
3Dヘンプ複合材の実用化へ
フランスとレバノンの研究チームは、ヘンプ繊維と農業副産物を組み合わせた環境配慮型複合材の開発に取り組んでいる。
この新素材は、自動車をはじめとする輸送機器や各種産業用途への活用を目指しており、軽量化と耐久性を両立させることで、燃料消費やCO₂排出量の削減につながることが期待されている。
今回の共同研究には、フランス・サンナゼール工科大学(Institute for Research in Civil and Mechanical Engineering:GeM)、レバノンのサンジョセフ大学ベイルート高等工学部、そしてバラマンド大学が参加している。
植物繊維に注目
研究チームは、ヘンプの靭皮繊維(バストファイバー)とレバノン産農業副産物を組み合わせ、3Dプリンティング技術による複合材の製造を進める。
研究の主なテーマは、水分や吸湿が材料性能や長期耐久性にどのような影響を与えるかを明らかにすることにある。
フランス側はGeMのAmandine Célino氏とSylvain Fréour氏が主導し、レバノン側ではサンジョセフ大学のMelissa Said氏とバラマンド大学のAnna Maria El Bayssari氏が研究を担当している。
両国の研究チームはこれまでにも共同研究を行っており、複合材内部における水分移動や、それが強度・耐久性へ及ぼす影響を予測するモデルを開発してきた。
今回の研究では、その成果を植物由来バイオ複合材へ応用し、さらなる実用化を目指している。
このプロジェクトは、サンナゼール工科大学科学評議会とサンジョセフ大学の支援を受けて実施されている。
レバノンとヘンプ産業
レバノンは、ベカー高原における違法大麻栽培で古くから知られてきたが、現在のところ商業的な産業用ヘンプ産業や繊維加工産業は確立されていない。
同国議会は2020年、医療用および産業用大麻の栽培を合法化し、新たな輸出産業の育成や投資誘致を目指した。
しかし制度整備は遅れており、本格的なヘンプ産業は依然として立ち上がっていない。
現在のヘンプ関連活動は、大学を中心とした農業、生産技術、灌漑、経済性評価、産業利用などの研究や実証プロジェクトが中心となっている。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1.ヘンプ複合材は“次世代モビリティ素材”として研究が進んでいる
今回の研究は、自動車など輸送分野で求められる軽量・高耐久素材として、ヘンプ複合材の実用化を目指す取り組みである。
2.最大の課題は“水分耐久性”の克服
植物由来複合材は吸湿による性能低下が課題となるため、水分が材料へ与える影響を解明することが商業化への重要なステップとなっている。
3.ヘンプと地域資源を組み合わせる新たな素材開発
ヘンプだけでなく、レバノンの農業副産物も活用することで、地域資源を生かした高付加価値バイオマテリアルの開発が進められている。
4.レバノンは研究先行型でヘンプ産業を育成中
制度上は産業用大麻が合法化されているものの、商業市場はまだ形成されておらず、大学や研究機関による基礎研究が産業化への土台となっている。


