2011年以降の削減は微かな進歩
炭素放出を削減するために、農家はヘンプクリート向けにヘンプを栽培し、建物の断熱材むけに羊毛を生産するべきであると、NFU(英国農業連合:National Farmers ‘Union)が、新しいレポートで発表しました。
農業による二酸化炭素排出量は1990年以降、全体で16%減少しましたが、2011年以降はわずかな進展しかありませんでした。
NFUは、農業全体が2040年までにカーボンニュートラル(炭素収支ゼロ)になることを目指しており、これを達成する方法を研究しています。
植物を成長させると大気から炭素が捕捉されるため、植物素材を建築に取り入れると、炭素を大気中から構造体に取り込むことが出来ます。
有力な素材の1つにヘンプが注目
ヘンプクリートはコンクリートに似た素材で、大麻草から繊維を採取する段階で排出されるオガラと呼ばれる木製の廃棄物と石灰を混ぜ合わせて作られ、建築と断熱に使用されています。
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NFUによると、農場はヘンプを栽培すれば建設業界に販売する事ができるといいます。
他にも、植物から生成したバイオ燃料を使用して電気を生成するメタンを生成することで農場を「植物駆動」にすることや、GPSなどの技術を使用して環境に優しい方法で収穫する事などが挙げられています。
牛や羊などの動物も健康になる
また同連合は、窒素の排出を最小限に抑え、メタン排出や土壌の圧縮を減らすために、農家は牛や羊の健康を保ち、農業の必要性を減らすべきだと言っています。
炭素貯蔵は農場の二酸化炭素排出量を削減するための重要な方法で、これを達成する方法として、より大きな生け垣や、より多くの森林と樹木の提供、泥炭地と湿地の回復などを通して土壌の炭素貯蔵量を高めることが含まれます。
NFU(英国農業連合)のミネット・バターズ会長は次のように述べています。
気候に優しい食品生産を目指して
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「英国の農業を代表して、我々は温室効果ガスの排出源であり、同時にその貯蔵所としての自らの地位を認識しており、今後20年の間に気候変動に関して中立である農業の提供に向けて、どのように取り組んでいくのかを考えています。私たちは、世界で最も気候に優しい食品を生産することを目指しています。英国の食料生産を損ない、温室効果ガスの排出を世界の他の地域に輸出するような農業は避けなければなりません。」
バッターズ氏は、彼女自身のウィルトシャー牛肉や羊の放牧、および耕作農場では、クローバーとハーブを増やすことで牧草地を改善、窒素を固定すると同時に肥料を減らし、GPS技術がこうした精密農業を支援したと述べました。
英国の農業は、英国の温室効果ガスの約10分の1を排出していますが、二酸化炭素の排出量はわずか10%で、40%は肥料などからの亜酸化窒素、50%は牛や羊からのメタンです。
「温室効果ガスの排出を抑えよう」という議論はよく耳にしますが、この声明で特筆したいのは、農業が単なる排出者ではなく「貯蔵者」にもなりうる事を明記し、それを目指すという非常に前向きな姿勢で書かれている事だと思います。