フロリダ州知事「合成嗜好用大麻はOK」嗜好用はダメ
フロリダ州では、ロン・デサンティス知事が合成嗜好用大麻製品群を禁止する法律案を否決したため、これらの製品は引き続き市場に残ることとなります。
デサンティス知事は、デルタ-8 THC、デルタ-10 THC、HHC、THCP、THCVといった合成の「ハイ」を生み出す化合物を含む経口摂取や吸入製品を具体的に禁止することを盛り込んだ上院法案1698(SB 1698)に拒否権を行使しました。
これらの製品はアメリカ全土で広く流通しているグミなどのスイーツに含まれています。
フロリダ州では一部の制約のもとでこれらの製品が合法のままですが、これは州の合法的な医療用大麻セクターに対する競争となり、また、この11月に行われる大麻合法化を問う住民投票が通過した場合に認可される可能性のある嗜好用大麻販売会社にとっても将来的な競争相手となり得ます。
専門家たちは、嗜好用大麻に対して強硬な姿勢を取るデサンティス知事が、ヘンプ製品を支持するロビイストたちと取引をしたと指摘しています。
知事がこの措置に拒否権を行使したのは、大麻合法化の取り組みを阻止するための資金援助を受ける見返りだとされています。これにより、彼はヘンプ由来の向精神性を持つ合成嗜好用大麻製品群を支持しながら、一方で嗜好用大麻合法化には反対するという異例の立場に立つこととなっています。
フロリダ・ヘルシー・オルタナティブ・アソシエーション(フロリダ州のヘンプ業界団体)は、今年の最初の3ヶ月間にロビイストに15万5千ドル(約2,200万円)を支払ったと報じられています。この団体の主要なロビイストの一人は、フロリダ州共和党の議長であるエヴァン・パワー氏です。
嗜好用大麻事業者 対 ヘンプ(合成嗜好用大麻製品群)事業者
嗜好用大麻がすでに合法化されている州では、大麻業界の関係者が合成嗜好用大麻製品群に反対してきました。これらの製品がライセンス料や規制の対象外であるため、不公平な競争を引き起こしていると主張しています。
デサンティス知事が拒否権を行使した法案は、昨年知事が署名した法律を超えて、これらの合成嗜好用大麻製品群を完全に禁止することを目指していました。
現在施行されているその法律(上院法案1676 – SB 1676)は、製品の販売を許可する一方で、子供へのマーケティングを禁止し、販売年齢を21歳以上に制限し、包装に関する要件を設けています。
デサンティス知事が否決した法律を起草したフロリダ州の議員たちは、過剰摂取のリスクを排除することを意図しており、これらの製品は「ダイエットウィード」、「ガソリンスタンドポット」、「マリファナライト」などと呼ばれています。
2024年の立法会期に先立つ委員会の会議では、これらの製品を摂取した子供たちが病院に搬送されるケースが報告されました。
合成嗜好用大麻製品群は合法だが管理・販売は慎重に
デサンティス知事は、これらの製品に関する懸念を踏まえ、州務長官のコーデ・バード宛に送った拒否権行使の手紙の中で、次回の立法会期では、現在の法律を強化するための措置を提案しました。
具体的には、製品をカウンターの後ろに保管し、販売店を学校や宗教施設、子供たちが集まる場所から離れた場所に配置することを求めています。
「包装は通常で子供に安全なものであるべきであり、未成年者にとって魅力的に見えるような広告はすべて禁止されるべきです」と知事は書簡で提案しました。
さらに、カンナビノイドの含有量、成分の由来に関する情報、および投与指示を含む、より詳細なラベル表示も要求しました。
デサンティス知事は、フロリダ州議会がヘンプの栽培、加工、および取り扱いに関する基準を設定し、「ヘンプおよびヘンプ由来製品の純度、効力、安全性を確保する」べきだと述べ、ランダムな抜き打ち検査、標準化された反復テスト、用量、包装、ユニット購入の上限を設けることを提案しました。
「合理的で恣意的でない規制は、事業者と消費者の両方に必要な安定性を提供し、公衆衛生と安全を守り、正当な産業が繁栄し、悪質な業者を市場から排除することを可能にします」とデサンティス知事は付け加えました。
フロリダでも1,000件以上の合成製品被害者
アメリカ全土の州では、酩酊作用をもたらす合成嗜好用大麻製品群を取り締まるための動きが進んでいます。一部の州では、これらの製品を全面的に禁止し、他の州では厳しい規則を課しています。多くの製品の製造業者や販売業者は、製品の安全性に関して米国食品医薬品局(FDA)から警告を受けています。
