MENU
カテゴリー

インド、待望の産業用ヘンプ栽培を本格解禁へ、加工業者の参入条件も大幅緩和

目次

ヒマーチャル州、商業栽培へ

インド北部のヒマーチャル・プラデーシュ州で、産業用ヘンプの商業栽培が本格的に動き始めます。

州政府は、産業用ヘンプの栽培、加工、製造などに必要となる詳細なライセンス制度を整備しました。

長年待たれていた制度がようやく形になったことで、農家が合法的にヘンプ栽培へ参入できる道が開かれます。

ただし、制度ができたからといって、すぐに産業が成立するわけではありません。

今後の大きな課題となるのが、収穫したヘンプを加工する施設と、それを継続して購入する市場をどこまで育てられるかです。

今回の制度は、州の物品税・州税局が7月に発表し、その後さらに内容が修正されました。

対象となるのは、種子の調達から栽培、収穫、保管、輸送、加工、製造、研究、検査まで、ヘンプ産業のほぼすべての工程です。

産業用ヘンプとして栽培できるのは、THC濃度0.3%以下の品種に限定されます。

農家の参入条件を緩和

栽培ライセンスを取得できるのは、個人農家だけではありません。

農家グループ、協同組合、各種団体、一定の条件を満たした自助グループなども申請できます。

年間の栽培ライセンス料は、1ビガーあたり2,000ルピー(約23ドル)です。

ビガーとはインドで使われている伝統的な土地面積の単位で、その広さは地域によって異なります。

当初の制度では、個人または共同で最低3エーカーの連続した農地を確保する必要がありました。

しかし今回の修正によって、最低面積は5ビガーまで引き下げられました。

ヒマーチャル・プラデーシュ州では約1エーカーに相当します。

これにより、農家はライセンス費用だけで見れば、およそ215ドル程度からヘンプ栽培へ参入できることになります。

さらに、必要なライセンスや管理体制を整えれば、州全域で産業用ヘンプの栽培が可能になります。

先に「買い手」が必要

一方で、今回の制度には重要な条件があります。

農家が栽培ライセンスを申請する際には、認可された製造業者との購入契約をあらかじめ結んでおかなければなりません。

つまり、

「とりあえずヘンプを作って、収穫してから売り先を探す」

という栽培はできない仕組みです。

これは、インドのヘンプ産業がこれまで経験してきた問題への対策でもあります。

農家がヘンプを栽培しても、その後に買い取る企業や加工施設が十分に存在せず、安定した市場につながらないケースがありました。

そこでヒマーチャル州では、栽培を始める段階から農家と製造業者を結びつけることで、「作ったけれど売れない」という状況を防ごうとしています。

加工業者の参入条件を大幅緩和

今回、もう一つ大きく変更されたのが、加工・製造業者に求める投資条件です。

年間の製造ライセンス料は11,500ドル、研究・分析試験施設は1,150ドル、保管施設は115ドル。

収穫したヘンプを輸送する場合には、23ドルの許可証が必要です。

しかし、より大きな問題となっていたのが、製造事業を始めるための最低投資額でした。

州政府は当初、製造事業者に最低1,150万ドルの投資を求めていました。

この金額では、実質的にかなり大規模な企業しか参入できません。

そこで8月26日に発表された修正では、最低投資額を約57万5,000ドルまで引き下げました。

実に95%の引き下げです。

州政府としても、農家にヘンプを作ってもらうだけでは産業にならず、その後の加工を担う企業を呼び込む必要があると判断したものとみられます。

種子も管理対象に

ヘンプ栽培に使用する種子についても、正式な管理制度が設けられます。

農家は、認可された供給業者から種子や植え付け用の材料を入手する必要があります。

供給業者は、ヒマーチャル州内だけでなく、インド国内の他地域や海外から種子を調達することも可能です。

国内産の種子については、認定機関または政府が認可した研究所による分析結果が必要となり、カンナビノイド濃度などを確認します。

海外から輸入する場合も同様の分析書類に加え、植物検疫証明書が必要です。

その背景にあるのが、ヒマーチャル州に数多く自生している野生の嗜好用大麻です。

州政府は、野生種をそのまま産業利用するのではなく、THC濃度が低く、性質が確認された認証品種を使った産業を構築しようとしています。

その種子供給源の一つとして検討されてきたのが、すでにヘンプ研究や種子開発を進めているウッタラーカンド州です。

