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緊急開催!今注目の【大藪裁判】徹底解説

【全4回】オリンピックと医療用大麻(3)最も基準がゆるいスポーツ大会は?

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目次

ドーピング検査は、尿中のTHC代謝物で計ります

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国際オリンピック委員会 (IOC)が採用しているWADA(世界アンチ・ドーピング機関)の規程では、ドーピング検査でマリファナ(THC)の陽性反応と見なされるのは、尿中1ミリリットル当たり150ナノグラム(150ng/ml)以上のカットオフ値(陽性と陰性を区別する基準値)となっています。

 

正確には、活性物質のTHCではなくて、THC-COOH(THCカルボン酸体)という代謝物で検出されます。

 

医療用大麻(ハーブ)の喫煙によって摂取したTHCは80~90%が代謝物となって、5日以内に排出されます。65%以上が大便中に排出され、35%が尿中に排出されます。

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例えば、医療用大麻の喫煙でTHC27mgを摂取すると、THCから代謝されてTHC-COOHになったものは、4時間後に尿中180ng/mlのピークとなります。

 

その後、徐々に尿中THC-COOHの値は下がっていきますが、THCは脂溶性なので、脂肪に蓄積しやすいという性質をもちます。

 

そのため、THC代謝物が完全に体内から消失するには、ライト・ユーザーで、平均12.9日(3〜29日)、ヘビーユーザーで平均31.5日(4〜77日)という報告があります

 

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THC27mgを喫煙で摂取したときの尿中に排出されたTHC、11-OH-THC、THC-COOHの値(※1)。
縦軸:μg/L=ng/mlに変換できます。横軸:喫煙後の時間(1時間単位)

 

ところで、WADAの150ngのカットオフ値は、他のメジャーなスポーツ大会の基準値と比較してどうなのでしょうか?

 

以下、医療用大麻が33州、嗜好用大麻が11州で合法化され、スポーツ大国でもある米国での事例をみてみましょう。

NFL(アメリカンフットボール)ナショナル・フットボール・リーグ

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アメフトは、痛みを伴い、しばしば衰弱させるほどの怪我をする事もある競技です。現役または引退した選手にとって、痛み止めのための医療用麻薬(オピオイド系)と抗炎症剤の使用は一般的です。

 

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NFL団体交渉協定(選手組合と管理協議会の間の協定)では、1987年にTHCのカットオフ値が15ng/mlに定められましたが、2014年には35ng/mlに緩和しました。現在の協定は、2020年に失効しますので、医療用大麻を利用する選手の声を踏まえた変更の可能性があると言われています。※2

MLB(ベースボール)メジャーリーグベースボール

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MLBは、2002年に選手組合と管理協議会の間の共同薬物協定を締結して以来、マリファナの使用に対して寛大です。

 

メジャーリーガーたちへの薬物政策の焦点は、マリファナではなく、パフォーマンスを向上させる薬物にあります。協定上は、カットオフ値は50ng/mLに定められています(※3)。最新情報によると、2020年以降は、マリファナは、ドーピング検査の項目から削除されることが発表されています。

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50ng/mlという値は、米国で1988年の無薬物職場法で定められ、一般的な雇用時の薬物検査において、陽性と見なされる値と同じで、連邦政府の職員や米軍人などに課せられる薬物スクリーニング検査と同じカットオフ値です。※4

 

MLBの最新関連記事はコチラ:公式発表間近!?メジャーリーグが大麻検査を全て破棄か

NBA(バスケットボール)ナショナル・バスケットボール・アソシエーション

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NBAは、1999年にマリファナ(THC)を禁止物質にしています。選手は1年を通してランダムに4回テストされ、15ng/mlのTHCのカットオフ値を超えてはなりません。

 

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選手がマリファナの検査で陽性の場合、治療とその後の検査を遵守しなければなりません。2回目の違反により、25,000ドルの罰金が科せられます。他のメジャー・スポーツと比較すると厳しめです。※5

NHL(アイスホッケー)ナショナル・ホッケー・リーグ

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アイスホッケーは、氷上の格闘技と呼ばれるぐらいフルコンタクトが魅力的なスポーツです。NFLと同様に、チームの医師は、鎮痛剤や他の薬を処方することで選手をケアしています。NHLの31チームのうち7チームの本拠地であるカナダは2018年10月に嗜好用大麻を合法化しています。

 

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1996年のNHL / NHLPAプログラムでマリファナは薬物検査の対象となっていますが、テスト結果は非公開で、マリファナの検査結果が陽性の場合、NHL薬物検査プログラムを管理する医師にのみ明らかにされ、医師は選手に直接連絡するだけです。その後の医師と選手の対応(教育および治療)に対して、選手のプライバシーが保護されており、特に罰則規定もありません。※6

NCAA(全米大学体育協会)

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NCAAは、1,200以上の大学が参加し、競技に関わる選手の数は36万人も在籍する世界最大の学生スポーツを統括する協会です。ここでの薬物検査におけるマリファナ(THC)のカットオフ値は、1986年から2013年まで15ng/ml、2014年に15ng/mlから5ng/mlに厳しくなり、2017年に15ng/mlに戻され、さらに2019年に35ng/mlになりました。※7

 

直近の15ngから35ngへの変更は、マリファナの受動喫煙問題がありました。過去の研究によると、マリファナの受動喫煙は、13~20ng/mlでした(※8)。

 

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近年、THC濃度が高いマリファナが米国で流通していることを考慮し、受動喫煙で吸入した人がテストで陽性反応を引き起こし、不条理な罰則を受けるのを防ぐために緩和しました。

