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緊急開催!今注目の【大藪裁判】徹底解説

考察:厚労省が44年ぶりの大麻冊子を発行

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目次

実に44年ぶりの発行

 

20203月に44年ぶりに大麻の小冊子「大麻問題の現状」が発行されました。

 

これは、2016年から2019年までの4年間の厚生労働省の補助金事業で実施した研究成果を基にして執筆されたものです。

 

そこで、44年前の1976年版の冊子と比較して、時代が進んだと感じた点と、同時に不足している点とをピックアップしてみました。

 

まず評価できるのは、2020年版は、第章、第章、第章、第章にまたがって、大麻草の医療利用について有効性や各国事例を紹介している点です。1976年版は、第章でたったの3ページしか扱っていません。

 

世界各地での規制緩和と、エンド・カンナビノイド・システム(ECS)の発見を含む研究の進展を踏まえると、「ダメ。ゼッタイ。」の厚労省とはいえ無視できない話題です。わが国の大麻取締法第四条による医療利用の全面禁止を今後どうするのかを議論するための基礎的な資料となっていると言えるでしょう。

 

一方で、1976年版にあった大麻の沿革、大麻草、大麻の取締り(法律制定の歴史的経緯)と詳しく書いていたものが、2020年版に第章にすべて簡潔にまとめれています。

 

1970年代に米国発のヒッピー文化が全世界にマリファナ喫煙の普及をもたらしたきっかけでしたが、その時代を反映して、1976年版には第章の大麻の鑑定法、大麻草の植物図、大麻喫煙具、大麻の隠語などがありました。しかし、2020年版には不要な情報??として削除しています。

 

マリファナ事犯が年間4000人を超えた2020年現在、大麻冊子にこれらをわざわざ紹介していると、マリファナ喫煙を推奨しているような専門用語解説冊子になってしまいかねないですから、賢明な判断かもしれません。

 

そして、最後に1976年版にあった第章「大麻の社会学的考察」は、2020年版に同章の「大麻問題に関する施策と教育啓発の現状」という単なる現状の政策紹介に留まり、社会学的な考察という「何かを考えること」を見事に放棄しています。

 

1976年「大麻」

92ページ

2020年「大麻問題の現状」

127ページ

Ⅰ.大麻の沿革

大麻の起源と歴史、わが国における大麻の歴史

大麻とは

植物学からみた大麻、大麻の成分について、国際条約での規制、大麻に関する国内の法律

 大麻草

大麻草の形状、大麻草の種類、大麻草の生育特性、大麻草の分布、大麻の調整品、大麻の成分、THC類似化合物、大麻含有成分の地域による相違

大麻・フィトカンナピノイドの有害性と医薬品としての応用:基礎と臨床

はじめに、大麻/THCの作用、カンナピジオール(CBD)の作用、大麻の依存性とその特性、フィトカンナピノイドの医薬品としての有用性、おわりに

 大麻の鑑定法

簡易試験、植物学的試験、理化学的試験

大麻による有害作用:臨床的特徴

はじめに、検索方法、大麻成分とその急性作用、大麻の慢性使用による影響、大麻使用と精神病の関連、心臓血管系と自律神経系への影響、呼吸器の影響、大麻使用と他の薬物乱用、青少年の大麻使用、おわりに

 大麻の作用

動物実験、ヒトに対する作用

 大麻草由来成分やその類似成分を用いた医薬品

はじめに、ナピキシモルズ(サティべックス)の臨床、ドロナピノール(マリノール)の臨床、ナピロン(セサメット)の臨床、おわりに

 医薬品としての大麻

医薬品としての大麻の評価、わが国における医薬品としての大麻

 大麻と危険ドラッグ

はじめに、危険ドラックとは、危険ドラックの種類とその健康被害、危険ドラックの包括指定、危険ドラックと大麻、おわりに

 大麻の乱用

各国における状況、わが国における状況、大麻吸煙器具、大麻の隠語

 世界の大麻事情

米国、カナダ、欧州

 大麻の取締り

大麻の国際的規制、1961年の麻薬に関する単一条約の主要規定、わが国における大麻取締りの変遷、大麻取締法の主要規定、わが国の大麻栽培状況

 大麻草およびその成分の医療での活用

米国、カナダ、欧州

 大麻の社会学的考察

大麻問題に関する施策と教育啓発の現状

はじめに、本邦における大麻問題の現状、政府の薬物乱用防止5力年戦略、国および地方自治体の薬物乱用防止に係る啓発・教育施策、代表的な関係団体の取り組み

発行元

厚生省薬務局麻薬課(非売品)

発行元

真興交易(株)医書出版部(非売品)

 

研究調査成果の還元(アウトリーチ活動)が足りない

 

最近では、研究者からの一方的な情報発信だけでなく、双方性が重視されており、一般社会からの研究成果のフィードバックも求められる傾向にあります。すべての科学技術の分野が細分化&複雑化するにあたって、一般国民からはよく見えないものになっており(ブラックボックス化)、補助金(税金)を使った研究には、特にアウトリーチ(成果還元)が求められているのです。

 

厚労省補助金による1619年の4年間の研究では、12名が執筆した「大麻問題の現状」という44年ぶりの大麻冊子を発行したことがアウトリーチ活動の1つと位置づけられています。

 

しかし、大麻冊子の発行だけではいささか不十分ではないでしょうか?

