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【第1部レポート】「法律より先手先手、規制から活用へ」の答えが三重大学大麻研究所に。

目次

70年分の空白の穴埋めが始まった未来の大麻研究所、三重大学から全国、そして世界へ

三重県一見知事の力強いメッセージから約2週間が経った16日の議員会館にて「産業用ヘンプ活用に関する勉強会」が行われました。おおまかな概要は大手メディアのニュースの通りですが、HTJではもう少し掘り下げてレポートしていきたいと思います。

どこの、どなたが、どのように、どのような課題を持ち、どこまで進めていて、どのように実現していくのか、など、三重県では、一見知事の発言の通り、着実に進行していました。という状況を踏まえまして、希望と共に明るい未来を皆様と感じたく思っております。

大前提のお話として、三重大学には、既に以下の状態が「ある」という状況です。尚且つ、神事側の関係者の方々も「カンナビノイドを含む大麻産業」として捉えてます。

・大麻取扱者免許・麻薬研究者免許の2種類は昨年取得済み
・THC検査(成分分析)機関設立済み
・シードバンク設立済み(日本産の大麻種収集調査)
・実験室(ラボ)、栽培温室、圃場(農場)設立済み
・それらを研究していく12名の研究者が稼働中

そして、4月、2拠点で神事用、産業用と大麻の種まきが行われます。

一般社団法人 北海道ヘンプ協会も今回の勉強会は共催とあって、2005年から培ってきた知見とノウハウ、法人・一般会員の方々の有益な情報は全て三重大学、関係者とも共有されており、バックアップ体制が万全。強固な連帯感で、確実にGXに絡めたヘンプ新産業の確立へ向かいます。

「日本」での産業用ヘンプ拡大の道への確固たる道標ができているように思えます。

 

それでは、各関係者の方々のプレゼン内容をご覧ください。

産業や伝統文化等への麻の活用に関する勉強会 会長 衆議院議員 森山裕先生(来賓ご挨拶)

現在の懸念点:

日本の麻農家数の少なさに危機的状況と懸念を感じていた

これまでのこと:

至急栽培の制度改正が栽培のしやすさを整備することを急務に。と、法改正の準備を整えていき今国会に提出準備が整った

あなたが知る大麻とは?:

伝統以外にもカーボンニュートラルや地球環境の保全にも繋がるということ

今後の展開:

ヘンプ栽培を国民に理解をいただき、一つの産業としてしっかりと根付いていくように国会で努力していきたい

 

森山裕議員:https://www.jimin.jp/member/100462.html

神道政治連盟 打田文博会長(来賓ご挨拶)

現在の懸念点:

神社の「必需」である「国産であるべき麻」の殆どが低品質の輸入品であり、麻農家も極少数

これまでのこと:

鈴木英敬氏(上記勉強会の事務局長、前三重県知事、自民党衆議院議員)が「伊勢麻」の栽培を許可承認し国産大麻栽培を復活させた

あなたが知る大麻とは?:

医薬、食品、繊維、さまざまな用途に使われているし、日本にとっての「麻」はかくことのできない文化を創ってきた。1年草で3メートルにも伸び光合成植物として1番、つまりGXにも繋がる

今後の展開:

麻の多様性を広げ、増進していきたい

打田文博会長:https://ja.wikipedia.org/wiki/

資源エネルギー庁戦略企画室長 内閣官房GX実行推進室企画官 西田光宏氏

GXとは、どういった背景でどのように進めようとしているのかをざっくり解説

GXのコンセプトは、経済社会産業構造を脱炭素型エネルギーに変えて、より安定的なエネルギー構造にすることである。特に、ロシアによるウクライナ侵攻でこの問題が顕在化した。現状では、エネルギーの安定供給と経済効率性のバランスが悪くなっており、GXを実行する必要がある」と、西田氏。

現在の懸念点:

・先進国の中ではエネルギー自給率が最下位の13
化石エネルギーに多く依存する社会構造は、エネルギーの安定供給において高リスク
GX投資の成否が国力を左右する時代に突入していることを示している
日本の電源構成が化石燃料に依存し、脱炭素化を急ぐ必要がある

対応策:

