ポルトガル、EU法に反してCBD取引を阻止
ポルトガルの規制当局は、カンナビジオール(CBD)を含む複数の化粧品を市場から撤去する決定を下し、これがEUの「物品の自由な移動」に関する法律に違反しているとして批判を受けています。
ポルトガルの医薬品・保健製品庁(Infarmed)は、大麻植物の樹脂、ティンクチャー、エキスから抽出されたCBDは、EU規制上の「麻薬」に該当すると主張しています。しかし、この解釈は、2020年の欧州司法裁判所(ECJ)の判決と明らかに矛盾しています。ECJはこの判決で、CBDは麻薬に該当せず、EU加盟国間の貿易で規制されるべきではないと明確に判断しました。
それにもかかわらず、InfarmedはSVR、Naturasor、DermacolといったブランドのCBD配合化粧品を即時撤去するよう命令しました。同庁は、「1961年国際麻薬条約(United Nations Single Convention on Narcotic Drugs)」に基づき、麻薬指定された物質を含む化粧品はEU法で禁止されていると主張しています。Infarmedは、大麻由来のエキスから抽出されたCBDがこの制限に該当するため、ポルトガル国内での化粧品への使用は違法であると判断したのです。
誤った解釈
今回の措置は、Infarmedが過去にもCBDを含む製品に対して断続的に実施してきた取り締まりの一環です。同庁は、化粧品成分データベース(CosIng)に成分が掲載されているからといって、その使用が正式に承認・許可されたことにはならないと主張しており、植物由来の樹脂やチンキから得られたCBDは、依然として化粧品での使用が禁止されるべきであると考えています。
しかし、Infarmedのこの方針はEU法と矛盾しており、特に2020年のKannaVape事件に関する欧州司法裁判所(ECJ)の判決と真っ向から対立しています。
KannaVape事件の判決では、カンナビス・サティバ(Cannabis Sativa)植物から抽出されたCBD、特に花からの抽出物であっても、1961年の国際麻薬条約(UN Convention on Narcotic Drugs)における麻薬の定義には該当しないと明確に判断されました。さらに、この判決では、EU加盟国は、他の加盟国で合法的に生産されたCBD製品の販売を、科学的に証明された健康リスクがない限り禁止することはできないと規定されています。
禁止されるべき貿易障壁
欧州司法裁判所(ECJ)の判決は、すべてのEU機関を拘束し、加盟国に対して国内規制をこの解釈に沿うよう調整する義務を課しています。
そのため、ポルトガルのCBD配合化粧品に対する規制は、EUの基本原則である「物品の自由な移動」に違反している可能性が高いと指摘されています。InfarmedがCBD製品の取引を阻止することは、EU法で禁止されている「非関税障壁(non-tariff barrier)」を事実上設けることに等しいのです。
ポルトガルの化粧品市場では、CBD配合製品の需要が急速に拡大しており、これはヨーロッパ全体のトレンドとも一致しています。消費者は、CBDがスキンケアにもたらすとされる効果を求める傾向が強まっており、多くのブランドがこの市場に参入しています。
しかし、Infarmedの取り締まりによって業界の成長が妨げられ、多くの企業が規制を回避するために製品の再処方を余儀なくされています。特に、合成CBD(人工的に生成されたCBD)を使用することで、規制上の問題を回避しようとする動きが見られます。
さらに、ポルトガル国内でのCBDの法的地位に関する明確な指針がないことが、企業や投資家にとって大きな不確実性を生んでいます。Infarmedの解釈が前例となれば、新たな企業の市場参入を妨げる可能性があり、CBDに対する規制が緩和されつつあるヨーロッパ全体の潮流と逆行する結果となりかねません。(出典:Cannareporter.eu)
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1.ポルトガルのCBD規制はEU法と矛盾しており、貿易障壁を生み出している
ポルトガルの医薬品・保健製品庁(Infarmed)は、CBDを含む化粧品の市場撤去を命じましたが、これはEUの「物品の自由な移動」の原則に反する可能性があります。欧州司法裁判所(ECJ)は、CBDは麻薬ではなく、加盟国間で自由に取引できるべきであると2020年に明確に判断しており、この規制はEU全体の貿易ルールと矛盾しています。結果として、ポルトガルは事実上の非関税障壁を設けており、EU法に抵触する可能性が高いと指摘されています。
2.ポルトガルのCBD市場は急成長しているが、規制の不透明さが業界の発展を妨げている
欧州全体でCBD配合の化粧品の需要が高まり、ポルトガル市場でも同様の成長が見られます。特に、スキンケアや美容分野でCBDの潜在的な効果を求める消費者が増えており、多くのブランドが市場参入しています。しかし、Infarmedの突然の規制強化によって、企業は製品の再処方を余儀なくされ、合成CBDなどの代替成分を使用せざるを得ない状況になっています。これは、業界全体の安定した成長を妨げる要因となっています。
3.規制の曖昧さが企業や投資家の市場参入を阻害している
Infarmedの解釈には一貫性がなく、CBDの法的地位に関する明確なガイドラインがないことが、企業や投資家にとっての大きなリスクとなっています。EU全体では、CBDに対する規制が緩和される方向に進んでいるのに対し、ポルトガルはその流れに逆行しています。これにより、ポルトガル市場への新規参入を検討する企業は慎重にならざるを得ず、CBD業界の発展が停滞する恐れがあります。
4.EU市場全体に影響を及ぼす可能性があるポルトガルの動き
ポルトガル政府が現在の規制を維持する場合、他のEU加盟国にも影響を与える可能性があります。もしポルトガルのCBD規制が前例となれば、他の国も独自の厳格な規制を導入し、EU全体のCBD市場の自由な取引が阻害される恐れがあります。そのため、EU内のCBD市場の安定性を確保するためには、加盟国がECJの判決を遵守し、統一した規制を確立することが不可欠です。