 

そこで、4年間の研究の成果物である報告書にあるアウトリーチ活動の具体的な記録を見てみましょう。

 

年度

研究予算

成果物の頁数

研究者数

学会発表

論文発表

知的財産権

刊行物

その他

2016

7,898,000

126

23

0

0

0

0

0

2017

7,540,000

261

23

5

4

0

0

0

2018

7,540,000

201

23

6

1

0

0

0

2019

7,389,000

145

23

8

3

0

1

0

合計

30,367,000

127

12

19

8

0

1

0

引用:厚生労働科学研究成果データベース

 

結論からいうと、4年間のアウトリーチ活動は、23×4年間で学会発表19件、論文8件、刊行物1件(大麻問題の現状)でした。単年度換算だと、学会発表4.7件、2件、刊行物0.25件です。これは果たして、多いのか少ないのか?

 

同じ厚労省の研究補助金の2018年度終了の1課題あたり論文件数(和文・英文等合計)が15.1件、学会発表数は、14.1件と比較すると、今回の大麻研究は単年度換算ではかなり少なく、4年間あわせても少ないと言わざる得ません。

 

一般的に、どんなテーマであっても、研究者であれば研究成果に対して批判的評価を受け、次の研究の糧にすればよいのですが、大麻研究については、現行の厳罰アプローチとは180度異なる健康アプローチのハームリダクション(健康被害の削減)政策のことまでを考えなければならない(面倒くさい)テーマなので、こうした研究を行ったからといって積極的に告知して行こうというモチベーションがないのかもしれません。

 

そして根本的には、この「大麻問題の現状」という冊子の存在自体が、一般には殆ど知られていない=アウトリーチ活動が全く足りていない、と思います。今回の研究に関係した23名の所属機関のどこでもよいので、4年間の研究成果について一般国民向けのセミナーやシンポジウム等を企画すべきでしょう。

 

大麻等の薬物対策のあり方検討会の基礎資料となる?

 

2021113日に画期的な発表が厚労省からありました。

 

それは、最近の大麻事犯の増加、大麻由来の医薬品の開発、海外の規制緩和などを受けて、12人の医学・薬学・法学などの有識者からなる「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が120日に発足するというものでした。

 

そして、この「あり方検討会」での議論成果として、7月までに報告書がまとめられます。

 

そのときの基礎資料として、この4年間の時間と3千万円の税金をかけた「大麻問題の現状」という860頁におよぶ研究成果が使われるのでしょうか?

 

以下に、127頁の「大麻問題の現状」の冊子で評価すべき点とできない点を簡単に書いておきました。

多くの方が、熟読するときの参考にしていただればと思います。

 

評価すべき点

44年ぶりに厚労省として最近の世界的な大麻の規制緩和や臨床研究成果を評価した点

4年間で約3000万円の費用と23名の研究者を投じて、5冊で全860頁の成果物としてまとめた点

・医療用大麻だけでなく、嗜好用大麻や産業用大麻についても海外事例として調査した点

・幻覚作用という誤った言葉を使わずに有害性の作用を表現した点

・あとがきに薬物乱用防止教育「ダメ。ゼッタイ。」の批判も聞こえてくると正直に認めた点

 

評価できない点

44年ぶりの大麻冊子であるにも関わらず、一般的に誰にも知られていないし、知るきっかけとなる講演セミナーやシンポジウムが何も実施されていない点

・同時期に行われていたWHO/ECDD(世界保健機関/依存性薬物専門家委員会)の科学的評価のレポートや勧告についての引用や評価がほとんどない点

・ラットの実験でTHC6mg/kgという過剰投与した論文を重要文献として引用した点

・医療用大麻の人道的使用、薬物政策と人権問題の国際動向、逮捕とメディアとスティグマ、ダメゼッタイ教育の是非、酒・タバコ・コーヒーなどの他の薬物との比較について何も触れていない点

 

参考文献

「大麻」厚生省薬務局麻薬課 1976

https://www.hokkaido-hemp.net/kouseisyo-taima-report1976.pdf 

 

「大麻問題の現状」

企画・編集:厚生労働行政推進調査補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業)

「危険ドラッグ等の濫用防止のより効果的な普及啓発に関する研究」研究班

真興交易(株)医書出版部 全127頁、20203

http://www.dapc.or.jp/torikumi/20200415.pdf

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AUTHORこの記事をかいた人

Yosuke Kogaのアバター Yosuke Koga HTJ 編集長

1996年カリフォルニアで初の医療大麻が解禁。その5年後に現地へ移住し、医療大麻の家庭栽培、薬局への販売などの現場や、それを巡る法律や行政、そして難病、疾患に対し医療大麻を治療に使う患者さん達を「現場」で数多く見てきた、医療大麻のスペシャリスト。

10年間サンフランシスコに在住後、帰国し、医療機関でCBDオイルの啓蒙、販売に従事し、HTJのアドバイザー兼ライターとして参画。グリーンラッシュを黎明期から見続けてきた生き証人。

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