海外からの投資にブレーキをかける可能性も
メキシコの最高裁判所は、今月初めに予定されていた嗜好用・医療用・産業用の全てを含む大麻を完全に合法化する法律の承認にむけて、議会にさらに6か月の猶予を与え、その期限を4月の終わりまでに延期しました。
この延期により、法制化間近と考えられていたこの法案は、修正なしで承認される可能性が低くなりました。法案では、大麻関連企業における外国人の所有権や垂直統合化、およびライセンスの再販を制限する規則を提案しており、こうした条項はすべて、海外からの投資にブレーキをかける可能性があります。
メキシコ上院は、10月末に設定されていた期限までに合意に至らなかったため、延長を要請しました。その法案の内容は、以下の通りです。
社会的責任、公衆衛生、人権、持続可能な発展
「公正な規制のある市場」は、文書全体で繰り返されているテーマです。
法案は、大麻とその派生物を規制し、公衆衛生、人権、持続可能な発展を優先することを提案しています。その目的は、ライセンスや認可を取得に関して地域コミュニティに特別な優先権を与えることにより、法的な利益を享受できるようにすることです。
合法化され大麻使用を認められるケース
法制化した場合、法律は以下の大麻の使用を認めます。
・個人的な使用
・グループのメンバー間での共有使用
・商業目的を含む嗜好用途科学および調査医療および製薬
・治療または緩和産業用
全ての成人は、プライベートな場所での大麻使用を認められます。個人の自由意志と健康への権利を尊重し、国は、大麻消費に関連するリスク、特に18〜25歳の若年層に関する科学的証拠に基づいた情報を促進します。
新たな機関について
法案は、新しい法律のもとで規制を実施するために、独立した機関であるメキシコ大麻協会の設立を求めています。
この協会は、遅くとも2021年1月1日までに設立される必要があります。つまり、法律が承認された後でも、商用ライセンスが利用できるようになるには1年以上かかる可能性があります。そのはたらきには、法律をサポートするための規制の策定、カンナビノイド含有量の制限の確立、ライセンスの付与、「持続可能性証明書」の発行などの活動が含まれます。
大麻法の承認から1年後、協会は改善すべき分野を特定し、議会に法改正を提案するために公開レビューを実施します。
メキシコ大麻協会は、毎年下院によって割り当てられた独自の予算を持つことになります。
ライセンスについて
協会によって発行および規制されるライセンスは、以下のものです。
・栽培、加工
・販売 – 法案には向精神性の大麻の流通と小売が含まれていると指定されている唯一の品目です
・医療大麻と科学的使用のみを対象とする
・国際条約に準拠した輸出入
ライセンスには、輸送と保管に関する補助活動が含まれます。垂直統合を禁止する目的で、個人または会社が複数のタイプのライセンスを持つことはできません。この禁止事項は、パートナー、子会社、株主、特定の家族にも適用されます。
1人のライセンシーが、1つのタイプのライセンスを複数所有する事は可能です。協会はその最大数を決定します。
1人のライセンシーが所有できる小売ライセンスの最大数は、連邦登録組織ごとに3つまでです。
すべてのライセンスは譲渡不可であり、合併や買収の機会が制限されます。法案は、ビジネスが破産した場合にライセンスに何が起こるかについて言及していません。
協会が配布する栽培ライセンスの少なくとも20%は、政府が禁止政策中に違法作物を根絶した自治体のカンペシーノスまたはエヒドス(共同土地)に送られます。
商業ライセンスおよび研究ライセンスの場合、外国人の所有権は、ライセンシーの資本比率の最大20%に制限されます。
グループの場合は、栽培ライセンスのみを申請できます。内部倫理コードなど、一連の要件を満たす必要があります。
ライセンスの場合、申請後予想される期限の終了前に協会が返信しない場合、ライセンスが付与されたと解釈することはできません。
許可に関しては、申請後予想される期限の終了前に協会が返信しない場合、許可が付与されたことを意味します。
ヘンプの製造/加工に関しては、特定の条件下では、ライセンスではなく許可が必要になります。
規制されたヘンプを栽培するには、協会からの栽培ライセンスが必要です。
商業販売について
認可を受けた店舗は、嗜好用大麻を成人に対し販売する事が可能です。
店主は以下を含む一連の要件に従う必要があります。
・メキシコ大麻協会の義務に応じた情報サービスを提供する
・ライセンスを表示し続ける
・大人のみが敷地内に入ることを許可する
・研究所が認可したものよりも高いTHCまたはCBDコンテンツを含む製品を販売しない
精神活性効果を増強する可能性のある他の物質と混合した大麻の販売は禁止されたままです。これには、アルコール、ニコチン、カフェインなどが含まれます。
自家栽培および大麻グループについて
大人1人あたり最大4株の向精神性大麻の成株と、それらの植物の収穫が許可されます。植物と収穫物は栽培者の世帯外に持ち出してはいけません。ユーザーは「ライセンス」を申請する必要はありませんが、「許可」を取得する必要があります。
家庭栽培者は、種子またはクローンの法的起源を証明する必要があります。世帯に未成年者が同居している場合の特定の予防措置は必須です。5人を超える成人が同じ世帯に住んでいる場合、植物の総数は20を超えることはできません。
この法案は、大麻グループを、「主に経済的な目的のない法的に構成された市民団体」として定義し、その定員を最低2名から最大20名としています。メンバーごとに4株までが許可されます。
成人のみが協会のメンバーになることができ、個人は複数のグループのメンバーになることはできません。
パッケージングについて
ブランドを促進する要素のない、地味なパッケージングが基本です。他のいくつかの制限が適用されます。
パッケージングは 、子供に安全である必要があり、所管官庁によって承認された「持続可能な」材料を含める必要があります。 (メキシコ大麻協会は、何が持続可能な材質かを決定します。)
禁止事項について
以下を含む特定の製品または活動は禁止されます。
・ヘンプまたはヘンプ由来の製品に関する、あらゆる種類の広告は対象外
・大麻とその由来製品の化粧品への使用
・医療用製品を除く食用品および飲料
・オンライン、郵便、電話または同様のセールス行為、およびセルフサービスのディスペンサリー
・THCの影響下での運転
・タバコが既に禁止されている場所での喫煙や電子タバコの使用。また、公園やその他の未成年者がアクセスできる公共の場所や開放された場所での喫煙は禁止されるため、追加の制限が大麻に適用されます。
編集長の一言
法案が期限までに承認される可能性はありますが、来春までの締め切り延長は、年末までに法案が承認される可能性が低いことを示唆しています。
議会は、裁判所によって違憲と見なされた大麻法改正の期限だった11月1日、裁判所は、この問題の複雑さを考慮し「例外的かつ一度だけ」と記した上で、2020年4月30日までメキシコ議会に法案の承認延長を認めました。
承認されれば、人口ベースで世界最大の大麻市場となる予定のメキシコ。海外の大麻企業も虎視眈々と狙っているのは間違いありません。
国内に興る新産業の保護に向けて努力を重ねながらも外圧との調整に追われている政府の姿が見えてきます。
タイやコロンビア、そしてメキシコなどの新興国は、大麻産業が今後の経済発展に大きな影響があることを自覚した上で、海外資本から国内の市場と産業を牛耳られる事がないよう、上記のような内容を法案に盛り込むなど真剣に努力しているようです。
その姿は、先日自国の産業を潰しかねない規制案を発表した米国や、一向に産業化への議論すら始まらない日本などとは対照的です。