フランス議会で発表された報告書によると、フランス国内のCBDに関する法律が大幅に改正されれば、今後数年間でCBD市場は飛躍的に拡大する可能性があると述べています。
現在のフランスでのCBD市場は、約1億5千ユーロから2億ユーロ(約190億円から254億円)と推定されていますが、フランスのヘンプ組合であるSyndicat Professionnel du Chanvre(SPC)の推計によると、規制を改正すれば2023年までに約10億ユーロ(約1270億 円)の市場に成長する可能性がある、と報告しています。
「健康とヘンプの相関性」というこの報告書の序文には、「フランスにおけるCBD分野は、 強い法的規制と、国と欧州の公的機関の消極的な姿勢によって発展が妨げられている」と述べられています。
また「この消極的姿勢は、主にヘンプの花穂から抽出される成分の乱用を、過度に警戒することが起因しており、それはフランスがヘンプ産業において独占的な地位を確立する可能性を不必要に妨げている」と報告しています。
ピンチをチャンスに変える有望な報告書
この報告書は、政府のヘンプに関する調査の一環として実施し纏められたもので、地方自治体、業界団体、科学者、欧州委員会の代表、弁護士、学者、ヘンプビジネス関係者などから広く意見を集めており、今年のフランス議会でヘンプ法案を改正する際の指針となります。
SPCの Aurélien Delecroix会長は 「この報告書は、フランス議会における審議を適正な方向へ導くものである。」と、Le Figar紙に語りました。 更にDelecroix氏は 「特にダメージを受けていたフランスは、このヘンプという新しい分野で足がかりを得て、これまでの欧州での遅れを取り戻すことができるだろう。」とも述べました。
SPCによると、現在のフランスは、ヘンプの花穂や葉の使用を禁止する厳しい規制が施行されており、英国、米国、スイスなどの市場に遅れを取っています。 しかし現実には、厳しい規制があるにも関わらず、CBDを使った食品、オイル、化粧品、 電子タバコなどを販売する店は増えつづけており、現在フランスにはこのような小売業者が400社近くあり、2年前の約4倍にもなっています。
欧州司法裁判所の聡明な判決
欧州連合司法裁判所(ECJ)は、「CBDを麻薬とみなすことは出来ず、CBD製品は他の合法的な製品と同様に、加盟国間での自由な交易を享受すべきである」との判決を下しました。 このECJの判決は、チェコ共和国製のCBDベイプをフランス市場で販売したとして逮捕された2人の事業家の控訴に端を発しています。
欧州委員会はこのECJの判決を考慮し、去年末に「CBDは麻薬ではない」と表明しました。 これにより欧州加盟国は、法律や規制の見直しを迫られており、欧州委員会の方針に準拠する必要が生じています。
フランス国内では、薬物および薬物依存症等に関する研究機関(MILDECA) で、ECJの判決がフランスの法律にとってどの様な意味を持つか、調査・分析にあたっています。
警戒もした上でヘンプを推奨
フランス・モゼル地方のLudovic Mendes議員は「MILDECAの見解は、THC含有量の改訂や花穂の使用許可などの我々が提案している内容と、全て合致している訳ではないことは理解している。」と、Le Figaro紙に語りました。
「彼らは常に否定的な理由を見つける傾向がある。 しかし、我々は非常に慎重に検討し警戒もした上で、この提案を行っているのです。」とMendes議員は述べました。
この報告書の主要な提言では、「花穂も含めた産業用途と商業目的のヘンプ全ての部位の栽培、輸入、輸出および使用の許可」を推奨しています。 また、収穫時のヘンプTHC含有量を0.6%~1.0%の間に引き上げることも提案しており、欧州委員会が最近提案した現行の上限0.2%から上限0.3%の引き上げをも超える内容です。
ヨーロッパでのTHC上限0.3%への改正は、2023年初頭に行なわれると予測されています。
その他、具体的な提案内容
本報告書では、20ある条文の中で、具体的に以下を行うべきであると述べています。
・現行のヘンプ製品内に含まれるTHC上限値0%規制を放棄し、食品、電子タバコ用リキッド、化粧品などのCBDを含む可能性のある製品の各カテゴリーに固有のTHC適正値を設定する。
・国のヘンプに関する目録を、ヨーロッパ全土のヘンプ品種リストから関連性の高い品種を追加し拡充する。
・国および地方のヘンプ組織にCBD生産の為のヘンプ栽培の実施を迅速に認可する。
・ヘンプ花穂由来のCBDを「タバコ以外の植物から作られた喫煙製品」と位置づけ、THC およびCBDの検査機器を管理官が利用できるようにする。
・ CBD 製品の治療効果を謳う生産者と流通業者に対する規範を強化する。
・化粧品に関する公的資料を再定義して、ヘンプの全ての部位から抽出される天然エキスを新項目に追加する。他のEU加盟国と協力して、ヘンプ製品のTHC規制値の統一を図る。
・一般食品および栄養補助食品に特定のCBDの効能・効果を表示することについて、欧州委員会の承認を得る。
・CBDの1日の推奨摂取量を定義し、製品パッケージに副作用に関する注意書きを記載することを義務付ける。
・小児および妊婦は、CBDを含む製品の摂取を禁止する。
・CBDを含む喫煙製品が健康被害の警告に関する規制対象であるとし、18歳未満への広告および販売を禁止する。
・フランスの大手食品企業およびサプリメント会社は、CBD製品を新食品として販売する権利を取得する必要があり、速やかに欧州委員会に申請するよう制度化する。
・CBD製品の新規食品認可手続きにおける中小企業のための支援システムを構築する。
・国や欧州レベルでの専門家の権益を保護する為に、SPC及びもう一つの業界団体である Inter Chanvreを中心とする「ヘンプウェルビーイング(ヘンプによる健康と幸福)」部門の構築を奨励する。
・フランスの公的研究機関、特に国立健康医学研究所に、 THC依存とその身体への有害な影響を軽減させる可能性のあるCBDの作用について、学識を向上させることを目的とした研究を開始するよう要請する。
意外にもヘンプに対して消極的だったフランスが、いよいよ重い腰を上げて、ヘンプ・ビジネスを国の政策として本格的に取り組もうとしています。しかも発表された報告書に提案されている内容は、どれも現実的で実効性の高いものばかりで、これは非常に嬉しいニュースです。
1270億円という巨額な経済効果で税収も上がり、同時に国民の健康や福祉も充実する訳ですから、もはや国が拒む理由は無いと言えるでしょう。今後のフランスの動向に注目しましょう。
引用元:https://hemptoday.net/report-says-changes-can-lead-to-e2-billion-cbd-market-in-france/