ヨーロッパ産業用ヘンプ協会 (EIHA) ポジションペーパーが発行
EIHAは、2000年に設立され、2005年から公式な団体としてドイツで登録された協会です。ヨーロッパのイギリス、ドイツ、フランス、オランダ、イタリアの 主要な1次加工会社を中心としたメンバーで、事務局をドイツのノバ研究所に設け、正会員 147企業、準会員100名、35カ国の組織です。
WEB サイト: http://www.eiha.org/
北海道ヘンプ協会(HIHA)は、2013年のEIHA国際会議の参加をきっかけに、2015年から20年まで日本で唯一のEIHA の正式な準会員でした。欧州でヘンプ産業が盛んになったこともあり、19年にEIHAの組織改革があり、21年から北海道ヘンプ協会は、国際パートナー団体となりました。
EIHAは、年1回の国際会議が開催され、北海道ヘンプ協会では、13年、15年、16年、17年、18年、20年、21年と過去7回参加し、国際会議での発表者の簡単な概要がわかる報告書を発行しています。世界のヘンプ産業の最新情報を知るには最適な読み物となっています。一定金額以上の寄付および法人/個人会員であればバックナンバーを取り寄せ可能です。
欧州では、CBD製品が特に大きな制限もなく販売できていましたが、2019年1月にCannabis sativa L.の新規食品カタログを更新して、ヘンプ由来のCBD製品、ヘンプの葉や花について、新規食品が定める安全性試験データがないと販売できない方針が示されました。
EIHAは、突然の新規食品規制の扱いについて、様々な文献を元に反論をし、事態を打開するためにあらゆる交渉を続けています。
その反論の1つに、「ヨーロッパ産業用ヘンプ協会 (EIHA) ポジションペーパー」として「食品、サプリメント、医薬品、化粧品に含まれるカンナビジオール (CBD) の合理的な規制について」のレポートを2021年2月に発行したのです。
食品中のTHCの閾値についての新たな見解
EIHAでは、EFSA(欧州食品安全機関)によって推奨された2015年のTHC摂取に関する閾値は、不完全な考察に基づいており、不必要に厳しいことを指摘しています。
そこで、オーストラリアとニュージーランドの管轄当局(FSANZ)とスイス連邦公衆衛生局(SFOPH)、クロアチアなどの報告に基づいて、
LOAEL(最小毒性量)を成人当りΔ9-THCの1日当たり摂取量を5mgとし、
最大7μg/㎏体重(あるいは成人で1日当たり490μg)としました。
ちなみに、酩酊作用を感じるには、20㎎~40㎎のΔ9-THCを必要とします。
また、カナダの合法化されている嗜好用大麻(例:グミなどの食品)の1個当たりの最大THC量を10㎎としています。
医薬品、サプリメント、食品 CBDの3段階の規制と1日摂取量の提案
CBDの生理学的作用は1日の摂取量に依存するため、EIHAでは3段階の規制を提案しています。イチョウ葉エキス、一部のビタミンなど、医療用と食用で区分するアプローチは、他の多くの物質でも適用されています。
処方箋医薬品としての可能性のある高用量のCBD
成人 175㎎ 経口摂取/日以上
処方箋なしで入手できる中用量のCBD
成人 10~70㎎ 経口摂取/日
欧州フードサプリメント指令の意味での生理的作用を及ぼすのは20~100㎎と文献で示されています。
食品中に許容される低濃度のCBD
成人 10㎎ 経口摂取/日
国際条約、欧州司法裁判所判決、化粧品
麻薬単一条約(1961年)において、ヘンプ製品に含まれるTHCレベルは極めて低いため、乱用、嗜癖、依存を引き起こすことはないと考えれるため、国際規制の対象外です。
欧州司法裁判所は、2020年11月19日(Case C-663/18)に、葉および種子だけでなく(全草アプローチ)、植物全体(花または果実のついた枝端もその一部である)からの抽出物を含むヘンプ抽出物は、単一条約の適用範囲には含まれず、物品の自由な移動の原則の対象であると判断しました。
つまり、CBDは国際条約で規制を受ける麻薬ではないことを言っています。
欧州司法裁判所が欧州法の拘束力のある解釈を与えたこの判決は、欧州連合加盟国にも拘束力を持ちます。EUレベルでは、次のことが適用される: 産業製品中のヘンプ抽出物は、原則として、精神活性成分を含まず、精神活性作用および各部門に適用される他のすべての規制(例えば、新規食品規制、EU化粧品規制など)が遵守されていれば市場に出すことができます。
また、欧州の化粧品成分データベースであるCosIngでは、前述の欧州司法裁判所の結果を受けて、2021年2月3日に天然由来の全草ヘンプCBDとヘンプ葉を追加しました。
日本の大麻法は部位規制から成分規制へ
日本では、21年1月から6月まで厚生労働省の監視指導・麻薬対策課を主管とした「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が12名の有識者によって全8回開催され、報告書にとりまとめられました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin_436610_00005.html
その中で、大麻取締法第1条において、大麻草の茎と種子は合法、花と葉は違法という植物部位規制からTHCの成分規制に変えていくことが適当という方針が示されています。
日本における成分規制やCBD製品の安全基準を考えるとき、HIHA仮訳の本レポートを参考にしていただければと思います。
全文のPDFファイル(ダウンロード)は、下記サイトからお願いします。
北海道ヘンプ協会仮訳:食品、サプリメント、医薬品、化粧品に含まれるカンナビジオール (CBD) の合理的な規制について
http://hokkaido-hemp.net/EIHApositonPapar2021_2.pdf
1.カンナビジオール(CBD)への序論
2.伝統的なヘンプ食品、CBD、新規食品
3.食品中のTHCの閾値に関する新たな見解
4.異なる濃度と適用におけるCBDの効能と薬理作用
5.医薬品、サプリメント、食品 CBDの3段階の規制と1日摂取量の提案
6.単一条約と産業用ヘンプに関する共通見解
7.化粧品におけるCBD