カリフォルニア州知事が大麻のブランディングに寄与
カリフォルニア州のギャバン・ニューサム知事は、「SB67 / 大麻テロワール・システム」と呼ばれる法案に署名しました。
この法律は、これまで50年以上に渡って非合法ながら栽培を続け、国際的に評価を積み上げてきたカリフォルニア産の大麻に、行政として正式に「地域ブランド」としての合法的な地位を与える事になります。
このテロワールという制度は、元々フランス産のワインに使われているシステムで、製品の産地を明確にすることによって、それぞれのワインの生産地域特有の風味を定義することによって消費者を保護すると共に、製品に地域の独自性を付与し、ブランドを確立することによって生産者にも保護を与える制度です。
こうした制度は、例えば、仮に同じ品種のブドウを使用していても、ブルゴーニュ地方以外の地域で生産されたワインに対しブルゴーニュ・ワインという呼称を使用する事を禁止する事で、同地域のワイン産業を保護し、同時にそれがブランディングとしても機能しています。
今回の立法は、長年に渡ってアンダーグラウンドでそのブランドを確立してきた北カリフォルニア産の大麻に、行政がお墨付きを与える事になります。
この法案は、フンボルト郡栽培者連盟(HCGA)を始め、複数の地元の生産者団体の支持を受けて、マイク・マグワイア州上院議員をはじめとする議員グループによって提出されたもので、特定地域で生産され、かつ一定の基準を満たした大麻にのみ、ブランドとして生産地の名称の使用を認めるものとなっています。
このプログラムは地元の意見を取り入れて市場を整え、製品にローカル・ブランドという付加価値を与える小規模農家のための仕組み作りに役立つと同時に、単価を引き上げる事によって、今現在もブラックマーケット向けに栽培を続ける生産者たちに、合法市場への参加を促す狙いもあるようです。
特産品としての付加価値
今後数年間で合法的な大麻市場が州をまたいで拡大する事が予想されており、フンボルトやメンドシーノなど「エメラルド・トライアングル」と呼ばれる、歴史のある有名産地で栽培された大麻がブランドとしての価値を持つようになるのは必然と言えるでしょう。
こうした取り組みが、ブランド力として地域経済に力を与え、ひいては今後この産業を引き継いでいく世代へのセーフティーネットとして機能する、未来へのレガシーとなっていくのです。
気候、環境、土壌、地域、文化、農業、慣習などが絡み合い、そこから生産される製品に特定の品質を付与する事に結びついているという事実を行政が認め、これまで「取り締まる側」と「取り締まられる側」として敵対してきた当局と生産者が、手に手をとって地域経済の発展や生産者の生活向上にむけて取り組む姿勢に、民主主義の成熟した姿を見ると共に、カルチャーへの敬意を感じます。
カリフォルニアの大麻は今、新潟の米や愛媛のみかん、シャンパーニュのシャンパンやイタリアのゴルゴンゾーラなどといった地位を確立しようとしています。