モルシュンの建築現場で研修を行うコバレンコフ氏(左)
戦争で多くが破壊される中、ヘンプ建築事業者は「未来」を建築続けている
ロシアがウクライナに戦争を仕掛ける前、建築家のセルギー・コヴァレンコフ氏は、環境に優しく健康的なヘンプクリート製の居住空間をウクライナの人々に提供するという使命感に燃えていました。
戦争では多くの家が破壊され、より多くのウクライナ人が家を失っている今、コバレンコフ氏はその使命をより強く感じています。
そして、、今、、、
「Hemp. Ukraine. Recover.」を立ち上げる
戦争が激化していく最中でも、コバレンコフ氏はヘンプ建築、ヘンプクリート研修を止めませんでした。
「Hemp.Ukraine.Recover.」は、戦争で被害を受けた市民や退役軍人に、持続可能なヘンプ住宅のソリューションと心理的支援(PTSD回復所)を提供することを目的とした非営利基金です。
その目玉がウクライナ西部の小都市モルシン近郊に建設中の、難民や孤児のための30戸の集合住宅です。この集合住宅は、旧酪農家の建物の修復と新築を含む3段階のプロジェクトの第1段階です。
現在建設中のセクションAには、30戸のアパートが入る予定です。
2015年にウクライナでヘンプハウスの建設を始めた建設会社Hempire UA(キエフ)の創業者兼CEOのコバレンコフ氏は、「戦争によって、予定していたプロジェクトの多くが中止され、お客様の多くが国外に逃亡しました、国としても、何百万人もの国民が貯蓄を持って出て行ってしまったので、経済的にも大きなダメージが残ってます」。と話します。
「Hemp.Ukraine.Recover.」は、モルシュンの開発を支援するためにクラウドファンディングに目を向け、寄付をした建築家ロマン・ポマザンが設計した構造物の木枠の周りにヘンプクリートを施しています。
ウクライナの農場で収穫されたヘンプは、地元で開発されたバインダーと混合され、複合施設の壁に使用されます。初期の材料はHempire社が寄贈してます。
復興のその先へ、未来につながるヘンプ建築技術
「全てを失った」難民の中には、「Hemp.Ukraine.Recover.」で自分たちの家を建てている方もいます。ヘンプクリートを現場で学び、戦後の復興シナリオに役立つ技術を身につけています。コバレンコフ氏の復興構想は、ヘンプ建築がベースになっています。
「Hemp.Ukraine.Recover.」は、冬の間も建設が続く中、春には建設を加速させるために供給源を確保することに集中し、資金調達やメディア活動も拡大していくそうです。
「特に冬場は気温が下がり、ロケット攻撃で停電が何時間も続くので大変です。しかし、私たちは建物を壁で囲うことができるようになりました」。と、コバレンコフ氏は言います。
現在、第一期工事の囲い込みが行われている。
戦争によって輸送費が4倍、電力不足、燃料不足だが、、、
これまでの原料はモルシュンの建設地から半径1,000キロメートル以内で調達してきました。しかし、コバレンコフ氏によると、戦争の混乱でこの春はヘンプを栽培する農家が少なく、来年は基本的なヘンプの原料が手に入りにくくなる可能性があるとのことです。
ウクライナがヘンプ原料を輸入することは可能ですが、戦争が始まってから輸送費が4倍になり、輸入税もかかるため、コスト面では厳しい状況に。インフレ、原材料の高騰、電力不足、戦争による燃料不足などが、このような事態を招いています。
「Hemp.Ukraine.Recover.」のクラウドファンディングでは、30戸の住宅を完成させるために必要な総額36万2,000ドル(約4,872万円、1戸辺り約162万円)のうち5万1,000ドル(約686万円)を集めました。
このプロジェクトは3段階あり、第1段階では、さらに100万ドル(約1億3,460万円)かかると予想される戦争帰還兵(退役軍人)のための住宅と、リハビリセンターも想定されています。
他国の退役軍人も招き戦争経験をシェアし心のケアも共有される健康住宅を目指している
コバレンコフ氏は、「私たちは、他の国から戦争を経験してきた退役軍人を招待し、現在ヘンプ建設に参加している退役軍人とPTSD回復の経験を共有する予定です」と述べています。
コヴァレンコフ氏は、近年ウクライナで医療用大麻を合法化する法律を起草した大麻擁護者グループの一員でもあり、政府はこの法律を支持しています。
そこで、彼は、PTSDに苦しむウクライナの兵士や戦争の犠牲者を助けるために、海外の企業にも医療用ヘンプ製品の寄付をお願いしています。