北海道において、「ヘンプを次期基幹作物に」と活動を行っている、私ども北海道ヘンプ協会(HIHA)が、今年11月11日(水)~13日(金)に農水省主催の「アグリビジネス創出フェア」へ出展する事となりました。
今年は、オンラインでの開催となりましたので、皆さま是非ご参加ください。
この出展に際し、これまでの当協会の取り組みを、ここHTJでも振り返って御紹介いたします。
アグリビジネス創出フェア2020 WEBサイト
https://agribiz-fair.maff.go.jp/
大麻取締法の改正と道独自の振興条例の制定を
前回は、法改正によってわずか5年間で世界最大のヘンプ(産業用大麻)栽培国となったアメリカ、同じくヘンプ産業が急速に発展中の中国、韓国、タイの状況を紹介した。
前回記事はコチラ
海外のように、日本ではなぜヘンプ産業が発展しないのか。その一番の理由は大麻取締法と、その運用にある。
ヘンプ産業の健全な発展のため、時代に合った大麻取締法の改正と北海道産業用ヘンプ振興条例の制定が今こそ求められている。
●THC含有量の規制取り込んだ法改正を
大麻取締法違反による芸能人の逮捕が時折大きく報道され、公務員の大麻事犯も発生するなど、ここ数年、同法違反による逮捕者が増加している。
しかし元来、大麻取締法は大麻の栽培と所持を禁止する法律で、薬物としての大麻の使用を禁止するものではない。すなわち、大麻(大麻草の葉と花、およびこれらの加工品)の所持が違法で、吸飲自体は違反ではないという一般にはわかりにくい法律である。
また大麻取締法はマリファナ成分のTHCの有無に関わらず、全ての大麻草の栽培と所持を原則禁止としている。
しかし、この論理で考えるならば、毒キノコが危険だからと、キノコはすべて禁止とするだろうか?
一日も早く国際的に通用するTHC含有量による規制を取り込んだ法改正を求めたい(表1)。
なお、この法律が制定された1948年当時、2万戸を超える農家が約4000ヘクタールの麻畑で生計を立てていたので、栽培は知事認可の免許制となったが、実際は届け出制に近かかったという。従って大麻取締法は本来、麻農家を保護する法律でもあったが、現在はもっぱら薬物取り締りに適用され、農水省は大麻から撤退してしまった。農水省には、新たな農作物としてのヘンプの研究をぜひ再開してほしい。
表1 北海道ヘンプ協会が提案する大麻取締法の改正案 ※アンダーラインが新たな提案部分
第1条 この法律で「大麻」とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)、大麻草の種子及びその製品、産業用大麻及びその製品を除く。 |
2 この法律で「産業用大麻(産業用ヘンプ又は単にヘンプという。)」とは、THC(テトラヒドロカンナビノール)含有量が質量比で0.3%未満の大麻草をいう。 |
大麻取締法の制定経緯については以下の記事参照
“新たな目的”では認可しない法運用
大麻を栽培するには、知事発行の免許が必要になるが、新規の免許申請はまず認可されないという。この原因も大麻取締法とその運用にある。すなわち厚労省は大麻の栽培目的を「作物として出荷したり、伝統的な祭事に利用したり、栽培技術を代々継承したりするなどの何らかの社会的な有用性が認められるもの」あるいは「その栽培目的が伝統文化の継承や一般に使用されている生活必需品として生活に密着した必要不可欠な場合」に限定し、「種子や繊維を農作物として出荷」と農作物としての通常の栽培目的を認めているにもかかわらず、実際には「伝統文化の継承や生活に密着した必需品として必要不可欠な場合」のみが正当な目的とされ、新たな栽培目的では認可しないよう各県を指導している。
厚労省にすれば、大麻の乱用による保健衛生上の危害を防止する観点から、栽培を可能な限り禁止するのは当然であり、新たなヘンプ産業の振興などは所管外ということだろうか?
