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米国は、植物/品種・ヘンプ抽出物(CBD製品)・播種用種子を全てTHC 0.3%基準で統一

目次

2018年米国ヘンプ農業法に対応した2020年麻薬取締局(DEA)規則の翻訳と、その解説Q&Aを公開

 

北海道ヘンプ協会(HIHA)は、前回お知らせした「2018年米国ヘンプ農業法(以下2018年ヘンプ農業法)の最終規則」の翻訳(注1)に続く第二弾として、このほど「2018年米国ヘンプ農業法に対応した2020年麻薬取締局(DEA)規則」(以下2020DEA規則)の翻訳とその解説Q&Aを公開しました。

 

2018年ヘンプ農業法によって、ヘンプの定義がTHC濃度0.3%以下の大麻草の品種となりましたが、2020DEA規則によって、ヘンプ抽出物、播種用種子などの曖昧だったところが明文化されました。

 

植物/品種のTHC0.3%という基準がヘンプ抽出物(CBD製品)、播種用種子にも適用され、DEAの管轄と規制から除外されました。

ヘンプの定義:ファクトシートも翻訳して公開

 

北海道ヘンプ協会は、2020DEA規則の翻訳と共に、米国議会調査局が政党色なく、中立的な立場で作成した「ヘンプの定義:ファクトシート」も下記サイトで翻訳・公開しています。

北海道ヘンプ協会の翻訳資料のページ

https://www.hokkaido-hemp.net/resource.html 

 

昨年6月末に公表された厚生労働省「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の報告書(注2)では、現行法の成熟した茎と種子が合法で花と葉が違法という部位規制から、THCによる成分規制への移行が示されました。

 

さらに、20223月末には、厚生労働省が管轄する厚生科学審議会の医薬品医療機器制度部会に「大麻規制検討小委員会」を設置することが決まりました(注3)。

 

この小委員会では主に下記の6つの論点について議論される予定です。

 

1:大麻取締法等の改正に向けた論点(案)

 

上記の6つの論点のうち、「3.適切な栽培及び管理のあり方」「4.大麻草・大麻の適切な利用・使用のあり方」「6.成分に着目した規制への見直し」が、THC基準値をベースにした成分規制の中核となる極めて重要な分野ですので、諸外国の法制度なども参考とした議論が期待されます。

 

北海道ヘンプ協会の菊地代表理事は、「北海道の気候と大規模機械化栽培に適した早生でTHCを全く含まないフランスのヘンプ品種を導入したいと考えていますが、我が国では、そもそもヘンプの播種用種子が貿易管理令の定める輸入品目の対象外であるため、試験研究目的であっても種子の輸入ができません。米国を見習って、一日も早く播種用種子の定義を定めて関連法令を改正すれば、海外の優れたヘンプ種子の輸入が可能となります。今回翻訳した2020DEA規則とその解説QAを多くの皆様、特に大麻取締法をはじめ法改正に関係する皆様に読んでいただき、我が国の制度設計の参考にしていただければ」と話しています。

 

注1 米国ヘンプ農業法の最終規則(全96頁)の翻訳と解説QAが公開

https://hemptoday-japan.net/12888

 

注2 厚生労働省「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の報告書

https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syokuhin_436610_00005.html  

 

注3 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会「大麻規制検討小委員会」

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25010.html 

2018年米国ヘンプ農業法に対応した2020麻薬取締局(DEA)規則・解説Q&A

Q1: 2020年麻薬取締局(DEA)規則(以下、2020年DEA規則)とは何ですか?

A1 2018年米国ヘンプ農業法(以下、2018年へンプ農業法)の制定に伴い、米国司法省麻薬取締局(DEA)が管轄する規制物質法(CSA)の細かい規定を見直したもので、20208月に発効しました。

Q2: 2018年ヘンプ農業法は何を定めたものですか?

Q2 2014年産業用大麻研究法を更新し、全米でヘンプ栽培を正式に合法化した法律です。この法律では、ヘンプをマリファナの主成分であるTHC濃度を0.3%以下のものと定義しています。この法律によって、ヘンプは、麻薬取締局(DEA)から米国農務省(USDA)へ管轄が移り、小麦やトウモロコシと同じ農作物の扱いとなりました。

Q3: 麻薬取締局(DEA)とはどんな組織ですか?

Q3 1970年規制物質法(CSA)の執行を職務とする連邦捜査機関です。当時のニクソン大統領による「薬物との戦争」政策を実施する司令塔として発足しました。

Q4: 規制物質法(CSA)は何を定めたものですか?

Q4: 特定の薬物の製造、輸入、所有、流通を規制管理する法律です。国際条約である「1961年麻薬に関する単一条約」の米国内の実施立法です。薬物を下記のように危険度別にスケジュールI から スケジュールVまで分類しています。

表1 1970年規制物質法(CSA)による分類(黄色部分)

天然由来のTHCを含む大麻及び大麻樹脂は、スケジュールⅠ、合成由来のTHC製剤であるマリノール(制嘔剤)はスケジュールⅢで管理されています。

Q5: 2018年ヘンプ農業法に対応した2020年 DEA規制は、何を定めましたか?

