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カナダのヘンプ産業は花へ、CBD回帰と繊維・穀物のゆくえ

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CBD回帰?花部栽培面積が5倍に急増

2024年、カナダでCBDを含むヘンプの花部(フラワー)の栽培面積が前年度の約5倍となる4,607ヘクタールに達し、CBDなどのカンナビノイドに対する市場の期待が再燃していることがうかがえる。一方で、食品用途の種子(グレイン)や繊維(ファイバー)といった分野は頭打ちの傾向にあると、カナダ保健省の年次作物レポートが伝えている。

CBD市場開放に賭ける業界関係者たち

現在、CBDの一般市販(OTC)製品について政府が制度見直しを進めており、関係者はこの規制緩和が市場の扉を開くことを期待している。現在のカナダCBD市場は約1億〜5億米ドルと見積もられているが、制度改革がなされれば、より高価格帯かつ広範な消費者層に向けた市場が開花し、年間10億ドル超に拡大する可能性もあるとアナリストは見ている。

爆発的な花部栽培の裏にあるもの

こうした花部の急拡大を説明できる要素は少なく、唯一の理由はCBD需要の高まりと見られている。カナダでは嗜好用大麻法のもとでCBDの生産と輸出が許可されているが、最大の市場である米国には合法的に輸出できない。カナダ産CBDの一部はヨーロッパに渡っている可能性もあるが、輸出統計上は医療用大麻と同一カテゴリに分類されるため、実態把握は困難である。ドイツをはじめ、オーストラリア、イスラエル、英国などが主要な輸出先となっている。

花に向かう理由:グレインとファイバーの減退

2024年のカナダ全体のヘンプ栽培面積は約15,000ヘクタールと前年と同水準を保ったが、その内訳は大きく変動している。フラワー用途の栽培が急増する一方で、伝統的な穀物用途は約20%減(10,500→8,400ヘクタール)、繊維はほぼ半減(3,260→1,865ヘクタール)しており、持続可能性や食料安全保障といった観点から懸念される。

カナダの「花」ブームを牽引するケベック州

特にケベック州が栽培面積を牽引しており、2024年には3,629ヘクタールを占めた(第2位はアルバータ州の約884ヘクタール)。ケベック州はヘンプ花の栽培歴は浅いが、かねてから嗜好用大麻生産が盛んな地域で、施設栽培やライセンス保有者も多い。

この規模は、米国農務省が報告した2023年の米国のヘンプ花部栽培面積(4,788ヘクタール)に肉薄しており、すべてが収穫に至るわけではないものの、カナダとしては大きな飛躍である。

屋外でのCBD高含有品種が登場

モントリオールに拠点を置くDécision de la Nature Inc.のアントニオ・ブラマンテ氏は、CBD含有量が安定して高い屋外栽培用の品種が登場したことが、生産者の再注目を呼んでいると指摘する。「以前は見限られていた分野に、いま再び注目が集まっています」と語る。

また、CBGやCBNといったマイナーカンナビノイドの需要も高まっており、特に退役軍人や医療用途でのニーズが後押ししているという。

政策変更が市場形成を加速

ブラマンテ氏によれば、2021〜2022年の制度改正により、ヘンプ栽培者が花部をライセンスを持つ製造業者に合法的に販売できるようになったことで、市場が徐々に立ち上がっているとのこと。

なお、カナダの制度下では、CBD製品はTHC製品と同様の課税と規制が課されており、一般消費者のアクセスは制限されている。現在、CBDはカナダの医療・嗜好用大麻市場全体の約40%を占めると同氏は見積もっている。

繊維産業は資本難で失速

繊維用途のヘンプは特に大きな打撃を受けており、カナダ各地のプロジェクトが資金難や生産拠点不足で活動停止や縮小に追い込まれている。ブラマンテ氏は、「繊維処理工場は栽培地から100km以内にある必要があり、それを超えると運営が難しくなる」と指摘する。

穀物は実は回復傾向?

穀物用途については統計上は減少しているが、実際には需要が戻りつつあるという。「BCグレードの穀物を買い占め、ヨーロッパに動物飼料として輸出している業者もいます」とブラマンテ氏は述べ、国際需要がこの分野を下支えしていると説明する。

最悪期は脱したとの見方も

2024年、ヘンプの栽培ライセンス保有者数も前年の737件から624件へと約15%減少した。また、2024年の作付報告を提出したのは全体の34.75%にとどまっている。

それでもブラマンテ氏は「今がどん底。ここより下はもうない」と語り、今後の回復に希望を抱く。

米国の動向にも警戒感

一方、アメリカではヘンプ製品への関税導入案も浮上しており、カナダからのヘンプシードや麻幹(ハード)などの輸出に影響を及ぼす可能性もある。カナダドルの安さゆえに国際競争力は高いが、収益性の低下は生産者に直接打撃を与えると警鐘を鳴らす。

編集部あとがき

今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。

1. 花部への転換はCBD市場再燃への賭け

2024年、CBDを含む花部のヘンプ栽培が急増した背景には、カナダ政府の規制緩和への期待と、CBD市場の潜在的な拡大がある。花に舵を切った生産者たちは、その将来性に賭けている。

2. 繊維と穀物分野の低迷は構造的課題が原因

とくに繊維は処理施設との距離、資本不足などのハードルが高く、プロジェクトの多くが中断。穀物も減少傾向とされるが、実需は回復傾向にあり、統計との乖離も示唆されている。

3. 花部拡大を牽引するのはケベック州の潜在力

嗜好用大麻生産に長けたケベック州が、屋外向け高CBD品種の登場でヘンプ花栽培にも本格参入。この地域特性が他州との差を生み出している。

4. カナダ市場の行方は政策と米国次第

国内の制度改革、そして米国での関税政策など、外部要因が今後の市場に大きく影響を与える。とくにCBDの扱いが転機を迎えれば、年商10億ドル超の市場も見えてくる。

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HempTODAYJAPAN編集部です。HemoTODAYより翻訳記事中心に世界のヘンプ情報を公開していきます。加えて、国内のカンナビノイド業界の状況や海外の現地レポートも公開中。

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