米国議会史で初めて
米国議会下院は、連邦レベルで大麻を非犯罪化し、麻薬指定を解除する法案である、マリファナ機会再投資および犯罪歴抹消法(Marijuana Oppotunity Reinvestment and Expungement Act, 通称 MORE法 )を228:164で可決しました。
この法案が法制化され、連邦全体で大麻が非犯罪化されれば、各州が大麻を独自の解釈で再分類または合法化し、大麻による巨大な経済的恩恵と雇用を生み出す道筋を開くだけでなく、これまでに大麻関連犯罪で受けた有罪判決を抹消することによって、現在も制度的不利益を受け続けている数百万人の人々の生活を救う事ができるようになります。
今回の投票の内訳は、下院で過半数を占める民主党が、
賛成に222票、共和党が5票、独立系が1票
であったのに対し、
反対は、民主党が6票、共和党が驚きの158票
に達しており、すでに約70%の国民が支持する大麻解禁というテーマを通して、現在の与党共和党が民意と乖離している姿が見えてきます。
歪んだアメリカ
しかし、共和党支持者は基本的に保守で、大麻解禁などの大きな社会変革には否定的である事から、共和党員は、「己の支持者たちの声を代弁している」という議会制民主主義における代議士としての職責を全うしていると言えるのかもしれません。
ただし、そこからもう一つ見えてくる事があります。それは、大多数が支持する政策と、それを推進する民主党に対し、少数の富裕層(と、多数の共和党支持ではないトランプ支持者)を支持基盤としている共和党が政権を握り、上院の過半数を占めているという、歪んだアメリカの姿です。
BLM運動や大統領選で疲弊し、分断した姿を世界に晒したアメリカですが、今回のMORE法は、1年前にコチラでお伝えした通り、次期副大統領であるカマラ・ハリス氏から上院に提出(提出時には大統領候補だった)されており、ここで上院とホワイトハウスが手に手をとって、この法案を成立させる事が出来れば、次期政権の元でアメリカが団結した姿を見せる事ができるチャンスでもあり、そうした意味で、次期大統領のバイデン氏に対して、良きプレッシャーを与えていると言えます。
下院が、歴史上初めて、大麻解禁に向けた法案を議決しました。しかし、この法案の成立には、この後の上院での採決が控えています。上院では共和党が過半数を占めており、共和党のリーダーであるミッチ・マコーネル議員は、この法案を阻止すると明言している事から、通過の見込みは薄いようです。
こうした、民意に反した姿勢を続けてきた事が、先の大統領選での敗北に繋がっている事を共和党は自覚し、改めるべき時期に来ているのではないでしょうか。
ただでさえ、2016年の大統領選でもトランプ以外に擁立すべき候補者すら居なかったために、党是と必ずしも一致しないトランプの独自路線を許し、結果として現在の国内の混乱した状況を招いてしまった責任が共和党にはあり、また、それほど空洞化が進んでいます。
各上院議員には、民意をしっかりと受け止め、社会に資する政策とは何か、を改めて自身に問い、正しい選択を行う事が、最終的には自身の政治生命を伸ばす事につながるという自覚を持って、今後のMORE法の採決に臨んでもらいたいと願うばかりです。