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オーストラリア&NZヘンプ産業、ついに“本格エコシステム化”へ、成長のカギは「規制整合」と「加工能力」の一点突破

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成長の歩調がより揃う見通し

オーストラリアとニュージーランドの産業用ヘンプは、建築、繊維、食品などからの需要が明確になりつつあり、さらに規制の整合性や加工能力の拡大が求められる中で、より協調的な成長段階へ入りつつある。

今日発表された、オーストラリアヘンプ協議会(AHC)とニュージーランドヘンプ産業協会(NZHIA)による新レポートは、両国が産業発展の重要な局面にどのように向き合っているかを示している。

「このレポートは、地域にとって重要な転換点であることを裏付けています」と、前書きを執筆したニュージーランドの天然素材メーカー Rubisco のCEO、ガイ・ウィルズは述べた。

「世界の産業は高性能な天然素材を求めており、オーストララシアはその供給地として非常に良い位置にある」とウィルズは付け加えた。

🇦🇺需要は強いが、課題は規制の分断と加工能力

オーストラリアの調査回答によれば、産業は規模拡大の準備が整っているものの、規制の断片化と加工設備の不足がボトルネックになっている。

回答者の60%以上が、現在最も市場関心の高い分野として「ヘンプ建材」を挙げ、半数以上が今後3〜5年で“中程度の成長”を見込むとしている。最も喫緊のインフラ課題は、デコルティケーションと繊維加工(55.8%)で、その次が乾燥・保管設備。

「基盤は整っており、勢いもある。しかし、実質的な商業規模に到達するには“協調的な発展”が不可欠だ」とオーストラリアヘンプ協議会の事務局長、バーナード・トムソンは述べた。

ラ・トローブ大学の研究者たち(同大学は最近、モジュラー型ヘンプクリート技術の研究を発表)は、特に低炭素建材としてのヘンプクリートなどで「拡大への準備が整ってきている」と評価する。

「農onomy(栽培科学)や炭素吸収の利点はすでに確立されている。今後の優先事項は“基準の確立”と“全国的な整合性”であり、それによって地域製造を促進し、経済・環境の両面で利益をもたらす」と、ラ・トローブ大学 農業経済学上級講師エルネスト・バレンスエラ博士は述べる。

同大学ビジネススクールの経済学上級講師フリオ・マンキューソ・トラデンタ博士は「規模拡大には、政府・研究者・産業による“協調行動”が不可欠であり、基準、インフラ、統合サプライチェーンの整備が必要だ」と語った。

フルレポートはこちらから

🇳🇿高付加価値志向だが、規制の分断が足枷

ニュージーランドの調査では、「価値創出」に焦点が絞られた産業構造が浮かび上がる一方、規制の断片化が大きな障壁になっている。

回答者の約半数(46%)が「ライセンス取得の複雑さや遅延」を最大の規制リスクとし、3分の1以上(37%)が「製品分類の問題」を挙げた。この傾向は、長年議論されてきた“全草利用(whole-plant utilization)へのアクセス不整合”と一致している。

「繊維、建築システム、地域加工などで“願望から実務フェーズへ”確実に移行しつつある」とNZHIA代表リチャード・バージは述べる。

ただし、産業側は「政府の明確な方針」と「需要が証明されている市場」の両方を求めており、これらが投資拡大の加速要因になるとしている。

共通課題:規制の予測可能性・加工能力・製品規格の一貫性

両市場に共通する構造的課題は、

・予測可能な規制

・信頼できる加工能力

・一貫した製品スペック

が揃わない限り、スケール化が難しいという点だ。

初期の栽培データ、繊維品質テスト、市場テストは進んでおり、投資家が案件評価をするための材料は増えている。しかし、依然として“規制の不一致”が自信とタイムラインを最も損ねていると事業者は感じている。

「本格的な“産業エコシステム”の形が見えてきた」とウィルズは述べる。「規制が揃い、品質が安定し、適切な加工能力が整えば、この地域は天然繊維イノベーションの牽引役になれる。」

レポートのパートナー

『オーストラリア&ニュージーランド産業用ヘンプレポート』は、AHCとNZHIAが共同出版し、Rubiscoおよびニュージーランド農業大手 Carrfields、ラ・トローブ大学の Institute for Sustainable Agriculture and Food が主要スポンサーを務めた。

その他、カナダのKP-4専用ヘンプ刈取機の販売会社 Forever Green、食品事業を手掛ける Tasmania Hemp Co.、プレハブ型ヘンプクリート建材を展開する HempBlock International などがスポンサーとなり、欧州産業ヘンプ協会(EIHA)や国際ヘンプ建築協会などの国際機関も支援に参加した。

本レポートは HempToday によって制作された。

編集部あとがき

今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1.オーストラリアとニュージーランドは、建材・繊維・食品からの需要増とともに、規制整合性と加工能力の強化が必要な“転換点”を迎えている。

2.オーストラリアでは建材需要が強いが、規制の分断と加工インフラ不足が足かせとなっており、全国的な基準整備と協調行動が必須。

3.ニュージーランドは高付加価値志向で進んでいるが、ライセンスの複雑さと製品分類問題が投資拡大の障害となっている。

4.両国に共通する課題は、予測可能な規制・安定した加工能力・一貫性ある製品スペックであり、それらが整えば地域は天然繊維産業の世界的リーダーとなりうる。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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