません。

花葉の加工は、第一種の免許があれば、厚労大臣の許可を得て自社加工又は委託加工ができ、国産CBD製品の製造販売に道が開かれました

国産品・輸入品に関係なく、すべてのCBD製品は、今回の改正法が成立したあとに定められる政令でTHC残留限度値を設定することになっています。法改正後に登録検査機関を設定して、THC検査体制の整備をしていくものと思われます。

国内で流通している大麻草の多幸感に似せた半合成や合成カンナビノイド類(THCPO,HHCH等)は、本改正法の範囲ではなく、薬機法の指定薬物(いわゆる危険ドラッグ)に随時追加していく方針となっています。

第二種では、CBD医薬品のGW製薬(現ジャズファーマ社)の製造元である英国の制度を参考にしており、医薬品製造に必要なGACP(薬用植物栽培の生産管理基準)やGMP(医薬品製造と品質管理の基準)に基づいた屋内栽培や植物工場のような厳格な管理を想定しています。

海外のような自己治療目的の個人栽培については、今まで通り違法となります。

伝統

日本には、大麻草から繊維を取り、縄や紐、衣服、漁網等の生活用品に利用してきた長い歴史がありました。

大麻取締法の制定直後の1950年に約5,000haの栽培地に37,000名いた栽培者は、化学繊維の普及による需要減と厳しい免許制により、現在では10県で27名まで激減し、神事用や伝統工芸のために7haしか栽培されていません。

これまでの大麻取締法の運用では、THCの濃度に関係なく、過剰な規制を求めており、2mを超える柵、監視カメラ、道路から見えない場所での栽培、外部者の見学禁止、写真撮影NG、農業研修生の受け入れNGなど、極めて不条理なものでした。

改正法後は、THC濃度が低い品種は「麻薬」ではないため過剰な規制を強いる対象となりません

新たな「第一種大麻草採取栽培者」の下で、日本の伝統を守るために若い農業研修生の育成などの喫緊の課題に取り組めます。

今後の課題

「麻向法」と「栽培法」の制定後は、THC基準値等を政令・省令・通知などで細則が決定され、24年度及び25年度から改正法の下での運用が始まります。

今回の法改正には、海外の先進的な法制度を見ると各領域に課題が残ります。法律の付帯事項として、「施行後5年を目途に、施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、必要な措置を講ずるものとする」と明記してあります。

今後も大麻草を巡る世界情勢の変化を現場の声として政治的に伝えていく努力を継続していく必要があります。

秋の臨時国会で法案が内閣へ提出され、衆議院、参議院の両厚生労働委員会の審議を経て、両院で可決されて法律として公布されました。

医療と施用罪が24年度、栽培免許関係が25年度から施行されます。

前編もチェック2023年12月28日 75年振りの大改革!大麻取締法はどのように改正されたのか?(前編:医療・嗜好領域)

(参考)75年振りの法改正までの国会審議の流れ

大麻草の栽培の規制に関する法律案、麻薬及び向精神薬取締法を一部改正する法律案

令和51024日閣議決定

https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/212.html 

大麻取締法75年ぶり改正へ 参考人質疑【#国会中継】衆議院 厚生労働委員会 ~令和51110日~

https://www.youtube.com/watch?v=iKhXVkxJmTo 

#国会中継】参議院 厚生労働委員会 大麻取締法などの改正案で参考人質疑 ~令和51130日~

https://www.youtube.com/watch?v=X1JzUNZ-8PM 

#国会中継】参議院 厚生労働委員会 大麻取締法ほか改正案 ~令和5125日~

https://www.youtube.com/watch?v=fUzUHniGYNo 

#国会中継】参議院 本会議 ~令和5126日~

https://www.youtube.com/watch?v=rJOWU90m6Ew 

議案審議経過情報

https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DDA7E6.htm 

令和51213日官報号外第260

法律第八十四号 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律 公布

https://kanpou.npb.go.jp/ 

令和5年12月15日掲載

「大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律」の公布について

(令和51213日医薬発1213第1号)(PDF,3309KB)

【医薬局監視指導・麻薬対策課 大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法関係】

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T231215I0010.pdf 

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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