FDAは、消費者から深刻な副作用の報告を受けており、バージニア州では少なくとも1人の子供が、ヘンプ由来の合成化合物であるデルタ-8 THCを誤って摂取したことが原因で死亡したとされています。デルタ-8 THCは、ヘンプから作られた合成化合物の中で最も人気のあるものです。
フロリダ州の農業当局によれば、2022年には、ヘンプから作られた高濃度THC製品に子供が曝露された後、フロリダ州のドラッグ情報センターに約1,000件の通報があったとされています。
フロリダ州農業消費者サービス局(FDACS)は、2023年7月1日以降、子供を対象にしたヘンプ抽出物製品107,400以上のパッケージを発見したと報告しています。
これは、デサンティス知事がこのようなマーケティング手法を禁止する法律に署名した後、FDACSが州全体で展開した検査活動「Operation Kandy Krush」で明らかにされたものです。
2,800億円規模のCBD市場を壊滅させるのか
問題となっている酩酊作用をもたらす合成嗜好用大麻製品群のほとんどは、ヘンプ由来のCBDを合成処理して作られたものであり、非常に濃縮された精神活性物質を生成します。
これらの物質は、大麻に含まれる一般的な精神活性成分であるデルタ-9 THCと同様の効果をもたらします。これらの物質を含む製品は、2018年の農業法案が工業用ヘンプおよびその下流製品を全米で合法化した後に登場しました。
連邦法には、ヘンプの花から作られる合成された精神活性製品について考慮されていない抜け穴がありました。
利害関係者は、デサンティス知事が拒否した法案が、フロリダ州で一般に販売されているCBD抽出物市場18億ドルも壊滅させてしまうと述べています。この法案では、これらの製品に自然に含まれる微量のTHCに対して非常に厳しい制限を提案していました。
しかし、その市場規模は、規制されていないヘンプ由来の合成嗜好用大麻製品群市場の売上と比べると小さく、業界の利害関係者は、この市場が100億ドルを超えると主張しています。さらに、このセクターは10万人以上のフロリダ州民に雇用を提供しているとされています。
一方、フォートローダーデールに拠点を置く会社は、2023年に施行されたこれらの化合物に対する制限を課す法律に対して、州がヘンプ製品の規制で権限を超えたと主張して訴訟を提起しています。
編集部あとがき
かたくなに嗜好用大麻の合法化の承認から距離を起きたがっているフロリダ州。合成嗜好用大麻製品群をヘンプ事業者達からの指示の元、許認しようとしているフロリダ州知事の今後の手腕が試されます。
さすがに全米2位のCBD市場を壊滅にはさせないと思いますが、今後の合成嗜好用大麻製品群の規制の内容次第では、フルスペクトラム製品が市場から消えるということも多いに考えられます。
一体何を止めて、何を伸ばしていきたいのか。
今回の記事を以下の4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. デサンティス知事の立場と行動:
デサンティス知事は、酩酊性を持つ合成嗜好用大麻製品群に対しては一定の規制を提案しつつも、全面的な禁止には反対しています。彼は、これらの製品がフロリダ州の既存の医療用大麻産業と競合することを認識しつつ、業界の支持を得るためにヘンプ製品を支持する姿勢を示しています。
2. 子供たちの安全への懸念:
フロリダ州の法案には、子供たちがこれらの製品にアクセスできないようにするための厳格な規制を求める内容が含まれています。デサンティス知事は、販売場所や広告の制限、包装の安全基準の強化を提案しており、これらは特に子供たちの健康と安全を守ることを目的としています。
3. 国家的な問題:
酩酊性を持つ合成嗜好用大麻製品群は、全米で規制の対象となっており、いくつかの州では全面的に禁止され、他の州では厳しい規制が課されています。FDAからは、これらの製品の安全性に関する警告が発せられており、特に子供たちにとって危険な可能性があることが強調されています。
4. フロリダ州の市場への影響:
ヘンプ製品に対する規制は、フロリダ州のCBD市場に大きな影響を与える可能性があります。デサンティス知事が拒否権を行使した法案が可決されていれば、フロリダ州のCBD市場全体が消滅する可能性がありましたが、その一方で、規制が緩やかになれば、州全体でこの分野がさらに成長する余地が残されています。