FIHO（国際ヘンプ機構連盟）が一時停止を提唱
国際ヘンプ機構連盟（FIHO）は、遺伝子組み換えされたヘンプと医療用嗜好用大麻の品種がさまざまな潜在的な問題を引き起こす可能性があると警告し、そのような品種の野外での栽培に対する一時的な停止を求めています。
FIHOは、米国農務省（USDA）が今年初めて遺伝子組み換えヘンプ品種を承認した後に警告を発することになったと述べました。
米国農務省の動植物保健検査局は、10月に新しい品種の承認を発表しました。
米国農務省は、THCの超低濃度を生産するために開発された新しいヘンプ品種が他のヘンプ品種と比較して害虫リスクが増加する可能性が低いとし、したがって米国で安全に増殖および栽培できると述べました。
世界中にばら撒かれる前に止めたい
しかし、FIHOは、ラボで遺伝子操作された新しいヘンプ品種に関連する潜在的な問題のリストを発表し、ヘンプ食品およびヘンプ繊維生産業者が輸入と輸出の両方に依存していることを踏まえ、「世界市場を不安定化させるリスク」に警告しました。
「他の作物と同様に、GE/GM（遺伝子組み換え）ヘンプには確認されているリスクと未確認のリスクと懸念があります」と、連盟は述べています。
「これらのリスクを特定し、比較し、意図された利益に対処し、商業的な栽培と使用を検討する前に、対処することが重要です。」と、続けて述べています。
一部の国々では、遺伝子組み換え作物や遺伝子組み換え食品を厳しく規制するか、完全に禁止しています。
しかし、世界的には、どのような作物が遺伝子組み換えあり、それらを含む食品が何であるかについてのコンセンサスがなく、自国の基準に基づいて用語を定義するため、遺伝子組み換え作物の国際貿易へのリスクが示唆されています。
FIHOは、この問題を世界中の国家規制当局が対処すべきだと述べました。
良性・悪性・遺伝子組み換えの良し悪し
「遺伝子工学」とは、自然界には存在しない技術を使用して生物の遺伝子構造を変更するプロセスを指します。
これには、遺伝子組換えDNA技術などの技術が含まれます。これにより、科学者は他の生物から遺伝子を挿入することができます。
「遺伝子組換え」とは、組み換えであれ、その他の方法であれ、遺伝子構造が変更された任意の生物を含むより広い幅広い用語です。
これには、遺伝子組み換えやその他の方法を通じて遺伝子構造が変更された生物が含まれます。これには、選択的な品種改良、育種などのような従来の技術を通じて改変された生物も含まれます。
FIHOは、「このような遺伝的変異が、収量の増加、害虫および病気への耐性、耐乾燥性、栄養価の向上、および除草剤の使用量の削減をもたらす可能性があるが、産業用ヘンプの場合は、さらに考慮すべき点がかなり多い」と述べています。
必見、9項目ある懸念事項リスト
環境への影響、規制と貿易問題、健康、社会、経済に関する懸念の中で、連合は特に以下の点に警告しました。
- 遺伝子組み換えヘンプと通常のヘンプ品種との交雑により、他の大麻作物に意図しない特性が導入される可能性があります。
- 遺伝子組み換え種子の特許取得は、種子の所有権とアクセスに関する議論を引き起こす可能性があります。
- 大規模な遺伝子組み換えヘンプの栽培は、ヘンプ種の遺伝的多様性を減少させ、伝統的な品種を取って代わり、単一栽培を促進し、ヘンプを害虫や病気により脆弱にします。
- 害虫や病気が遺伝子組み換えされた作物に耐性を持つようになると、追加の農薬や害虫制御の代替手段の使用が必要になる可能性があります。
- 変更されたヘンプ植物が地元の生態系に影響を与え、ヘンプを食料源とする有益な生物（受粉者や害虫の天敵など）に誤って害をもたらす可能性があります。
- 遺伝子組み換えヘンプ植物は、栄養循環に影響を与え、土壌の健康に悪影響を与える可能性があります。これは農業の持続可能性にとって重要です。
- 遺伝子組み換えヘンプに新しい遺伝子やタンパク質を導入することで、一部の個人に食品製品への免疫関連のアレルギー反応や非アレルギー反応が引き起こされる可能性があります。
- 遺伝子組み換えヘンプ品種の採用は、ヘンプ農家が特定の種子や技術を購入する必要性をもたらし、経済的な課題を引き起こす可能性があります。一部の管轄区域では、遺伝子組み換えの規則により、農家が将来の生産のために自らの種子を栽培することができなくなります
- 遺伝子組み換えヘンプの導入は、伝統的な農業生産慣行が一般的な開発途上国において経済的格差を悪化させる可能性があります。
編集部あとがき
THC超低濃度品種は世界のヘンプ農家に向けて福音と思えた昨年1月の記事「THC含有量が極めて低い品種への遺伝子操作が成功、アメリカ農務省（USDA）が承認」でしたが、それが一変しそうな状況です。今回の記事では、一見すると、種のトレーサビリティでどうにかなる問題なのかどうか、という点にフォーカスされがちですが、大きな問題としては、今後、世界的にヘンプフィールドが拡大していくにあたって生じていく「食物連鎖の起点」そして、「経済的格差」にまで問題は発展していく。という点です。
栄養価が高い健康食品としての「ヘンプシード（とその派生食品）」、しかし、そのヘンプシードの遺伝子はどうなのか？それを食した生物達はどうなってしまうのか？育ってきた土はどうなってしまうのか？
遺伝子を組み替えられて育てられたヘンプの種や派生された部位を摂取した生き物たちにも「何か」が起きてしまうということです。農務省の想像を超えるリスクがそこには孕んでいるかもしれない。と。
産業化に重きをおきすぎて、「自然に不自然を混ぜて、自然のように見せる不自然な農作物」。それらを無意識のうちに、多くの生き物が衣食住にまとっていく。という未来を危惧しています。
「今ならまだ止められる」。ただ、それを誰がどう止めるのか？これまでの人類の歴史をみていくと、その答えはすでに出ているようにも思えます。
これはヘンプに限らずでもあるのですが、世界的に見て研究量が少ないヘンプにおける問題なので、ネガティブに見ていくと、私たちからの時代に生きる生物達が、「壮大な実験台」になりうるという話です。
これは、当然のことながらカンナビノイドから派生していく医薬品も該当します。
さて、いよいよ世界的にヘンプフィールドが拡大していく未来を、私たち日本人でもうっすら感じ始めてきた昨今ですが、ヘンプに限らず、自分の身は自分で守る。という未来は、今よりももっともっと如実に現れてくるように感じます。
日本でのヘンプ原料や製品は、輸入に頼る時期がこれからもまだ続くと思いますが、これからは、それら製品のトレーサビリティだけではなく、もっと重要な視点として、それらの原料を生産している生産者の「思想」まで深く掘り公開をする必要や義務が出てきそうです。「その生産者は、資本主義派なのか、はたまた持続可能派なのか？」、この問いかけにズキっと胸が痛んだ方、引き返すなら、今かもしれません。