諸外国のように、新産業の育成という観点からの法改正と運用が強く求められる。
●作付面積は栃木中心に全国11ヘクタール、北海道内はゼロ
厚生省によれば2018年現在、栃木県を中心に栽培免許者は全国で35人、作付総面積は11.2ヘクタールである。北海道では、北見市の(有)香遊生活が2005年に栽培免許を取得し、翌2006年から“おがら(麻がら)”などの生産を目的として、7.3アールの畑で栽培を開始した。昨年、同社の舟山秀太郎社長が亡くなり、2018年をもって道内の栽培面積はゼロになった。
筆者は、2014年から3年間、東川町の農家と共に大麻研究者免許を取得し、栃木県農試育成の「とちぎしろ」の試験栽培を行った。生育は極めて旺盛で、北海道でも栽培が十分可能。1ヘクタール当たり約25トンもの高い乾物生産能力を示したが、開花期が9月中旬と遅く、登熟不良で採種量は栃木県の約20分の1の10アール当たり2.5キログラムにとどまり、食用の子実生産や採種には不向きだった。
●THCゼロ%品種の種子輸入にもブレーキ
「とちぎしろ」の採種が困難だったことから、フランスのヘンプイット社が開発したTHCゼロ%品種の輸入を目指すことにした。導入候補は早生で北海道でも種子生産可能、THCだけでなくCBDも少なく、THCの乱用や違法なCBDの抽出が無意味な品種「サンティカ27」である。
北海道では自家採種をせず、毎年フランスから種子を輸入すれば、野生大麻との交雑を回避でき、面倒な採種事業が不要となる。
ちなみに、北海道のてん菜栽培では、製糖会社がヨーロッパから毎年種子を輸入している。てん菜もヘンプも共に工芸作物だが、将来、てん菜の作付けが減少した場合、一部をヘンプに置き換えて畑輪作を維持する時代が来るかもしれない。
いずれにせよ、現行の貿易管理令・輸入公表には播種用ヘンプ種子の品目がなく、すべて食用か飼料用のため、熱処理などによって発芽不能処理をしたものしか輸入できない。貿易管理令を所管する経産省は法令の改訂に前向きとの情報もあるが、道庁によれば、厚労省の見解は、たとえ研究用であっても種子の輸入は困難とのこと。ここでも厚労省がヘンプ種子の輸入を阻むブレーキとなっている。
THCゼロ%品種「サンティカ27」
●道議会や連絡会議で可能性の検討は続く
2013年に道が設置した「北海道産業用大麻可能性検討会(座長=松井博和北大名誉教授」は、6年間にわたる検討の結果、ヘンプの農作物としての可能性を認めたものの、厚労省が定める栽培禁止の適用除外の条件をクリアできるか整理が必要とし、事実上、大麻取締法の圧力によって昨年3月をもって検討会を終了した。
一方、道議会では2014年6月に超党派の議員による道議会産業用ヘンプ推進研究会(会長=加藤礼一議長・当時)が設立され、現在も藤沢澄雄会長を中心に約半数の道議が研究会に参加している。2017年12月には、同研究会が中心となって、国会と内閣に対する「産業用大麻の産業化に向けた必要な環境整備を求める意見書」を道議会に提案、決議するなど、全国的にも例を見ない活動を行っている。
昨年6月には可能性検討会の後継として、北海道産業用ヘンプ連絡会議が設立され、議長には可能性検討会座長の松井先生が、運営委員長には道議会研究会の藤沢会長が就任した。なお事務局は当協会が担うことになった。
図1 北海道産業用ヘンプ振興条例の位置付け
法改正と条例改正求め署名活動をスタート
当協会は昨年10月のASACON2019を契機に、大麻取締法の改正と北海道ヘンプ産業振興条例の制定を求める署名活動を開始した。
2017年3月に改訂された「北海道大麻取扱指導方針」では、大麻栽培者の免許認可の判断基準に、申請者の居住する地方公共団体の取組みに大麻の栽培が位置付けられていること、免許申請時にはそれを証する書類を添付することが必須となったが、この意味は大変大きい。例えば、北海道産業用ヘンプ振興条例をモデルとして各市町村がそれぞれ独自にヘンプ条例を制定し、種子を確保さえすれば、道としては免許を交付せざるを得ないからだ(図1)。
①大麻取締法の改正
②安全なヘンプ種子の輸入
③北海道産業用ヘンプ振興条例の制定
これら3つの運動が相まって初めて全道でヘンプ栽培が可能となり、それを原料とする国内ヘンプ産業が発展するに違いない。
当協会は、これら3つの運動を同時進行で展開し、産業用ヘンプの栽培を早期に実現したい。
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