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20億ドル市場を解放せよ、ニュージーランド政府の規制改革が産業用ヘンプの未来を握る

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政府の見直しで期待高まる

長年にわたり規制の壁と政府の対応の遅さに悩まされてきたニュージーランドの産業用ヘンプ業界ですが、ようやく本格的な改革が進む兆しが見えてきました。規制担当相デイビッド・シーモア氏による規制見直しの発表は、長らく時代遅れの法規制に縛られてきたこの作物に対する政府の姿勢が転換する可能性を示すものとして、大きな注目を集めています。

今回の見直しは、産業用ヘンプを「薬物乱用法(Misuse of Drugs Act)」の下で「クラスC規制薬物」と分類している現在の法律を再評価することが目的であり、ヘンプ推進派にとって大きな前進といえる内容です。

ニュージーランド・ヘンプ産業協会(NZHIA)の会長であるリチャード・バージ氏は次のように述べています。
「産業用ヘンプへの関心は非常に高まっており、これをチャンスとしてしっかり活かすことができれば、地域経済、雇用、投資の面で大きな成果をもたらすでしょう。地方経済の活性化につながる『勝利の方程式』を手にするチャンスです。」

不要な制限

バージ氏をはじめとする業界関係者たちは、ヘンプがTHCをほとんど含まず、健康・ウェルネス、繊維、建設、食品といった多様な用途があるにもかかわらず、現在の法的規制は過剰であると主張しています。今回予定されている内閣レベルでの規制見直しは、ニュージーランドのヘンプ関連法を現代化し、国際的なベストプラクティスに整合させる絶好の機会です。
関係者たちは、以下のような改革を求めています:
ヘンプを禁止植物リストから除外すること
製品ごとのTHCおよびCBDの基準値を明確に設定すること
輸出に向けた制度的なルートを整備すること
また、地域に加工拠点(ハブ)を整備し、付加価値を最大化すると同時に地方経済を支援することの必要性も強調されています。
規制担当相デイビッド・シーモア氏も、「過剰な規制が、この分野での経済成長とイノベーションを抑え込んできた」と述べ、今こそリスク管理と生産者の機会創出のバランスを取る新たなアプローチが必要であると訴えています。
「農業・園芸製品に関する見直し調査や、市民からの“レッドテープ(お役所的な手続き)”情報提供窓口を通じて、ヘンプ産業を妨げている過剰な手続きに関して幅広いフィードバックが寄せられています。」とシーモア氏は語り、「その声を受けて、規制省はMedSafe(医薬品安全局)や保健省と連携し、約20年前に制定されたこれらの古い規制の見直しに着手しています」とも述べました。

経済的ポテンシャルの解放

長年にわたり、ヘンプ業界の関係者たちは、急成長する世界のヘンプ市場にニュージーランドが参入できるよう、規制改革を求め続けてきました。

ニュージーランド・ヘンプ産業協会(NZHIA)の予測によると、適切な規制環境が整えば、2030年までに年間20億ドル(NZD)の経済効果と2万人の雇用創出が可能であるとされています。

しかし現状では、厳しいライセンス要件や麻薬法による分類が、業界の成長を大きく妨げており、投資やイノベーションを萎縮させる要因となっています。

現在の規制枠組みには、いくつかの深刻な課題があります。
たとえば、ヘンプ由来の食品は2017年から合法化されていますが、動物飼料への使用は未承認のままで、市場の拡大が制限されているのが実情です。

さらに、国際市場へのアクセスを阻む規制障壁もあり、地元の生産者が海外の競合他社に比べて不利な立場に置かれています。 これに対し、オーストラリア、アメリカ、EU諸国などでは、非精神作用性のヘンプ製品に対するより進歩的な政策が採用されており、より広範な商業利用が認められています。

前進への道筋

今回の見直しに前向きな機運が高まっている一方で、業界リーダーたちは、改革の進行の遅さに対して依然として強い不満を抱いています。

ニュージーランド・ヘンプ産業協会(NZHIA)は、すでに2020年の報告書で必要な改革案を明確に示していたにもかかわらず、実質的な進展はほとんど見られませんでした。

先週行われた一次産業特別委員会(Primary Production Select Committee)で、バージ会長は改めて「ヘンプは規制薬物ではなく、通常の農作物として扱うべきだ」と強調しました。

今回の規制見直しは、正しい方向への第一歩ではあるものの、その成果は政府が実質的な改革をどこまで実行できるかにかかっています。

バージ氏はこう語っています。
「業界側は準備万端です。あとは、政府が根拠のない障壁を取り払ってくれさえすれば、私たちは世界市場で堂々と勝負できます。」

編集部あとがき

 今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1.産業用ヘンプはニュージーランドにとって未開拓の経済資源である
今回の政府による規制見直しは、長年停滞していたニュージーランドの産業用ヘンプ産業にとって大きな転機となり得ます。関係者たちは、ヘンプが農業・繊維・建築・食品・ウェルネスなど多方面での応用が期待できる「次世代の産業作物」であると強調しています。正しい法整備がなされれば、年間20億NZドル、2万人の雇用創出という経済効果が見込まれている点からも、その潜在力は明白です。

2.現在の法規制は時代遅れで、過剰なリスク管理が産業発展を妨げている
産業用ヘンプがいまだに「薬物」として分類されている現行法は、本来の用途や安全性を無視した不合理な規制となっており、投資や商品開発の障壁となっています。とくに「非精神作用性であること」が国際的に証明されているヘンプに対し、約20年前の法律を根拠に制限を設けている点は時代錯誤的であり、これが国内外の企業や投資家の参入を妨げています。

3.国際的な競争力確保のためにも、輸出ルートと明確な基準整備が急務
グローバル市場では、アメリカ、EU、オーストラリアなどが既に非精神作用性ヘンプ製品の商業化を進めており、ニュージーランドは出遅れている状況です。明確なTHC・CBD含有量の基準や輸出制度が整備されなければ、地元の生産者は国際市場で不利な立場に置かれるリスクがあります。今回の見直しが、国際基準に沿った整合性ある制度設計につながるかどうかが鍵となります。

4.政府の本気度が、ヘンプ産業の未来を左右する
NZHIAをはじめ業界側はすでに生産体制やマーケティングの準備が整っており、「政府が不要な障壁を取り払えばすぐにでも動ける」という状況です。今回の規制見直しが単なる形式的な議論で終わるのか、それとも本気で制度改革を進めるのか。ここに、ニュージーランドがヘンプ産業で国際的リーダーになれるかどうかの分岐点があります。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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