発電事業者には有償でCO2排出枠を買ってもらう排出量取引を2033年度から導入
・炭素に対する賦課金制度を2028年度から導入する
再エネや原子力の活用を推進し、法律による措置を講じる
省エネや水素、アンモニアなどの取り組みも進める
政府支援も進んでおり、新たな産業分野や市場が生まれることが期待される

などなど

今後の展開:

20兆円の新たな国債の償還財源に充てることを目的として、非化石エネルギー、産業構造転換、資源循環、炭素固定技術などの分野に投資することが計画されています。具体的なプロジェクトは今後決定される予定です。

政府支援のGX公債の発行や炭素排出に価格付けをするカーボンプライシングなどが考えられます。

カーボンプライシングとは?
炭素排出量に対して課金する仕組みのことを指します。炭素排出量が多い企業や個人には多くの料金が課せられ、排出量が少ない企業や個人には少ない料金が課せられます。この仕組みは、炭素排出量を削減することを促進し、温室効果ガスの排出を減らすための財政的な手段として利用されます。具体的には、エネルギー、交通、産業などで発生する二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量に対して、政府が税金や証書などの形で価値を与え、排出者に負担を課すことで、環境保全や再生可能エネルギーの促進を目指します。

詳しくはこちらも:
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA146CB0U2A211C2000000/

経済成長×脱炭素」というコンセプトが重要で、環境省だけではなく、「経済産業省と環境省」という相反しがちな省が協力し取り組んでいるところが大きなポイント。2033年度と2028年度の導入を示すことで、企業産業界に脱炭素の経済構造に移るための時間的猶予を持たせ、投資を加速させる狙い。

一社)麻産業創造開発機構 理事長 新田均氏

GX実現に向けた基本方針に欠けている「産業用大麻」の活用プラン

現在の懸念点(政府の方針では・・・)

・GX(グリーントランスフォーメーション)と言われているが、クリーンとCO2を掲げているだけで肝心の「グリーン」が殆ど無い

グリーントランスフォーメーションや排出実質ゼロを目指しているが、ネガティブエミッションについては提案がほとんどない

ネガティブエミッションとは?
二酸化炭素(CO2)を大気から取り除き、貯蔵する技術や方法のことを指します。つまり、地球温暖化の原因となるCO2を削減するだけでなく、既に大気中に存在するCO2を取り除くことによって、より積極的な温室効果ガスの削減を目指す取り組みです。

植林やバイオマスについては、面積や排出量の問題がある
CCSについては技術もコストなど問題がまだまだ不明確

CCSとは?
Carbon Capture and Storage(二酸化炭素の回収・蓄積技術)の略称です。つまり、発電所や工場の排出する二酸化炭素を回収し、地下などに蓄積する技術のことを指します。

実例と対応案:

・大麻を活用することで、クリーンCO2トランスフォーメーションを進め、本当のGXグリーントランスフォーメーションになる
EUの公式サイトによると、大麻1ヘクタール当たり915トンのCO2を吸収する。北海道の実証実験では4285トンだった。
日本の現在の荒廃農地、28万ヘクタールに大麻を植えると28万トンのCO2が吸収される
1トン130ドル換算:47億円のカーボンプライシングとなる

今後どう展開していくべきか:

政府の制度(25年の脱炭素先行100の地域、28年の炭素への賦課金制度、33年炭素排出量取引などに向けて)に合わせて「大麻を植える地域の拡大」を検討していきたい(いくべき)

日本大学生物資源科学部 博士 赤星栄志氏

GX実現に関する各国のヘンプの活用と開発事例紹介

 【世界の常識】
書籍ドローダウンより:
地球温暖化対策100の対策の1つがヘンプ
綿花をヘンプに置き換えて炭素削減

 

【ヘンプ先進地域の実例】
コットンよりも2倍の生産量
水はコットンの3分の1しか使わない

 

【フランス・実用済】
ヘンプ100%ジーンズ初発売

紡績を中国に頼らず南仏原産で製造

 

【ヘンプ先進地域の実例】
製造時の投入エネルギーは炭素繊維の58分の1
ヘンプ繊維は省エネ、CO2削減に貢献

 

【ロータスカーズ・実用済】
軽量化による/燃費電費基準の達成
「EliseS」32kgの軽量化

 