A5: 以下の4つの点を改正しました。

・規制物質法(CSA)の定義に、2018年農業法のヘンプを除外することを明文化

・米国食品医薬品局(FDA)が承認したエピディオレックス(CBD医薬品)を規制物質法(CSA)のスケジュールⅤ管理物質から除外した(表1参照)

・それに伴い、CBD医薬品の輸入規制と輸出規制を撤廃した

・マリファナ抽出物の定義を「THC 0.3%を超えるもの」に限定することを明文化

Q6: 2020年 DEA規制は、ヘンプとマリファナの区別のどのように明確化しましたか?

A6:    抽出物と播種用種子にも植物体/品種と同様にTHC 0.3%の基準値を定めました。

 

表2 2020 DEA規制によるヘンプとマリファナの区分

Q7: 2020年 DEA規則でCBD製品のTHC基準値が0.3%以下と決定したのですか?

A7: はい、麻薬取締局(DEA)ではそのように決定しています。

  ただし、米国食品医薬品局(FDAでは、FDA承認したもの(例:エピディオレックス:CBD

医薬品)を除いて、ヘンプ由来のCBD製品のガイドラインや規制をしておらず、現在、各種安全

性試験を実施している段階です。そのため、各州で定めたヘンプ由来のCBD製品の規則やガイド

ラインで対応することで、合法的な流通を確保しています。

Q8: 米国では天然由来と合成由来のTHCに法的な区別がありますか?

Q8: はい、あります。この2020DEA規則では、「テトラヒドロカンナビノールの定義変更について」の説明文で、0.3%以下のヘンプの天然由来のTHCは規制対象外となっています。一方で、すべての合成由来のTHC類は、スケジュールⅠの規制物質であることを説明しています。これは、日本の大麻取締法(天然・農作物)と麻薬・向精神薬法(合成THC類)で法的に区別していることと同じです。

Q9: 2020年 DEA規則と2016年産業用ヘンプに関する原則共同声明との関係は?

Q9: 2014年産業用大麻研究法に伴い、麻薬取締局(DEA)、農務省(USDA)、食品医薬品局(FDA)から2016年産業用ヘンプに関する原則共同声明があり、ヘンプの播種用種子の輸入、ヘンプ原料の州間取引・譲渡、ヘンプ抽出物は、マリファナに相当するために引き続き流通規制することを表明しました。しかし、2018年ヘンプ農業法に対応した2020 DEA規則の発効により、植物体/品種、抽出物、播種用種子がTHC0.3%以下のヘンプの定義であれば、マリファナに相当しないため、DEAの流通規制を受けなくなりました。しかし、食品医薬品局(FDA)は、ヘンプ由来のヘンプシード食品についてはすべて、GRAS認証を認めていますが、ヘンプ由来であってもCBD製品には認めていません。

GRASとは、Generally Recognized As Safe(一般に安全とみなされている)の略語で、国際的に広く認知されている米国における食品安全に関する認証制度のことです。

Q10:  酩酊作用を引き起こすヘンプのTHC含有濃度はどれぐらいですか?

10:  米国議会調査局による「ヘンプの定義:ファクトシート」では、THC 1%を酩酊作用の閾値としています。

Q11:  ヘンプとマリファナの違いは、THC含有量だけですか?

Q11: いいえ、違います。米国議会調査局による「ヘンプの定義:ファクトシート」では、法的定義と監督官庁の違いに加えて、化学的組成の違い、遺伝的構成の違い、生産慣行の違い、使用用途の違いがあることを詳しく解説しています。特に、最近のゲノム/遺伝子研究によれば、ヘンプとマリファナは、遺伝的に同一でも類似もしていないことが明らかになっています。



表3 米国議会調査局「ヘンプの定義:ファクトシート」より引用

参考情報

米国ヘンプ農業法最終規則(翻訳版 全96頁)の解説(Q&A)の紹介記事

https://hemptoday-japan.net/12888 

 

米国ヘンプ農業法最終規則(翻訳版 全96頁)

米国ヘンプ農業法最終規則 解説Q&A

2018年米国ヘンプ農業法に対応した2020年麻薬取締局(DEA)規則 (翻訳版 全14頁)

2018年米国ヘンプ農業法に対応した2020年麻薬取締局(DEA)規則 解説Q&A

ヘンプの定義:ファクトシート 2019322日更新 (翻訳版 全12頁)

https://www.hokkaido-hemp.net/resource.html 

 

米国(4)連邦法のヘンプ完全合法化を受け新たに挑戦するケンタッキー州 

農業経営者202月号

https://agri-biz.jp/item/content/pdf/5105  

 

  • 訳注用語集

 

大麻草(Cannabis

アサ科アサ属の植物(学名;Cannabis sativa L.)のこと。マリファナとヘンプを区別しないで植物のことを指すときに使われています。

 

マリファナ(Marijuana

一般的には、大麻草の花序を乾燥させてタバコ状にしたものを意味します。しかし、米国の法的事情を語るときには、THC濃度0.3%を超える大麻草という意味になります。

 

ヘンプ(Hemp)

繊維や食品等の産業目的で栽培される大麻草のことです。産業用大麻(Industrial hemp)とも表記されます。米国ではTHC濃度0.3%以下の大麻草の品種のことを指します。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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