コスト・輸出・投資に打撃
米国最高裁が昨日、関税に関する大規模訴訟を迅速審理する決定を下したが、関税自体は継続。これによりヘンプ繊維産業の企業は既に打撃を受けており、今後さらに厳しくなる可能性がある。経営者らは「投資延期」「値上げ」「計画縮小」を余儀なくされており、トランプ政権の予測不能な通商政策が業界に暗い影を落としている。
最高裁が審理するのは、輸入品の大半に課されている10%の基本関税を含むもの。関税は多くの業界のコストを押し上げ、競争力への長期的影響に不安が広がっている。特に基盤整備途上にあるヘンプ産業では、その影響はより深刻だ。
大型投資への影響
アイダホ州拠点の建材用ヘンプ絶縁材メーカー「Hempitecture」のCEOマティ・ミード氏は、最も大きな負担は輸入機械だと指摘する。
「この業界は外国製の技術がないと立ち上がりません。機械を輸入することで初めて国際市場で競争ができます」と同氏。
Hempitectureは欧州から輸入した機械に対して今年10%の関税を課されており、15%に引き上げられる可能性もある。
「100万ドルの機械を輸入すると、設置や稼働に10万〜15万ドルを見込んでいましたが、予期せぬ関税で10万ドルが追加出費になりました」と嘆く。
繊維輸入の直撃
カリフォルニアの「HempTraders」の代表ローレンス・サービン氏によると、中国から輸入する布地や糸、麻ひも、ロープ、種子などが55%もの関税対象になり、大幅なコスト増となっている。
「すべての製品が高くなり、市場にヘンプを浸透させるのがますます難しくなっています」とサービン氏。
同氏は、見本布などの小口輸入にまで関税が及んでいることや、輸出手続きの煩雑化も指摘し、「米国民ではなく輸出国が関税を負担している」とする言説を強く批判した。ルールの不確実性が米国繊維業界の長期投資を妨げていると警鐘を鳴らした。
輸出の減少
ワシントン州の衣料メーカー「Jungmaven」の創業者兼CEOロバート・ユングマン氏は、中国から輸入する糸のコスト上昇に加え、カナダ向け輸出が前年比で約80%減少したと語る。
「生産や投資を計画するには安定と一貫性が不可欠ですが、現状の政策は戦略よりも感情で動いているように見えます」と批判。
米国顧客への価格転嫁はまだ行っていないが、2026年には値上げが避けられないと見込み、国内繊維産業支援と安定した通商政策が不可欠だと強調した。
トランプ関税の影響
米国全体の関税政策は、業界の懸念を裏付ける。10%の一律関税に加え、鉄鋼とアルミの関税は50%に倍増。カナダ、メキシコ、中国、欧州からの輸入品に高率関税が課されている。エコノミストは「数十年で最大級の実質増税」と指摘し、企業コストを押し上げ、成長を阻害しているとみる。
批評家は、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)の権限を超えたと主張。下級審は違法と判断したが、最高裁の最終判断までは関税は有効のままだ。
まだ基盤整備途上のヘンプ産業では、この影響は一層拡大する。多くの支持者はローカルバリューチェーン構築を掲げつつも、短期的には国際貿易のつながりが不可欠だと認める。
ミード氏はこう結論づけた。
「新しい産業型バイオエコノミーの構築には必ず国際協力が必要です。この現実を無視する関税は、イノベーションと進歩を遅らせるだけです。」
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. トランプ関税で業界コスト急増
輸入機械や原材料への関税が企業に打撃を与え、投資延期や値上げを余儀なくされている。基盤整備途上の産業には特に厳しい影響。
2. 繊維輸入が市場拡大を阻む
中国からの布や糸に高率関税が課され、製品価格が大幅上昇。市場浸透が難しくなり、輸出も複雑化している。
3. 輸出減少と投資の萎縮
カナダ向け輸出は前年比80%減。政策の不安定さが投資計画を妨げ、2026年以降の値上げは避けられない状況。
4. 国際協力なしに進歩はない
ローカルチェーン構築を目指す一方で、短期的には国際協力が必須。関税強化は業界全体の成長とイノベーションを遅らせる。