「メガ・トレンド」
3Mのグローバル新製品マーケティング・マネージャーであるドン・デビッドソン氏は、オレゴン州立大学の主宰で2月に開催された、オンラインでの全国ヘンプ・シンポジウムでの講演で、産業用途におけるヘンプの可能性について熱く語りました。
産業コングロマリットの3Mは、ヘンプが持続可能性の「メガトレンド」の一部になる可能性があると考えており、包装テープなどの製品の強化から人間の組織や臓器の成長の支援まで、ヘンプ由来成分の導入を検討しているようです。
しかし一方で、同社はヘンプの持つ可能性を具現化する前に、まだサプライチェーンにおいて解決すべき多くの問題があると考えている、と言います。
ヘンプの可能性を積極的に研究
デビッドソン氏は、「これまで 3M は、米国外で何年もの間ヘンプに触れてきたが、2018年農業法は、米国内での研究開発能力を後押しした」と述べました。
「私たちは、多くの3Mのテクノロジーや製品に(ヘンプを)組み込むことができます。消費者であろうと、ヘルスケア、運輸、エネルギーなどの産業関係者であろうと、ほぼ全面的に、彼らはより持続可能なソリューションを求めています。」
彼は、3Mが以下の分野で使用するためのヘンプ繊維と油脂成分を積極的に研究していると述べました。
- 航空宇宙関連および輸送用の接着剤
- ゴミ袋
- 一般的なビニール袋
- 外科用ガーゼ
- 土壌侵食を防ぎ、雑草を防ぐために農業に使用される不織布材料
- 従来の梱包テープ
- いわゆる「人工多能性幹細胞」
または健康な肝臓や腸組織の培養などの再生医療で使用される細胞の成長マトリックス
「このベースとなる素材(ヘンプ)は、我が社全体で非常に多くの用途があります。私たちは、そのヘンプ繊維を、ほんの一握りの製品だけでなく、信じられないほどの用途に対し、どのように使用できるか、そしてそれがもたらすプラスの影響を検討しています」とデビッドソン氏は述べ、持続可能性を「メガトレンド」と呼び、ハイテク製造だけでなく、製品の出荷に使用される従来の消費者向けパッケージや梱包テープに取って代わる、ほとんどの新製品を今後数年間で推進すると述べました。
売り上げの落ち込みをイノベーションのバネに
3Mのヘンプに関する開発は、Covid-19のパンデミックによる、一部の従来製品の需要の冷え込みに対応することを通じて実現しました。同社の代表的な製品であるスコッチ・テープやポスト・イットなどの事務用品の販売が低迷したこともあり、同社は昨年12月に2,900人の雇用を削減すると発表しました。
デビッドソン氏は、3Mの計画しているヘンプ由来製品が、いつ市場に出るかについては明確に示しませんでした。
デビッドソン氏は、同社が必要としているヘンプ繊維の種類とその量を尋ねたところ、「推測できない」と答えた上で
「私たちはまだ学んでいる途中なので、現時点でそれについて言及するのは難しいのです。私たちは、ヘンプ繊維(の導入)によって、どのような変化が発生するかを知りたいと思っています。」
と述べました。
デビッドソン氏は、3Mの研究開発チームが、ヘンプのサプライチェーンにおいて何が利用できるか、そしてそれを使い始めるのに十分な量の供給を効率的に手に入れる方法を理解できた時、「そこから物事が本格的に始まります」と述べました。
「そのベースマテリアルを入手してプロトタイプの開発を開始できれば、それを顧客に提供できます。そしてそれは、物事がうまくいき、ヘンプを含むその製品パイプラインを実際に構築する時なのです。」とデビッドソン氏は述べています。
彼は、ヘンプの世界的な供給はまだ少なく、持続可能な商取引におけるヘンプの役割は、未だ不明であると付け加えた上で、最後に
「私がこの星の、どの場所で誰と話しているかは関係ありません。なぜなら誰もがこれら(持続可能性)の課題に頭を悩ませているのですから。」
と述べ、ヘンプの持つサステナビリティに関する潜在能力への期待を明らかにしました。