収穫前にもTHC検査

農家は収穫前にも、地区の物品税担当官へ通知する必要があります。

その後、州が認可した研究所でサンプル検査を行い、THC濃度が0.3%以下であることが確認されて初めて収穫できます。

さらに、GPS座標やジオタグ、デジタル監視なども導入される予定です。

どこで、誰が、どのヘンプを栽培しているのかを追跡できる仕組みを整えることで、合法的な産業用ヘンプと違法な嗜好用大麻を明確に分ける狙いがあります。

残るのは「市場」

制度面では大きな前進ですが、インドのヘンプ産業には依然として課題があります。

国内の加工能力はまだ十分ではなく、認証されたヘンプ種子も簡単に入手できる状況ではありません。

さらに、安定した商業市場そのものも発展途上です。

今回のヒマーチャル州の制度では、栽培前に買い手との契約を求めたり、種子供給を管理したりすることで、こうした問題をあらかじめ防ごうとしています。

しかし最終的には、実際にどれだけの加工企業が参入し、投資が行われ、農家から継続してヘンプを買い取る市場ができるかが重要になります。

違法産業から合法産業へ

ヒマーチャル州では、今回突然ヘンプ政策が始まったわけではありません。

2023年には州議会の委員会が設置され、規制された嗜好用大麻産業によって農家に新しい収入源を提供できないか検討が始まりました。

同時に狙っているのが、長年地域に存在してきた違法な嗜好用大麻経済の一部を、合法産業へ転換することです。

その後、州議会は産業、科学、医療目的での嗜好用大麻栽培への道を開くため、州の麻薬・向精神薬関連規則の変更を支持しました。

2025年7月には、ライセンス制度を段階的に導入し、まず産業用ヘンプを優先する方針も示されていました。

ヒマーチャル州のスク州首相も、これまで取締りの対象だった嗜好用大麻を、規制された農業・製造産業へ転換する政策として今回の取り組みを推進しています。

野生大麻の多い地域

ヒマーチャル州のクル、マンディ、チャンバなどでは、野生の嗜好用大麻が広く自生しています。

この地域では昔から、「チャラス」と呼ばれる伝統的な手揉みのハシシが作られてきました。

その一部は違法な産業として地域経済に根付いています。

州政府が目指しているのは、こうした活動の一部を、管理された低THCヘンプの合法栽培へ置き換えることです。

栽培されたヘンプは、繊維、建築材料、紙、そのほかの工業製品などへの活用が想定されています。

制度はようやく整いました。

これから問われるのは、農家、種子業者、加工業者が実際につながり、一つの産業として市場を形成できるかです。

今回、製造業者に求める最低投資額を大幅に引き下げたことからも、州政府が「加工産業への投資」を成功の重要なポイントと見ていることが分かります。

編集部あとがき

今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1.インドで産業用ヘンプの商業栽培が一歩前進

ヒマーチャル州が栽培から加工、製造までを対象としたライセンス制度を整備しました。THC濃度0.3%以下という基準も設けられ、長年議論されてきたヘンプ政策が、制度づくりから実際の商業栽培へ進み始めます。

2.「作ってから売る」ではなく「売り先を決めてから作る」

農家が栽培ライセンスを取得するには、認可された製造業者との購入契約が必要です。これは、ヘンプを栽培したものの買い手が見つからないという問題を防ぎ、生産と需要を最初から結びつける仕組みです。

3.成功のカギは加工企業を呼び込めるか

製造業者に求める最低投資額は、約1,150万ドルから約57万5,000ドルへ95%引き下げられました。農家が栽培できても加工する企業がなければ市場は成立しないため、州政府が本気で加工企業を呼び込もうとしていることが分かります。

4.野生大麻を「取り締まる」だけでなく産業へ

ヒマーチャル州には野生の嗜好用大麻が多く、チャラスなどの違法生産も長く存在してきました。州政府は、低THC品種による合法ヘンプ産業を育てることで、その一部を農業や製造業といった正規の地域産業へ転換しようとしています。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URL Copied!
  • URL Copied!

AUTHORこの記事をかいた人

HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

目次
閉じる