【ポルシェ・実用済】
軽量化による/燃費電費基準の達成
「ポルシェ718ケイマンGT4クラブスポーツ」
ヘンプと亜麻の複合材でカーボンに匹敵

 

【三菱ケミカル・実用済】
軽量化による/燃費電費基準の達成
タピオカ×ヘンプ=プジョーなどへ
フランスと共同でバイオ素材100%樹脂開発

 

【ヘンプシード・実用済】
植物性タンパク質、CO2削減/肉食代替
課題:収量の多い品種を育成

 

【パラグアイ・実用済】
Grain社が1ha辺りで72.2トンのCO2隔離成功
カーボンフットプリント認証取得

 

【フランス・実用済】
ヘンプクリートの活用
380㎡の公共建物スポーツホール
パリ・オリンピック選手村
オリンピックの環境への影響を30%削減

 

【ヘンプ繊維断熱材・実用済】
テルモハンフ(グラフ緑色)
CO2排出量は圧倒的に少ない

 

【カーボンリサイクル燃料・実証段階】
アメリカ産官連携のヘンプ燃料プロジェクト
CBD抽出後の廃棄ヘンプをバイオ燃料へ
高糖化技術確立

 

【スーパーキャパシタ等・研究必須】
ヘンプの多孔質構造から炭素利用
燃料電池、バッテリーへの可能性

 

【バイオコークスとしての可能性】
近畿大学バイオコークス研究所が開発した炭化技術
3000万年を「40年」に縮めた驚愕技術
すでに「ある」技術をヘンプに代替すれば実用可

 

まとめ:GXを狙うことでヘンプ農家も炭素収入が狙える

1.国連機関の報告書 ヘンプ原料1トンにつき CO2 1.65トン吸収


2.ヘンプの栽培価値= 農作物の販売収入+ 炭素価値の販売収入
→ GX推進法や、炭素市場スキームに左右される

3.ヘンプは、あらゆる産業に貢献するため、GX実現に不可欠な存在

神道政治連盟国会議員懇談会 事務局長 元環境副大臣(第4次安倍内閣)城内 実氏

現在の懸念点:

・戦前と戦後で麻農家が断絶している
日本は海外の流れが入ってこないガラパゴス状態であり、何とかしなければならない

これまでのこと:

56年前から、麻農家を復活させることができるのではないかという提唱に賛同していた

あなたが知る大麻とは?:

・大麻は衣食住に利用されるている
戦前の日本では、軍事用の衣服には大麻繊維が使われていた
建材や断熱材としての利用も考えられる
二酸化炭素を吸収し成長も早いため、気候変動や脱炭素化の流れに適している
化学肥料や農薬を使用しなくても成長する
・昔飼っていた鳥が
麻の実で元気に育ったので、実や大麻油は栄養価が高く、食用に適している
コットンや綿などの衣類素材には、化学肥料など多くの環境負荷があるため、麻を使うことが環境にとっても良い

今後の展開:

神事を行っている議員会館で、麻を使う際はできるだけ国産を使いたい
将来的には麻の寝間着や麻の枕を作りたい、快眠、健康促進
日本人の健康や省エネ、脱炭素、産業発展のために、ヘンプは必須である
・ヘンプ栽培に賛同しているので、一緒に行動していきたい。

「不勉強なところもありますが、教えていただきながら、仲間を作って頑張ります」。とのことで、日本の大麻の歴史から現在の状況そして海外の情報なども含めて熱い思いを語っておられました。とても頼もしいです。

三重大学 大学院地域イノベーション学研究科・生物資源学部 教授 諏訪部圭太氏

戦後初かつ国内唯一の総合農学研究拠点

感じている課題:

・現在の日本における大麻栽培者は27名しかいない。
27名で産業を活性化するのは大変難しい
・日本の麻農業には、栽培人口と面積が少ないという問題がある。
・商業栽培できる品種が限られており、今のところ「とちぎしろ」という種類しかない。
・「とちぎしろ」は、栃木県以外の方が入手することはできない。
・もっと種類の多い大麻の種が必要であるが、それらが日本にどこにあるのか全くわからない。
・免許保持者であっても免許の入手が簡単ではなく、届け出を受け付けてもらえない現状がある。
・日本の大麻農業は、人、場所、物、全てが不足しているため、基盤がないという問題がある。
・戦後70年間の空白があるため、問題は非常に大きい。

