664件の栽培ライセンスを発行
南アフリカのクワズール・ナタール州(KZN)では、数百の農家がヘンプの栽培・生産を許可され、当局関係者は栽培者にそのヘンプの栽培・生産技術取得ができる環境を提供すると述べています。
クワズール・ナタール州農業・地方開発省(DARD)によって、合計664件の栽培ライセンスが発行されました。
これらの許可は、南アフリカのヘンプと嗜好用大麻の境界とされる0.2%未満のTHCを含むヘンプの栽培、保管、輸送を農家に認可しています。
医療も産業も官民一体で支援体制を整える
州政府とオピュレンス製薬社との間で、州内での嗜好・医療用大麻産業の成長を促進し、輸出の可能性を探るための公的・民間のパートナーシップが発表されました。
オピュレンス製薬社は、2018年に医療大麻とCBDセクターで活動するために設立されましたが、詳細はほとんど知られていません。
同社はクワズール・ナタール州のヴェルラムに拠点を置いています。
同社のCEOであるデュラン・ゴヴェンダー氏は、産業用ヘンプと医薬用大麻の持続可能な雇用創出と価値チェーンの管理を目指していると述べています。
農業・地方開発省(DARD)と経済開発・観光・環境省は、スキルと知識の移転プログラムでこの企業と協力します。
資金と技術サポートを行政が牽引
栽培ライセンスを持つ農家は、セダラ農業トレーニング研究所の分析ラボを通じて様々な生産技術にアクセスできるようになります。
ライセンス所持事業者からサービスを受ける企業にも、それぞれ約220万円が支給されました。
これには、加工、栽培トンネルの設置、実験室の機器提供、包装、検査、マーケティングなどのサービスが含まれます。
政府関係者によると、少なくとも6つのヘンプ加工工場を設立する計画があると述べました。
DARD(農業・地方開発省)はまた、大麻の研究のために約3.8億円、大麻農家への直接的な支援のために約7,600万円を拠出しました。
「過去、アフリカ人は大麻でひどく罰せられ、私たちの両親は取引できませんでした」と、クワズール・ナタール経済開発、観光、環境省の理事会メンバーであるシボニソ・ドゥマ氏は述べています。
「人々はこのハーブの主権を守るために罰せられましたが、今では私たちは、ライセンスと許可を受け取っています。」
「フードバスケット州」と言われる肥沃な土壌で
南アフリカのクワズール・ナタール州は南東部に位置する沿岸州です。
クワズール・ナタール州は南アフリカの「フードバスケット州」と言われており、信頼できる降水量と肥沃な土壌を備えています。
州の土地の17%が耕作可能で、そのうち7.5%が高い潜在能力を持っています。この州は南アフリカのサトウキビの90%を生産しています。
クワズール・ナタール州の農家は果物や野菜、トウモロコシ、ピーナッツ、大豆を育て、家畜も飼育しています。
同州の農業は、大規模な商業農場と、自給自足農業を基盤とする過疎地域が特徴である。 農業は州の国内総生産の10%を占め、70万人以上を直接・間接的に雇用しています。
編集部あとがき
今回の南アフリカ、クワズール・ナタール州で、660件の栽培ライセンスの許可を出す。という動向は、かなり大胆な決断と捉えることができます。
クワズール・ナタール州では、ライセンス許可した農家からサービスを受ける企業に対しては、約220万円の支給があり、大麻産業に対する州の予算としても、研究に3.8億円、ヘンプ農家に対して7,600万円を支給・支援をしていきます。
南アフリカの環境から見て、州のパイロットプロジェクトだとしても、どれくらいの資金を用意して進めていこうとしているのかが、その「本気度」を垣間見ることができます。
何度も書いてますが、行政からの資金が重要な理由の副次的、且つ、主たる理由としまして、行政が「資金を支援する」という形こそ、世論に対してのポジティブなプロパガンダの波及であり、参画に尻込む企業に対しても同じくポジティブなプロパガンダにもなり、そして、参画企業が増えれば、そこからさらに設備強化・研究・試験・マーケティングの活路も広がり、世論に対してのポジティブなプロパガンダへと繋がっていきます。
ヘンプ産業における経済的・環境的なポテンシャルは、業界人であれば、そして、業界のことを少しでも学べば、誰でも掴むことができます。
ただ、世論はそうもいきません。そこで絶対に必要になってくる要素は「億単位の行政の資金援助」です。産業を拡大していく上での最大のポイントは「世論が大麻に対してポジティブかどうか」です。
民間企業だけでは広げきれない「大きな障壁」は、すでに明確になっています。この産業は、出口(収益ポイント)が無い状態で栽培を進めることから始まります。なので、「手厚い助成金」が大事なのです。
これからの日本、栽培免許の取得は法改正後容易になる予定で、勿論志願者はどんどん増えて欲しいという思いもあります。ただ、明確な出口(収益ポイント)を作るための研究・試験・製造の安定が、その手前に必須であるということを忘れてはなりません。
そこには「時間」と「資金」が必要です。
ヘンプで創造される新しく豊かな社会、南アフリカの彼らが見ている未来も、私たち日本人が見ている未来も大きな差はありません。
今回の南アフリカ・クワズール・ナタール州のこの取り組みも、ヘンプ産業を通じて、地域経済の発展と雇用の創出を促進し、南アフリカの食糧供給に新たな可能性をもたらすことを目指して動き出した一手となりますが、それを実現させるために、研究に対して資金支援、農家に対して資金支援、と、その点を事前に設けているところがポイントです。