昨年には、てんかん患者の家族会や学会など4団体が連名で厚生労働大臣に対して医薬品として承認するよう要望書を提出しています。 エピディオレックスは、米国では食品医薬品局(FDA)によって薬品として承認され、てんかん患者に使用されていますが、ヨーロッパでは事情が違うようです。 ヨーロッパでは、この薬の承認にあたり条件が付き、抗てんかん薬クロバザムとの併用が求められます。 しかし、抗てんかん薬は色々と副作用も多いため、エピディオレックス単体で効果が認められるならば、それで済ませた方が良い事は明らかです。 そして、そうした患者本意の判断を後押しする研究が発表されました。この研究が、今後日本での承認プロセスにおいて、ヨーロッパと同じ轍を踏まないために役立つ事を願います。 海外のてんかんに関する情報サイトであるドラべ・シンドローム・ニュースが、CBDが抗てんかん薬クロバザムの併用なしでも、単独で発作を抑える力がある可能性を伝える論文を分かりやすく紹介しているので、以下に邦訳してお伝えします。
「カンナビジオールの有効性とクロバザムのステータス:系統的レビューとメタ分析」
というレビュー研究が、てんかん専門学術誌Epilepsiaに掲載されました。
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このレビューによると、Epidiolex(カンナビジオール / CBDの経口剤)による治療は、抗発作薬クロバザムとの併用に関係なく、単独でもドラベ症候群およびレノックス・ガストー症候群(LGS)を持つ患者の発作の頻度を効果的に低下させるという事がわかりました。
CDBが独自の抗てんかん特性を持っている可能性があることを示唆するこの発見は、「CBDの利点は、体内でのクロバザムの効能を高めるという能力にのみ起因する」としている現在の理論と矛盾しています。
しかし、逆にクロバザムがCBDの抗てんかん効果を高めるかどうか、またどの程度高めるかを明らかにするためには、さらなる研究が必要であると研究者らは述べています。
大麻草の主要な非精神活性カンナビノイドであるCBDは、抗けいれん、抗炎症、抗酸化、神経保護、および免疫調節特性を持っていることが示唆されています。
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GW Pharmaceuticals社が製造するCBD精製経口剤であるEpidiolexは、米国で承認された最初の大麻ベースの医薬品であり、さらに最近では、ヨーロッパでDravet症候群およびLGSに関連する発作の治療に使用されています(2歳以上の患者に限る)。
米国での独立した治療適応とは異なり、エピディオレックスのヨーロッパでの承認は、クロバザムとの併用にのみ限定されていました。
この制限はエピディオレックス単体での発作防止効果に関する議論が元となっています。なぜなら、エピディオレックスの試験の参加者の50%~60%がクロバザムを同時に使用しており、エピディオレックスはクロバザムの有効成分の血中濃度を上昇させることがわかったためです。
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しかし、非対称のオープンラベル研究では、エピディオレックスがクロバザムの使用に関係なく発作頻度を低下させることが示唆されました。
他の研究でも、CBDとクロバザムの間に双方向の相互作用と効果が存在し、CBDがその治療に有効な用量で投与された場合にのみ、それらの組み合わせが単独で使用するよりも優れた抗けいれん効果をもたらすことが強調されています。
したがって、これらの相互作用の臨床的意味は殆ど不明のままです。CBDをクロバザムと組み合わせるとCBDの安全性プロファイルに影響があり、主に傾眠、鎮静、肺炎などの有害事象の頻度が増加することが示されており、さらなる評価が必要です。
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現在、イタリア、オーストリア、スイスの研究者たちは、ランダム化プラセボ対照試験からの公開データを体系的にレビューすることにより、ドラベ症候群およびLGS患者におけるCBDの有効性に対するクロバザムの同時投与の影響を評価することに着手しました。
このメタ分析には、714名の参加者(CBDが429名、プラセボが285名)を対象とした4つの施設での第3相試験が含まれていました。患者の平均年齢は約9歳から15歳で、エピディオレックスは1日2回、1日の合計用量が10または20 mg / kgで投与されました。
参加者達は、試験以前に中央値4~6の抗てんかん薬(範囲、0~28)を投与されており、登録時には中央値4(範囲、0~5)の投薬を受けていましたが、このうち最も多かったものはクロバザムとバルプロ酸ナトリウムで、この試験でのエピディオレックス(55.9%)およびプラセボ(55.4%)の両グループの患者の半数以上もクロバザムの投薬を受けていました。
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結果は、エピディオレックスで治療された患者の有意に高い割合が、プラセボの患者と比較して、発作頻度の少なくとも50%の低下を達成したことを示しました。これは、クロバザムを使用していない患者(プラセボ群の29.1%対15.7%)と、クロバザムを併用している患者(52.9%対27.8%)の両方に当てはまりました。
特に、クロバザムによる治療を受けていない患者は、より低い奏効率を示しました(エピディオレックスとプラセボの両方)。チームは、これらの患者はクロバザムを含む多くの抗けいれん薬に失敗し、登録時のけいれん頻度が高かったため、治療が特に難しい可能性があると指摘しました。
チームは結論として、「この分析は、CBDがクロバザムの投与に関係なく、独立した発作防止作用と有効性を有していることを示唆しており、現在の(ヨーロッパでの)処方制限を支持できません。」と記しています。
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ただし、これらの試験にはいくつかの制限があり、治療法の判断を導くのに役立つ可能性がある、CBDとクロバザムの相互作用の影響を明確にするために大規模で適切な研究が必要であることを強調しています。
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