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「農家が大麻草を栽培するのは危険だ」という米国政府の主張は、 初めからナンセンスだった(後編)

「大麻草を農業者が栽培するには危険だ」という米国政府の発言は、 初めからナンセンスだった(後編)

文:パトリック・コリンズ博士(麻布大学名誉教授)

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産業用ヘンプは、マリファナと異なるという国際安全基準で栽培復活へ

いくつかの大麻品種の系統が陶酔作用を有する理由について、戦後の研究は、植物中で生産される単一分子THCであることを明らかにしました。これに基づいて、1996年にドイツの科学者は陶酔作用に必要なTHCの正確な濃度を調べました。この研究に基づいて、”Industrial Hemp(産業用ヘンプ)”の安全基準が乾燥重量で0.3%未満のTHCを含有すると定義されました。つまりこの産業用ヘンプの安全基準には2つの要素があります。

(1)人が摂取しても陶酔してしまうことはない。

(2)低濃度原材料からTHCを抽出しようとするのは現実的ではない。大量の原料が必要であり、THCの効力と反対の効果を持つCBDが多く、マリファナを闇市場から買う方がはるかに安く安全である。

さらに、今日の新しい技術は、警察などが、大麻のサンプル中のTHC濃度の確認を容易にしています。これに加えて、標準化された現代の化学的・統計的手法によって、農場の大麻畑に高THC株が含まれていないことを確認できます。

その結果、すべてのヨーロッパ諸国の政府、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドがドイツの安全基準を採用し、産業用ヘンプの品種で5万ヘクタール以上を何ら問題なく栽培しています。最近、約80年間の大麻禁止期間が終わりました。2013年8月29日、米国政府も産業用ヘンプは安全な作物であると正式に認めました。大麻の栽培に関して、産業用ヘンプを「マリファナ」の定義から取り除き、それを麻薬取締局(DEA)から農務省が管理することで復活させたのです。それ以来、米国のヘンプの栽培面積は、わずか5年間で0ヘクタールからほぼ10,000ヘクタールにまで拡大しました。大麻栽培は、化学的にも遺伝的にも異なる植物であるマリファナの生産とは関係がありません。だから政府の麻薬取締局が関与する必要はないのです。

日本の農家が、欧米の農家と歩調を合わせていれば、すでに10,000ヘクタールを栽培していたと思います。これは、耕作放棄された農地を活用していくことができます。しかし、まだ知られていない理由で、日本政府は、産業用ヘンプの栽培が「危険」であり、それを防止することが「危害」を防止するという理由から、日本の農家は未だ7ヘクタールしか栽培していません。厚労省の誤った主張による結果です!つまり、厚労省は、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリア、その他の国の農家は現在、約10万ヘクタールの産業用ヘンプを安全に栽培していますが(中国の農家もそうです)、日本の農家は同じことをすることができないと主張しています。これは明らかに全くナンセンスです。厚労省のこの主張は、科学的な証拠に全く基づいておらず、現在の「ヘンプ・ブーム」が巨額の富を生み出している他のすべての国々の経験と矛盾しています。同様に、日本において大麻草を10,000年もの間、栽培し、活用してきた歴史とも矛盾しています。実際、国際的な安全基準に基づいて産業用ヘンプを栽培することは、何千年もの間、日本で規制がなかった時代に栽培していた在来種の麻よりも安全なのです!

2018年までに、この誤った厚生労働省の方針は、ドイツで国際安全基準が制定されてからの22年間を無駄にしてきました。このことは、米国の産業用ヘンプ農業法制定から数えても5年間の無駄です。産業用ヘンプは、陶酔作用を有するマリファナとして使用することはできません。

産業用ヘンプは、特に数十年に亘って衰退した日本の田舎に、次の分野で大きな恩恵をもたらします。

1農業分野:何十年にもわたって貧しくなってきた日本の農家にとって、新しい作物は非常に有益であろう。

2経済分野:大都市への人口集中は、不均衡をもたらし、農村経済の悪化の悪循環の一部です。何千ヘクタールという農地を復活させ、多くの関連事業を創出することは地方創生に大きく貢献するでしょう。

3健康分野:ヘンプの種子は、麻の実として何世紀にもわたって食べられており、日本の主食の「8つの穀物=八穀」の一つとして知られていました。第二次世界大戦後、日本の人々が伝統的で健康的な食生活の重要な穀物を食べることを妨げています。それは本来国民の健康を保証するべき日本政府自身です!

4環境分野:ヘンプは、多くの環境面でのメリットをもたらします。生育が早いバイオマスであり、「バイオ燃料」、「ヘンプクリート」のような省エネ建材の供給、および土壌浄化に寄与することができます。

5文化分野:ヘンプは、日本固有の宗教である神道において、伝統的な役割を果たしています。繊維は「幣(ヌサ)」や「御幣(ゴヘイ)」などに使われています。なかでも、日本全国の観光地で、何千年も前から「神楽」の儀式が行われ、その衣装にも使われてきました。しかし、今日では、それらの神事に必要なものは、主に中国からの輸入品から作られています。

農林水産省、経済産業省、文部科学省、環境省、内閣府が、厚生労働省当局の全く科学的でない主張による支配を、なぜ許しているのかが謎です。これらの省庁はすべて、厚生労働省当局に立ち向かい、科学的根拠のない政策を止めることを、求めなければなりません。大麻取締法ができる前、全国の農家は、農水省の唯一の管理下で大麻を栽培していました。よって、産業用ヘンプは、農林水産省の管轄とし、厚生労働省の管轄は、大麻の高THC系統に限定すべきなのです。このことが、日本人の健康、農村経済、地方創生に無数の利益をもたらすと言えるでしょう。

(HEMP TODAY JAPAN 2018年10月25日)

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  1. 「大麻草を農業者が栽培するには危険だ」という米国政府の発言は、 初めからナンセンスだった (前編)

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パトリック コリンズのアバター パトリック コリンズ 麻布大学 名誉教授

麻布大学・名誉教授。

1952年イギリス生まれ。ケンブリッジ大学で理学と経済学を学んだ後、インペリアル・カレッジの経営学部にて修士号、博士号を取得。日本の麻に興味を持ち、麻が地方を創生し、しかも地球環境にとっても優れたビジネスであるという立場で研究を続けている。

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