やってきたこと:

・伊勢神宮の近くにある大学で、農業農学に関する研究をしている。
・大麻、大麻農業、大麻栽培に関する研究部門を12人の教員で立ち上げた。
・大学内には、神事産業用大麻研究プロジェクトとカナビス研究基盤創成リサーチセンターの2つの研究部門がある。
・大麻の基礎研究と応用研究を両方行い、学内に体制を整えている。
・大麻取扱者免許と麻薬研究者免許の2つの免許を取得し、研究に必要な認可実験室、栽培技術、圃場を完成させた。
・この春から、学内で認可栽培ができる状況を整えた。
・大麻の種の銀行であるシードバンクを作り、日本大麻の種を保存
・カンナビノイド
成分分析機関を三重大学に作っている。

今後の展開まとめ:

  1. 大麻の種類の拡大、日本には一種類しか大麻の種類がなく、産業利用するには様々な用途があるため、多様な種類を作る必要がある。そのために、日本各地の品種系統の種子の収集をしていく
  2. 新しい品種の開発:収集した種子をもとに、新しい品種を作っている。これによって、用途や各地域の環境にあった品種を提供できるようになる。
  3. THC含有量の低い安全な産業用大麻の開発、品種研究 
  4. 基礎研究の蓄積:大麻の根底を支える農学的、生物学的、植物学的な基礎研究を蓄積していく。
  5. これらの取り組みによって、安心安全な産業用大麻の開発と農業生産基盤の確立を目指している。

三重大学 副学長のサプライズご挨拶

決意表明:

・伊勢神宮のお膝元である三重大学こそ、ヘンプ研究をする拠点になるべきであると考えている。
・地域共創大学として、地域に根付いた研究を進めており、世界に誇れる研究を進めている

今後の展開:

・諏訪部教授を中心にして、共に頑張っていくことを決めています。

一社)北海道ヘンプ協会 代表理事 菊地治己 農学博士

北海道におけるヘンプの大規模栽培を目指して

啓蒙、実働、努力の先に立ちはだかる壁の連続

・戦前にはヘンプと亜麻の加工工場が稼働していたが戦後で全て雑草化
・2005年初めての試験栽培で52.7トン/haの乾物量を確認
・2014年からの試験栽培も2.7メートルのフェンス囲いの規則が設けられる
・26トンの乾物量を確認できた
・2015年フランスHempIT社からTHC、CBDゼロの種子輸入契約を実現

「法改正もしくは貿易管理令が改正されれば種が輸入できるのに・・・」

そして、遂に・・・大きな一手が・・・

・HIHA提出の要望資料、厚生省が参考資料としてほぼ全文採用

北海道ヘンプ栽培の強み

・広大な土地と食品ヘンプ品種に適した気候
・食品、繊維、建材など多岐産業に渡ったプロフェッショナル法人会員
・EIHAなど海外の産業用ヘンプ団体と繋がっている海外ネットワークが豊富
・長年のヘンプ産業に関連する知見、種や機械の導入が容易
・野生大麻(自生)という遺伝資源が豊富

HTJ
以上1部のレポートでした、いかがでしたでしょうか。北海道ヘンプ協会は、ヘンプ産業における知識、経験、企業間ネットワーク、海外ネットワークなど、国内に存在している団体や協会から一線を画してまして、フランスのTHCゼロ品種の輸入契約もいち早く結んでいます。しかし、今回の三重県のスピードと実現をこの目で見てきて、結果、同じ日本にも関わらず、県のトップである知事、そして研究機関となる大学、そして、地元住民の柔軟な理解が事を一気に進めていったという印象です。三重県トップが「規制より活用」という使命です。これから、三重県が栽培、収穫、研究と、形ができていけば、自然と北海道や栃木も続きやすいと思います。今回の勉強会、三重大学の学長、副学長のコミットや元環境副大臣の城内氏の大麻栽培復活に対する熱い思いを聞けただけでも、大きな価値があります。これからは、環境省と経産省が手を取り合いGX実現に向かいますので、その中に、大麻もしっかりと含めて進めていきたいですね。楽しみです。さて、第一部のレポートはこの辺で、次回に続きます。長文のご拝読ありがとうございました。でわ、また

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AUTHORこの記事をかいた人

HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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