CBDアイソレートとヘンプオイルの区別を食品当局に要請
英国のヘンプ業界関係者グループは、英国食品基準庁(FSA)に対し、全草由来のヘンプエキスを「ノベルフード(新規食品)」として扱うべきかを明確にするよう正式に要請した。関係者らは、ヘンプエキスには長い安全利用の歴史があり、一般的な食品法の下で扱われるべきだと主張している。この要請は、FSAの従来の立場に異議を唱え、歴史的証拠に基づく政策転換を求めるものだ。
コンサルタント会社「Hemp Hound Agency」が作成したこの要請は、複数のステークホルダーが署名した「Article 4申請」と呼ばれるもの。冷圧搾、チンキ、エタノール抽出といった伝統的手法で製造されたフルスペクトラムおよびブロードスペクトラム抽出物には、1997年5月以前からの使用実績があるとし、ノベルフードの対象外とすべきだと主張している。
歴史的利用の証拠
申請書は、欧州委員会や英国の記録を引用し、1997年以前からヘンプの花がティーや醸造、フレーバーに使用されていたことを示した。また、当時すでにヘンプ抽出物入り飲料が合法的に取引されていた事例もある。
「CBDはここ10年で突然現れたものではなく、常にヘンプ食品の自然な成分でした」と申請書は述べ、CBDを含むヘンプオイルは歴史的に消費されてきた食品であると強調した。
全草抽出物とアイソレートの違い
申請は、全草由来の抽出物と精製されたカンナビノイドアイソレートを区別。アイソレートや合成CBDはノベルフードや医薬品の枠組みに属する一方、THCが0.2%未満の全草由来製品は食品法の対象であるべきとした。
「アイソレートのような選択的抽出物は全く異なるカテゴリーです。一方、冷圧搾オイルやチンキのような非選択的抽出物は植物の自然なバランスを保ち、伝統的な食品加工に含まれます」と記されている。
THC規制への批判
FSAが現在設けている「1食あたりTHC50マイクログラム上限」も、科学的根拠を欠き、食品法上も妥当でないと批判した。代わりに、2025年の諮問委員会が示した「体重1kgあたり1マイクログラム/日」の閾値が妥当だと指摘。
申請者らは、スイスやカナダ、米国のように、全草由来ヘンプオイルをノベルフードとしない国際的な基準に英国も合わせるべきだと訴えた。
具体的要請
申請はFSAに以下を求めている:
• 全草由来ヘンプオイルを正式に非ノベル食品(新規カテゴリではない)と認定すること
• 現行のTHC上限制を撤回すること
• 種子油・全草抽出物・アイソレートの明確な定義を公表すること
• 業界との透明な協議を確立すること
「ヘンプの食品としての歴史は否定できない。それなのに事業者が薬物を扱っているかのように扱われるのは合法でも公平でもない」と主張した。
より広い批判
並行して、Hemp Houndの創設者セフィン・ジョーンズ氏が発表したホワイトペーパー『Moving the Goalposts』は、規制環境を俯瞰的に批判。FSAが内務省の圧力で食品法と薬物法の境界を曖昧にしたと指摘した。
同氏は「内務省が本来の権限を超えてカンナビノイドを支配下に置き、食品法領域に薬物法を持ち込んでいる」とし、過剰規制だと批判。さらに政府諮問機関とGW製薬(Epidiolex開発企業)との関係に利益相反の懸念を表明した。
次の展開
業界関係者は、Article 4申請が一貫性を回復し、英国を国際的な実務に沿わせる道を示すと期待。ホワイトペーパーは2018年以降の法執行の合法性にも疑義を投げかけ、規制の再検証を求めた。
「CBDがノベルフードとされたことで市場は壊滅的な打撃を受けた」と、業界団体CLEARのピーター・レイノルズ会長は述べた。全草エキスが安全で効果的なサプリメントとして人気を得ていたにもかかわらず、煩雑な認可制度により市場から消え、代わりに「効果の乏しい」CBDアイソレート油が残されたと強調した。
同氏は、製薬業界が市場シェアを奪われることを懸念して規制を強化させたと批判し、今回の申請を「CBDへの戦争を終わらせる正しい法的手段」と歓迎した。
FSAはまだ対応を明らかにしていないが、企業が宙づり状態に置かれている現状では早急な明確化が求められている。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. 歴史的利用を根拠に規制見直しを要請
1997年以前からの利用実績を示し、全草由来ヘンプエキスをノベルフード扱いから外すよう求めている。
2. 全草抽出物とアイソレートの区別を強調
従来型の冷圧搾オイルやチンキは食品法の対象であり、精製アイソレートや合成CBDとは異なるカテゴリーであると主張。
3. THC上限制を科学的に批判
FSAの「1食あたり50μg」の上限制は根拠がなく、国際的基準や最新科学に基づいた緩和を求めている。
4. 過剰規制と利権構造に警鐘
内務省と製薬業界の影響により市場が不当に制限され、中小事業者が淘汰されたと批判。透明で公正な制度改革を訴えている。