大問題と考えられる一文をピックアップ
今週発表された米農務省によるヘンプ規制草案。前回は、その内容について大まかに御説明しました。概ね好意的に受け取られている論調がネットでは広がっていますが、一部の専門家たちは危機感を示し、警鐘を鳴らしています。
では、一体何が問題なのでしょうか?
それは、草案11ページの冒頭に書かれている以下の一文です。
“Samples must be tested using post-decarboxylation or other similarly reliable analytical methods where the total THC concentration level reported accounts for the conversion of delta-9-tetrahydrocannabinolic acid (THCA) into THC.”
訳すると
「(作物の)サンプルは、脱炭酸後もしくはそれに準ずる信頼できる検査法によって、THCAがTHCに変換された後の総THC量を検査されなければならない。」
とされています。
THCAとは、THCの前駆体で、それ自体には精神作用はありません。THCAを加熱すると、脱炭酸という化学反応が起きてTHCに変換されます。
ヘンプ農家は、自分の作物のTHC含有量が連邦規制の0.3%基準を超えていないか検査を受ける必要があるわけですが、上記一文は、この検査方法の基準についての記述でした。
そうです、この一文が、実は大問題なのです。
THC0.3%以下に抑えるルールの非現実さ
なぜなら、露地栽培では日照時間、気温、湿度、気候の変化、土壌などの栽培条件は殆ど神頼みなので、以前お伝えしたハワイ農家に起きた大惨事でもお分かりの通り、THC量を0.3%以下に合わせるという、非現実的な数値に抑えるのは非常に難しい事なのです。
こうした難しい条件を克服しながら農家がやっとTHCを0.3%以下に仕上げたヘンプも、そこにはTHCAが含まれています。つまり、計測の際に、このTHCAも加算されたのでは、結果は簡単に0.3%を超えてしまいます。
借金をしてヘンプを育ててきた農家はたまったものではありません。自然には起こりえない条件下で化学変化処理をしてから「計測しろ」というのは、全く理にかなっていないのです。
おそらく規制当局側の言い分としては「THCに転換可能である以上、ヘンプが麻薬として転用可能でない事を示す必要がある」というタテマエなのだと思いますが、非常に非科学的なのです。
なぜなら、THCAをTHCと合算してみたところで、ヘンプから採れるTHCの総量は、酩酊できるほどの濃度には到底なりえないからです。
これが、「ヘンプに火をつけて吸ってみたところで何も起こらない」と言われている所以なのです。火は104℃よりも熱いわけですから当然、脱炭酸は起こります。
民主主義にあってはならない法律書換!?
画像:引用元
さて、こうした現実的な問題以前に、この条文には法的に問題があります。なぜなら、連邦法に定められている「ヘンプ」の定義には「THC0.3%以下」とは書かれていても、THCAに関する記述は一つも見当たらないのです。
つまり、この新たな規制に盛り込まれた一文は、法的根拠もなしに規制当局が恣意的に挿入したものという事です。
今回ピックアップした条文は、もともと2016年に発表された「産業用ヘンプの原則(Statement of Principles of Industrial Hemp)において、なんの前触れもなく突然現れたものでした。
ヘンプの解禁に取り組んできた業界関係者や議員達は、すぐにこの一文の意味するところを読み取り、農務省(USDA)、麻薬取締局(DEA)、そして食品医薬品局(FDA)に対して、この一文を撤回するように連名で書面の警告を送っています。
ところが、USDAはこれを無視して今回の規制草案にもこの一文をねじ込んできました。日本では常態化していて忘れてしまいがちですが、本来は、監督官庁が国民に何の相談もなく勝手に法律を書き換えるなど、民主主義にはあってはならない事です。
これまでもHTJでお伝えしてきたように、世界のヘンプ業界では今、THC1%規制の新たなトレンドが生まれてきています。このような非現実的な規制で縛られていては、米国のヘンプ農家は、こうした国々とグローバルな市場で戦える訳がありません。
今後拡大が見込まれている自国の新産業を潰しかねない規制をUSDAが執拗に敷きたがる理由は何なのでしょうか?
歴史は語る、新規参入を拒む巨大利権の企み
私は陰謀論者ではありませんが、ここまで一貫して国民の声を無視し、非論理的で理不尽なUSDAやDEA、そしてFDAの姿勢を見ると、やはりヘンプ産業(広義の意味で大麻産業)には強力な抵抗勢力があり、かつその勢力は政治の中枢に手が届いている連中なのだろうと思わざるを得ません。
そしてそれは、単にヘンプ産業の成長によって立場を脅かされる外敵だけでなく、こういった厳しい規制によって新規参入者を拒み、産業の独占を狙う内部の勢力でもあるのです。
この数年、爆発的に成長してきた大麻産業は、もうマイナーな存在ではなくなりました。
これまでの歴史を振り返れば分かる通り、石炭や石油、綿花や原子力、そして自動車などの巨大なポテンシャルを秘めた新産業が興る度に、人類はこうした「欲」と戦い、そしてほとんどの場合、負け続けてきました。
大麻は英語で「ウィード(雑草の意)」と言います。何処にでも、種を蒔けば勝手に生えてくる雑草です。
これほど新規参入にあたって資本や専門知識の要らない新産業は他にありません。だからこそ、こうした独占を助長する勢力と戦い、誰でも参加できる健全な市場形成に取り組むべきなのです。
今回の一件は、海の向こうの出来事ではなく、近い日本の未来を左右する大きな出来事あり、これを正しい目で評価し、そしてより良い未来に活かしていく為の試金石なのです。