新マネージングディレクター就任:フランチェスコ・ミリッツィ氏
欧州産業用ヘンプ協会(EIHA)は、長年政策アドバイザーを務めてきたフランチェスコ・ミリッツィ氏を新たなマネージングディレクターに任命しました。彼は、EUにおけるヘンプ規制の転換期において、協会をリードする立場として就任します。
ミリッツィ氏は、今後数カ月が業界にとって極めて重要な局面になると語っています。「政策環境が変化する今、EIHAは積極的で、情報に基づき、団結した姿勢を保たなければならない」とし、「会員やパートナーと密接に協力し、ブリュッセルでの発言力と影響力をさらに強化していきたい」と意気込みを示しました。
EU政策のプロフェッショナルとしての実績
EUおよび国際ロビー活動の経験が豊富なミリッツィ氏は、公的および民間セクター双方でキャリアを積んできました。これまでにペルノ・リカール社(Pernod Ricard SA)やイタリア・プーリア州政府の行政機関で要職を歴任。綿花、亜麻、ワイン、蒸留酒、ホップ、オリーブといった多様な農産品に関わってきた実績があります。
欧州の政策枠組みにも精通しており、特に農村開発や国際的な二国間関係に強みを持っています。初期キャリアでは欧州委員会での研修を経て、欧州経済領域(EEA)や欧州自由貿易連合(EFTA)の拡大に関する知見を得ました。
ミリッツィ氏は2020年にEIHAへ参加。それ以前の2年間は、EU最大の農業団体「Copa-Cogeca」に所属していました。
食・飼料・建材、そして農業政策──幅広い分野でロビーを展開
EIHA在籍の5年間で、ミリッツィ氏は飼料、食品、建材、そして共通農業政策(CAP)といった、ヘンプに関連する主要な政策分野において積極的なアドボカシー活動を展開してきました。これらの分野は現在もEUレベルで見直しの最中にあり、EIHAの動きが今後の方向性を左右する重要な鍵となっています。
「ヘンプの法的地位に、決着を」
「今後の1年で、ヘンプの各部位に関する法的地位を“最終的に明確化”することに注力します」とミリッツィ氏は述べています。加えて、ノベルフード(新規食品)としての承認申請の加速や、バイオエコノミー分野におけるヘンプの可能性に対する認知向上も、主要な課題として掲げています。
なお、ミリッツィ氏は前任のロレンツァ・ロマネーゼ氏の後任として就任しました。ロマネーゼ氏は6年間にわたり、EIHAの代表として組織をけん引してきました。
編集部あとがき
今回の記事を以下、4つのポイントに整理しましたのでご参考ください。
1. 組織の舵取り役が変わる転機にある
EUの政策が揺れる中、EIHAは新たなリーダーを迎えて次のフェーズに突入。変化にどう対応するかが、業界の未来を大きく左右する重要局面です。
2. ヘンプの「合法性」をめぐる議論が本格化
今後1年で焦点となるのは、ヘンプの各部位(種子、繊維、花など)の法的位置づけ。業界が安定的に成長するために、このグレーゾーンの明確化が求められています。
3. 食品・飼料・建材など、多方面から政策形成を支援
ヘンプは単なる農作物ではなく、食・住・産業に関わるマルチユースな存在。政策の網の目を丁寧に読み解きながら、複合的なロビー活動が行われています。
4. バイオエコノミーの主役としての可能性を可視化へ
再生可能資源の中心にヘンプを位置づけることで、持続可能な経済システムへの貢献も見込まれます。それには政策だけでなく、市民への理解促進も不可欠です。