国連麻薬委員会(CND)は、1961年に制定された「麻薬に関する単一条約」の分類の内、最も厳しい「スケジュールIV」から大麻と大麻樹脂を削除することを決議し、歴史的な転換点を示しました。
同委員会は本日、昨年に世界保健機関(WHO)から提出された勧告を受け入れ、大麻の扱いを制限の少ない「スケジュール I」に移すことを決議しました。
このWHOの勧告では、
「委員会は、大麻の治療効果に関する情報と、進行中の医学的用途について考慮した。幾つかの国々では、腰痛、睡眠障害、うつ、外的障害後の痛みや、多発性硬化症などの治療に大麻の使用を許可している。
委員会に提出されたエビデンスでは、大麻と大麻樹脂が、他のスケジュール IVにリストされている物質と類似した有毒性を認められない。よって、大麻と大麻樹脂をスケジュール IVにリストしている事は、このスケジュールの定義と一致しない」
と記されており、この勧告を国連が受け入れたという事は、本質的に大麻の有害性が高くない事を認め、その薬効を暗に認めたという事です。
これによって、日本の大麻取締法第4条の
二. 大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。
三. 大麻から製造された医薬品の施用を受けること。
を禁じる両条文は、その根拠を一部失ったことになります。
今回の投票で、残念ながら日本は反対票を入れています。
この投票結果は、これまで頑なに大麻の薬効に否定的であった厚生労働省に方針転換を促す可能性があり、今後の国内での大麻の医療利用に明るい光が差してきたと言えるでしょう。
今回の決議は、日本を含む国際的な大麻政策、特に医療大麻制度に大きな影響を及ぼします。これは、各国の国内の法規制の変更と進展に影響を与え、投資を誘発し、研究をスピードアップすることは間違いありません。
著名な大麻活動家、及び起業家でもあるリチャード・ローズ氏は、「この決議は道徳の変化を示している」と述ました。
価値観の変化
ローズ氏は、彼のブログであるリチャード・ローズ・レポートに「大麻のスケジュールIVへの分類は、1950年代当時の道徳から受け継がれた、最も極端な国際薬物法の遺物であり、植民地時代の人種差別、不寛容、先住民や文化への軽蔑に関連する、長く信頼性の低い価値観を反映している」と記しています。
今回の投票に関するHempTodayの取材に対し、ローズ氏は、「これは、壁に開いた小さな綻びではなく、壁を突き破る大きな穴です。これまで、この条約は、すべての大麻を禁止している国々が、大麻を合法化しない根拠としてきたものでした。そして、カナダとウルグアイが何年もの間、この条約に違反して(大麻を解禁し)、何のお咎めもなかった事から、彼らはこの残酷な茶番を終わらせるべく、正しいことをすることに決めたのです。」と語りました。
世界的な大麻政策問題を追跡している、CND Monitor の Kenzi Riboulet-Zemouli氏は、「この決定により国連は、記録が残る中で、人類が栽培してきた最も古い薬用植物の1つを否定してきたという60年間の歴史を閉じる事になります。」 と述べました。
CBDに関する脚注は拒否
決議では、27対25(棄権1)で通過した今回の勧告の他に、CBDセクターに影響を与える可能性のある2つのWHOからの提案がありました。第一に委員会は、
- 1961年制定の麻薬に関する単一条約にCBDを導入する可能性のある提案を否決
しました。この投票では、28か国がその提案に反対票を投じたのに対し、23か国は賛成、2ヵ国は棄権しました。
この提案では、CBDを医薬品として管理する事が提案されており、もし認められれば、民間でのCBD販売に大きな打撃を与える可能性のあるシリアスな問題でしたが、今回の否決によって、国連は正式に「CBDは食品であり医薬品ではない」というメッセージを表明したと言えるでしょう。
CBD産業に携わる方々と、CBDに自らの健康を委ねる多くの患者達は、ひとまず救われたと言えます。
ちなみに、日本も “NO” に投票しており、日本政府も民間のCBD産業に対して肯定的に捉えている姿勢が透けて見えます。
悪しき前例を避ける
脚注の採用に反対票を投じた米国と欧州のメンバーは、投票に先立ち、CBDが国際的な薬物条約で麻薬として分類されておらず、したがって薬物規制の対象ではないことを繰り返し再確認し、産業用大麻製品に含有する可能性のあるCBDも、同様に免除されることを強調してきました。
一方、麻薬に関する単一条約から「大麻抽出物とチンキ剤」という文言を削除し、「大麻製剤」に置き換えるという、WHOからの第2の勧告は、委員会によって却下されました。
この提案には、27人の委員が反対票を投じ、24人が賛成、2人が棄権し、日本は “NO” に投票しています。
残念ながら、「大麻抽出物とチンキ」をスケジュールから削除することが出来なかったため、今後も大麻の国際的な扱いは麻薬である事に変わりはなく、今回の決議は、むしろ象徴的な側面があることは否めませんが、それでも、これまで医学的な効用を否定され、かつ有害とされてきた大麻が「他のスケジュールIV の薬物と同等に扱われる事は適当でない」と判断され、リストから除外された事は、医療大麻の推進に大きな力を与える事になるのは間違いありません。
世界医師会は、1981年に採択したリスボン宣言で、医療に携わる者のあるべき姿を明文化し、その序文において、患者が必要とする医療を受ける権利について触れ、「医師および医療従事者、または医療組織は、この権利を認識し、擁護していくうえで共同の責任を担っている。法律、政府の措置、あるいは他のいかなる行政や慣例であろうとも、患者の権利を否定する場合には、医師はこの権利を保障ないし回復させる適切な手段を講じるべきである。」と高らかに謳っています。
つまり、「患者の健康に資するものであるならば、たとえ法によって禁止されていても、それを患者が使用する権利の為に、医師は闘うべきだ」と言っているのです。
今後は、この国連の決定を受けて、医師が先頭を切って大麻の活用を主導していくステージへと社会が進んでいく事を願って止みません。
引用元:https://hemptoday.net/historic-vote-by-un-drug-commission-reschedules-cannabis/