結論:オリンピックのカットオフ値が最も緩い

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これまでのデータをまとめると次のようになりました。

 

最も厳しいスポーツは、NBA(バスケットボール)の15ng/mlであり、NFL(アメリカンフットボール)、NACC(全米大学体育協会)が35ng/mlで、この値の間に、マリファナの受動喫煙やカンナビノイド医薬品で多発性硬化症などの痛み止め改善薬のサティベックスの使用患者の値が入りました。

 

無薬物職場法(連邦職員、関連企業)や、米軍人とMLB(ベースボール)が同じ値50ng/mlで、オリンピックや他の国際スポーツ大会が採用するWADA基準値が最も緩い150ng/mlでした。参考までに、カットオフ値がゼロなものは、各州で定められている自動車運転の薬物違反基準でした(※9)。

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図:米国のメジャー・スポーツのドーピング検査時のTHCカットオフ値(2019年現在)

肉体と精神を鍛えて闘うスポーツの世界で最も緩いカットオフ値は、国際オリンピックや陸上、水泳などの各種の国際大会で採用されているWADA(世界アンチ・ドーピング機関)の規程でした。

 

競技種目の違いやプロとアマチュアの違いがあるかもしれませんが、ドーピング検査基準は、マリファナ(THC)だけに焦点をあてれば、当面は、すべてのスポーツをWADA基準で統一することがよいと思われます。

WADA基準、カフェイン、アルコール削除、ニコチン追加、その次は?

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さらにいうと、将来的には、大会競技前24時間以内のドーピング検査で、WADA禁止物質リストからカンナビノイド(THC)については削除してよいかと思います。

 

実は、特定の競技で禁止物質リストにあったアルコールの前例があります。アルコールは、科学的に抑制剤と位置づけられており、WADA禁止物質リストの3つの基準を満たさないために、2018年にひっそりと削除されました(※10)。

 

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ちなみに、コーヒーやお茶に含まれるカフェインは、興奮剤に位置づけられていましたが、2004年に禁止物質リストから削除されました。

 

逆にタバコのニコチンは、科学的に興奮剤に位置づけられており、もともと禁止物質リストにはなかったのですが、2012年から監視プログラム対象物質に追加となっています。

 

後藤大輔
このようにWADAは、科学的証拠に基づいた議論を経て、その都度、判断を下しているといえます。

 

そのように考えると、医療用大麻および嗜好用大麻を合法化する地域が増えていくと、WADA禁止物質リストからTHCが削除される日が来るかもしれません。

 

この記事を通じて、医療用大麻やオリンピックのドーピング検査基準について少しでも関心をもっていただきたいと思います。

 

さて、次回はオリンピックと医療大麻特集の最終回です。最終回のテーマは「スポーツ用大麻の開拓」をレポートしたいと思います。

 

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合わせて読む?:アスリートが続々とCBD支持を表明・東京オリンピックに向けての課題も?

 

以下、参考:

※1(THC-COOHの値) Grotenhermen F. Pharmacokinetics and pharmacodynamics of cannabinoids. Clin Pharmacokinet 42: 327-360

※2(NFL団体交渉協定) NATIONAL FOOTBALL LEAGUE POLICY AND PROGRAM ON SUBSTANCES OF ABUSE 2016:https://nflpaweb.blob.core.windows.net/media/Default/PDFs/Agents/2016SOAPolicy_v2.pdf,https://bleacherreport.com/articles/2219286-new-nfldrug-policies-to-be-a-major-improvement 

※3(MLB薬物政策):http://mlbplayers.mlb.com/pa/pdf/jda.pdf 

※4 薬物を使用しない職場プログラム:https://www.samhsa.gov/workplace 

※5(NBA CBA101):https://official.nba.com/wp-content/uploads/sites/4/2017/12/2017-18-CBA-101-December-2017.pdf 

※6(NHLの罰則):https://thenationalmarijuananews.com/what-is-nhls-drug-policy-marijuana/ 

※7(NCAAカットオフ値):http://www.ncaa.org/about/resources/media-center/news/ncaa-increases-thc-testing-threshold 

※8 Cannabinoids in Blood and Urine after Passive Inhalation of Cannabis Smoke:https://www.astm.org/DIGITAL_LIBRARY/JOURNALS/FORENSIC/PAGES/JFS11041J.htm

※9 州公道安全協会 マリファナの薬物障害運転法:https://www.ghsa.org/state-laws/issues/drug%20impaired%20driving 

10 アルコールはWADAによって2018年の禁止物質リストから削除されました:https://www.insidethegames.biz/articles/1056008/alcohol-removed-from-list-of-prohibited-substances-for-2018-by-wada 

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AUTHORこの記事をかいた人

日本臨床カンナビノイド学会員。北海道ヘンプ協会(HIHA) 法人会員。

美容クリニックで専門医監修の下、CBDオイルを利用したアトピー性皮膚炎の治療を開始。1年間の観察結果からアレルギー数値と、症状の改善がきっかけで大麻の可能性を一人でも多くの方々に知ってもらいたいと思い立ち、編集局員として参加。

「HEMP TODAY JAPAN」を通じて、「世界の大麻産業」の真実を知ってもらう必要があると考えております。

そして、大麻へのマイナスイメージを払拭がされ、医療分野、産業分野問わず、大麻由来製品を誰でも簡単に低コストで利用できる環境を望んでいます。

2017年6月~青山エルクリニックモニター参加。
2018年5月「Hemp Food, Health & Beauty Summit」(HTセンター/ポーランド)。
2018年8月「中国 黒龍江省ヘンプ産業視察ツアー2018」参加。

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